インドネシア政府は、西パプア州ラジャアンパット諸島にあるニッケル鉱山について、観光や環境への悪影響が懸念されるとして操業を一時停止した。ブルームバーグ(6月9日)によると、対象となる鉱山は国営企業アネカ・タンバン(Antam)の完全子会社ガグ・ニッケルが運営しており、政府は周辺環境への影響を評価するため、調査チームを派遣した。
この地域は、世界的に知られるサンゴ礁や生物多様性を有し、海洋保護区にも指定されている。エネルギー・鉱物資源省のバフリル大臣は5日の会見で「観光地としての価値を理解しているが、ラジャアンパットの範囲は広い」と述べ、科学的な検証に基づき判断する方針を示した。
一方、ヤフー・インドネシア(6月10日)によると、環境省が5月末に実施した現地調査の結果、ガグ・ニッケルおよび中国資本のASP社の2社が、法律上採掘が認められていない「小島」で操業していた疑いがあることが判明。ASP社については、環境管理や廃水処理の不備も指摘された。
ハニフ環境相は、違法性が確認されれば認可の取り消しや刑事・民事両面での訴訟を検討するとしている。環境団体グリーンピースも今月初め、ジャカルタで行われた重要鉱物会議の会場前で抗議活動を実施し、SNS上で議論が広がっていた。
こうした中、ガグ島の住民らは政府の停止措置に反対しており、バフリル大臣の現地訪問時には「海はきれいで、島の自然は損なわれていない」と訴え、鉱山操業の継続を求めた。
大臣は「現地の実情を客観的に確認するために来た」と述べ、現地視察を通じて地域住民の声も政策判断に反映させる姿勢を見せた。
政府による調査と評価は現在も続いており、操業停止措置の解除や継続については、今後の判断が注目される。
(IRuniverse Lin)