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山一電機(6941) 25/3期WEB説明会メモ ポジティブ継続

2025/06/23 13:32
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25/3期24.4%増収、営利2.8倍、26/3期4.6%増収3.3%営増はAI向けで上振れ期待

株価2595円(6/20) 時価総額 567億円 発行済株21,829千株
PER(26/3期DO予6.9X)PBR(1.28X) 配当(26/3DO予)112円  配当利回り:4.3%

 

・25/3期24.4%増収、営利2.8倍と2/6修正予想並みで着地、半導体テスト最高益で急回復

・26/3期4.6%増収3.3%営利増とテスト伸び鈍化予想も通信コネクタ増で増額期待

・27/3期はAI半導体、AIデータセンタ向けコネクタ伸長で収益上伸へ

 

25/3期24.4%増収、営利2.8倍と2/6修正予想並みで着地、半導体テスト最高益で急回復


 半導体テストソケット、高速光通信トランシーバ用コネクタなどを中心に事業展開。25/3期は売上高452.98億円(2/6修正予想比7.02億円未達、24.4%増)、営業利益82.58億円(同2.25億円増額、2.8倍)、経常利益76.89億円(同0.11億円未達、2.6倍)、税引利益52.40億円(同2.40億円増額、2.5倍)と2/6修正予想並みに着地した。


 事業別にテストソリューション事業(TS)は売上高251.15億円(期初計画比16.15億円上振れ、2/6修正予想比7.85億円未達、前期比58.5%増)、営利71.12億円(同12.12億円増額、同1.88億円未達、3.9倍)に。数字としては23.3期を抜いて過去最高収益更新となった。

 バーンインソケットはロジック向けが自動車の安全支援向けなど車載向けでクアルコム中心に6割近い伸びを示し伸長、一方でインテルの不振が継続もロジック向けでは4割近い伸びに。メモリ向けもDRAMがDDR-5向けなど伸長で6割強の伸びを示し、3DNANDは伸び悩んだもののメモリ向けでは4割近い伸びに。

 全体でバーインテストソケットは50%弱伸びた。テストソケットはクアルコム向けがAIスマホ向けなどの増加で伸長し倍増近い伸びに。利益面では収益性の高いテストソケットの回復、バーンインでもロジック向けの回復で営業利益率が16.7ポイントアップし28.3%となった。


なお四半期推移ではスマホ向けの季節要因からQ1、Q2が高く、Q3,Q4が落ちる形となっているが、2/6に11/6の予想数字に付いて減額修正となったのは、DRAM向けの伸び悩み、車載向けの一巡などがあっため。


 コネクタソリューション事業(CS)は売上高189.48億円(同20.52億円未達、同1.48億円上振れ、1.5%減)、営利12.12億円(同3.78億円未達、同4.43億円上振れ、30.6%増)に。FA関連がシーメンスを中心にCNC装置向けやPLC向けなどFA向けが不振で20%強のマイナス(計画比30億円程度も減額)、車載向けもテスラ向けなど計画を下回り減収に。一方、通信向けはAIデータセンター向けなどが好調に推移、期初計画を15億円強上回り9割の伸びに。利益面では売上高が大幅未達成で営業利益も減益ながら、高収益の通信向けの増額からMIX良化となり営業利益率が1.6ポイント改善し6.4%となった。但し、過去のような超高収益率を誇った長距離通信向けは伸び悩んでおり、競合が多いデータセンター向けの拡大で過去の様な収益率には届いていない。


 四半期推移では、Q4に通信向けが大幅に伸び、収益性が急速に高まり20/3Q2以来の13%台乗せとなった。
全体を通じ、半導体テスト用ソケット事業が過去最高収益となり、コネクタ事業も減収ながらMIX良化で最低限の減益にとどまったことで大幅な利益拡大に。なお全体として為替が円安に推移、売上高で20.4億円、営業利益で10.3億円プラス効果(1円の対$変化で売上高2.0億円、営利1.3億円の影響)となったことも利益増に大きく貢献している。

 

26/3期4.6%増収3.3%営利増とテスト伸び鈍化予想も通信コネクタ増で増額期待
 

 26/3期予想は売上高474億円(4.6%増)、営利85億円(3.3%増)、経常利益79億円(2.7%増)、税引利益55億円(4.9%増)予想(為替1$=140円、12.56円円高想定)とした。同社は新中計で26/3期売上高500億円、営業利益100億円目指してきたが、各市場の環境等を勘案、現状、TSはレガシー半導体向けの回復遅れがあり、生成AI等の需要が予想以上に盛り上がったが、中計予想を下回るとした。なお米国の関税処置での直接影響は織り込んでいるとのこと。また中計達成のために設備投資や各種施策は推進、通信向けコネクタ生産については能力増強を急いでいるとのこと。

 

 事業別にTS事業は売上高263億円(4.7%増)、営利69.5億円(2.3%減)予想。TS事業は上期にメモリのDRAM向けの微悩み、車載は新製品対応の一巡で谷間、テストソケットも今年度は新機能があまり付加されない見通しで多少減少すると見ており、前年同期比13%減、下期はメモリでDDR-6や更にDDR-7の対応、車載も改めて新製品投入の時期、テストソケットは2026年のモデルで新機能向けの増が期待されるなどで4割近い伸びを見込む。CS事業は売上高197億円(4.0%増)、営利15.0億円(21.4%増)予想。FA、車載不振、下期はFA、車載回復、通信は上期よりこう好調持続し少なくとも30%程度の伸びを見込むとのこと。利益面では通信の比率がアップしMIX良化継続し2ケタ増益予想に。


 現状、上期は半導体についてはほぼ固まった数字の様で、下期は半導体でスマホ向けの季節性はあるものの、半導体需要の本格回復、とりわけサーバー需要の盛り上がりなどでDDR-5向けが本格寄与する他、NANDでも次世代モデルの投入が始まるとみられ、下期に増額が見込まれる。実際DRAMに付いてはHBMを優先に増産していることもありDDR向けの出荷がQ1までは不調も、Q2以降は急速に回復すると見ている。HBM増産が優先されただけのようで、AIサーバーも推論向けAIデータセンターの立上げが急拡大する見通しにある。なお2025年の新規サーバーにおけるDDR-5搭載率が60%まで高まるとの見通しがあり、会社計画を上回る可能性が高い。またLPDDR6のJEDEC規格(統一規格)が4月に最終草案がレビューされ、秋口には各社からサンプル出荷される見通し。同社の主力納入先のマイクロンもサンプル出荷を始めるとのこと。LPDDR-6は導入時点でLPDDR-5比25%高速化、チャンネル帯域幅も最大2.5倍となりAIグラフィク用途での対応が十分できる、更に、低電圧化でモバイル消費電力15~20%軽減できるとしている。このためスマホ、ノートPCだけでなくデータセンターやAIPCでも採用される見通しで、年明け以降、急速に拡大が見込める。次に車載向けロジックはクアルコム向けの新製品に加え、回復が遅れていたルネサス向けが国内自動車メーカーの安全安心、新MPUの投入もあり、自動車のAI化などで拡大が見込まれ、こちらも増額が期待される。

 

 

 NANDについてはウィンドウズ10のサポート終了やAI機能搭載のPCなどの需要拡大が期待され、下期からは回復が見込める。同社の半導体向けソケットは中心が最先端向けであり、伸び悩んでいるパワ-半導体向けなどはほとんど影響がないため、AIデータセンター、自動運転の進化等向けの拡大でTS事業の上振れが期待される。

 

 コネクタ事業は通信向けが牽引しよう。同社は従来、通信向けは中国ファーウェー向けなどを中心に、コアネットワーク向けにCFP〈Centum Form-factor Pluggableなどの大容量高速通信を可能にする大型モジュール〉中心に事業展開してきた。しかしここに来てデータセンター向けSFP(Small Form-factor Pluggable:データセンターをはじめスイッチングハブやルータなどさまざまな機器で広く使われている小型のモジュール〉が増加、前期においてはQ4でデータセンター向けが約半分を占めるまでになった。しかも従来のサーバー向けに加え、より高速伝送を必要とするAIサーバー向け需要が急拡大している。同社はCFPでCFP8などを投入、CFPでも800Gbpsイーサネット対応コネクタ800Gbps  (112Gbps/ch x 8ch)を24年2月から投入、高い技術力を有する主力企業であり、26/3期は既存ユーザーに加え、汎用サーバーを手掛ける新規需要にも対応が増加する見通しで、計画以上の売上が十分期待される。加えてトランプ政権の対中政策で米国競合メーカーが大半中国で生産を行っており、同社が国内、フィリピンで生産していることからリスクヘッジとして第2ベンダーとして同社を選定する動きもあるなど、CS事業も収益の上振れが期待される。全体として僅かではあるが最高益更新が期待される。

 

27/3期はAI半導体、AIデータセンター向けコネクタ伸長で収益上伸へ
 

 同社は中長期的な成長に向けた重点施策として、TSについては成長エンジンとして更に強い事業への深化、CS事業については強みを活かして第2の柱となるべく強化を図るとしている。特にCS事業については通信市場向けコネクタの製品開発強化(品種拡大、開発スピードアップ、設計者や知財強化)を打ち出した。また営業利益として2030年度には150億円達成、2035年度には200億円達成を目標に掲げている。

 
27/3期についてはTS事業でバーンインではDRAMについてDDR-5はDDR-4からの世代交代が本格化、サーバーにおいても高性能CPUがDDR5をサポートしており、本格普及とともに需要が拡大しよう。LPDDR-6に付いてAIノートPC、AIスマホなどで搭載採用が見込まれる。実際、クアルコムの次世代SoC「Snapdragon8 Eite G2」ではLPDDR6に対応し、高速・省電力のメモリ環境によりスマートフォン全体のパフォーマンスが20%近く向上するとのこと。7月に発売開始予定のサムスンの次世代縦型折りたたみ「GalaxyZ Flip7」などに搭載されると見られ、AI搭載スマホ、AI搭載PC普及とともに急拡大が見込める。低迷しているフラッシュメモリ向けも、推論型AIデータセンターの普及でSSDの多用が期待される。これは推論型ではAIデータストレージが超高性能(低レイテンシ、高IOPS、スループッ)を要求されるため、巨大なデータへの迅速なアクセス、読取り要求の効率的な処理が必要で、SSDが必要不可欠となる。

 

 推論型AIデータセンターではHBMが超高速データ転送能力、省電力設計、高密度積層によりAI用GPUに不可欠な超広帯域幅メモリとして機能し、SSDはペタバイト級の大容量、コスコ高率、低レイテンシ、高スループットを提供することでHBMを補完する役割を持つ。今後、推論AIデータセンターの構築も急拡大する見通しにある。実際6/20にキオクシアは生成AIやHPC用途でGPU稼働率を高めシステムの改善に貢献するPCIe5.0対応NVMeSSD「KIOXIA CD9Pシリーズ」の試作品を発表、第8世代3次元フラッシュメモリ(218層)TLCを採用、従来比約2倍のメモリ容量を搭載、最大2.5インチモデルで61.44TBの大容量を実現、アクセスも20%以上高速化、消費電力も40%程度改善している。今後、学習AIデータセンター以上に設置件数として拡大の加速が見込まれるだけに、27/3期にはSSD向けのバーンインテストも急回復しよう。ロジック向けも中心となる車載向けで、クアルコムの車載向けSoCのシェア拡大、新機能搭載などで同社の車載ロジック向けバーンインテスト需要が拡大を続けよう。

 

 この背景にはスマホ向けSoCで培った通信技術(5G/4G LTE、Wi-Fi 6/7、Bluetooth)やAI処理(NPU)を車載市場に転用、次世代車両に必要な「常時接続性」「OTA(空中ダウンロード)更新」「V2X(車と外界の通信)」を強力にサポートしている他、単体のSoCだけでなく、デジタルコクピット、ADAS、車載通信を一貫してサポート(例:Snapdragon Rideプラットフォーム)などのため。しかも欧米自動車メーカーとパートナーシップを締結している他、中国EVメーカー(BYD、Xpengなど)がクアルコムプラットフォームを積極採用しているなどが要因。テストソケットについても次世代スマホ向けで主力のクアルコムの拡大、アップル向けの伸びも期待される。同社の強みは非常に細いピンをバネと組み合わせた「プランジャー構造」を採用し、極めて狭い間隔でも各ピンが独立して精密に動作することを可能にしている点。これにより高密度実装された半導体でも正確な検査を実現、またピン先端形状を微細に加工する技術により半導体の微小なバンプに対しても安定した接触を保ち、測定誤差を最小限に抑えることができ、高速・大容量のデータ通信を担う5Gや6G対応の厳しい品質要求に応えているため。この分野では同社と韓国Leenoが市場を2分しているとのこと(Leenoは独自開発のスプリング式プローブピン「LEENO Pin」で展開)。2026年モデルではAI搭載モデルの本格拡大も期待され、収益性も高いだけにテストソケット需要拡大で収益性もアップしよう。


 CS事業では通信向け、とりわけデータセンター向けの伸長が本格化しよう。25/3期のCS事業における通信向け売上は46億円弱、26/3期は60億円以上の売上を目指し、能力的には70億円程度まで対応可能とのこと。現在、新規AIデータセンターにおいては800Gbpsでの対応が主力となっており、伝送データ容量増加に対応、2024年12月には次世代1.6Tbps Ethernetにも対応する光通信モジュール用インターフェースコネクタ「CN176シリーズ」「CN214シリーズ」の販売も世界に先駆けて販売を開始した。この製品は従来のデータセンター内での使用に加え、AI/MLクラスター(人工知能(AI)や機械学習(ML)に関する研究・開発、またはデータ処理を効率的に行うためのハードウェアやソフトウェアの集合体)を構成するシステム等にも対応しており、広帯域や低遅延性能が求められるハイパースケールデータセンター等での接続用途に使用される見通し。

 

 加えて、データセンターにおける高速化、高密度化のボトルネックになっていたASICと光トランシーバI/Oの距離を解決するために、同社とNubis Communications社がデータセンターで使用されるOSFPコネクタをラインカードに垂直接続するVLC(Vertical Line Card)機構により、高密度な実装でありながら高速伝送を低コストで実現できる製品開発も実行した。具体的にVLCは垂直に立てたラインカード上にI/OコネクタとASICを併置し信号基板の配線距離を3~4インチ以内に抑え、高速化と高密度化を実現した新構造のもの。既存の技術(モジュール、実装技術、信号伝達技術)のみを使用し、112G、224G伝送に対応したデータセンター内の機器を低コストで構築できる技術となっており、構造上で生じるスペースと正面パネルからのエア取り込みにより、システムの冷却性能が向上し、低消費電力化も実現できる。このように、通信用コネクタについてはAIデータセンターの需要急拡大に伴い、同分野では年率30%~40%の伸びが見込まれると見られ、同社の第2の柱として収益基盤を支えることとなろう。

 

 全体を通じ、27/3期はTS、CSともに収益上伸が見込まれ、過去最高収益を大きく更新すると見られる。


 同社株価は5/14の開示で25/3期の収益変化率が高いアナウンスとなった事で高騰、5/20には3865円と高値更新となったが、その後は半導体関連株の一服もあり8/3の暴落時には2357円まで売られ、2/5の減額修正発表修正で更に下落し4/7には1650円まで売り込まれた。その後5/13の本決算発表後は半導体に加え光通信コネクタの拡大が確認されたことで株価が上昇、6/20現在2639円と年初来高値更新となっている。現在、26/3期会社予想EPS298.5円に対し9.15倍はプライム電機平均21.9倍に対し割安感がある。また類似事業を行うヨコオコンセンサス(会社予想なし)PER6.3倍に対し割高、エンプラスの18.3倍と比較して割安感がある。今後、下期に増額修正が期待されること、更に先端半導体、AIデータセンター関連銘柄として評価が高まるとみられ、ポジティブ継続とする。
*図表については決算説明会資料、ニュースリリースなどから添付

 

 

 *ヨコオ(6800)、エンプラス(6961)との比較

 

 

(H.Mirai)

 

 

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