25/3期7.8%増収、営利2.6倍と半導体テスト増で大幅増益、26/3期予想未定も増益期待
株価1318円(6/27) 時価総額314億円 発行済株23849千株
PER(DO26/3期予9.0X)PBR(0.59X)配当(26/3DO予)58円 配当利回り:4.4%
要約
・25/3期7.8%増収、営利2.6倍とAI半導体GPU検査用ソケットピン大幅増で利益急回復
・26/3期合理的な予想ができず予想開示見送るもAI半導体向け拡大で増益期待
・中期経営目標変更せず27/3期売上高965.5億円、営利109.5億円目標で半導体向けが鍵握る
25/3期7.8%増収、営利2.6倍とAI半導体GPU検査用ソケットピン大幅増で利益急回復
車載アンテナ、半導体検査用ソケット、小型端末向けスプリングコネクタなどを3本柱に事業展開。25/3期は売上高828.84億円(期初計画比17.34億円上振れ、2/12修正予想比8.24億円上振れ、7.8%増)、営業利益42.26億円(同3.24億円未達、同2.26億円上振れ、2.6倍)、経常利益39.26億円(同1.76億円上振れ、同2.76億円上振れ、5.8%増)、税引利益22.27億円(同2.73億円未達、同1.23億円未達、47.4%減)となった。
セグメント別では車載通信機器(VCCS)が売上高559.61億円(期初計画費3.11億円上振れ、2/12修正予想比5.61億円上振れ、0.7%増)ながら、営業利益は28.38億円(同6.12億円未達、同2.29億円上振れ、8.5%減)と低迷に。売上面では自動車生産の回復、物流混乱の沈静化もホンダの中国向けなどが苦戦、一方で主力ユーザーの北米トヨタ向けが131.57億円(4.7%増)と支え、円安もあり何とか増収を確保した。
製品別では4割弱を占めるフィン・マイクロアンテナが3%減と計画並みで着地、付加価値の低いと見られる中継コードは30%台なかばで経計画比若干減少も、円安効果や銅価格堅調で売上としては10%の伸びに。GPS/ETCアンテナは20%今日
を占めるGPS/ETCアンテナは計画比若干増も前期比では7%減と低迷した。
利益面では円安影響があり海外製造会社の現地通貨高、円安により生産拠点の労務費影響1億円、海上運賃増など物流費増4億円、円安に伴う共通比負担増6億円などが影響、合理化効果
などのプラス効果で補い切れず減益となったものの売上高営業利益率5.1%と5%を確保できた点は従来とは異なり悪環境にも対応できる体質が整ってきたとしている。
回路検査コネクタ(CTC)は売上高156.14億円(同3.11億円上振れ、同3.14億円上振れ、24.1%増)、営利14.79億円(同2.79億円上振れ、同2.29億円上振れ、前期22.73億円改善し黒字転換)と収益急回復となった。
売上の15%程度を占めるクアルコムを中心とする前工程向けも計画を多少上回り30%強の伸びに。AIスマホやAIPCなど向けの次世代モデル向け検査用として拡大したと見られる。RF向けのYPXもハイエンドAIスマホ向けなどでスカイワークス向けが回復、20%強の伸びに。同分野については従来のSAWフィルタ(圧電基板の表面を伝搬する弾性波を利用して特定の波長のみを選択する。低コストで大量生産されるためにっスマートなどで使用される)向けに加え、BAWフィルタ(圧電材料の内部を垂直方向に伝搬・共振する弾性波を利用、製造プロセスが複雑で高コストとなるもプレミアムスマホなどの3GHz以上の高周波帯域で利用が拡大)向けもQ4から納入を始めた。
なお四半期推移ではQ3に一旦利益率が低下しているが、これは先端デバイス検査向けで一部接触抵抗値による不具合が生じた影響で手直しなどが行われコスト高となった事、Q4ではこの問題が解決し収益性がアップしたことによる。
利益面では増収効果で21.73億円のプラス効果と、24/3期がインテルのテスト方式がソケットからシート型に変更された影響で大幅減となった影響の軽減、量産効果があり収益性が高まったAI用GPU検査ソケット向けピンの拡大が収益性でも貢献している。
加えて開発費などの固定費増加が一部製品の不安定作動などの不具合改善費などもあり4億円の固定費負担増、原材料費高1億円の減益影響があった。全体としては限界利益率の高い事業であり、増収効果の寄与が主因。仮に不具合コスト増がなければ更に高い収益率となっていた模様。
無線通信機器は売上高71.34億円(同11.34億円上振れ、2/12修正予想比ほぼ計画通り、31.8%増)、営利7.89億円(同0.79億円上振れ、同0.61億円未達、6.7倍)と売上としては21/3期を抜き過去最高額に。主力のスプリングコネクタが売上高71.34億円(期初計画費11.34億円上振れ、2/12修正予想比1.34億円上振れ、38.7%増)と大幅増額に。また営業利益は9.18億円(前期は未公表)と大幅改善となった。
これはPOS向けにユーザー在庫調整が完了し新興メーカー対応も進み8割近い伸びになり急回復、また10%程度を占めるサムスンワイヤレスイヤフォン向けも新モデル対応などで5割強の伸びとなったため。
その他ではタブレットに接続するキーボード用なども新規に増えつつあり、全体では21/3期の過去最高額に近い水準まで回復した。残り1/3を占める医療用微細部品は売上高38.98億円(期初計画比2.48億円上振れ、2/12修正予想比1.02億円未達、20.7%増)、営業損失1.28億円(期初計画比1.78億円未達、前期は未開示も赤字で赤字幅は縮小とのこと)となった。
売上高では9期連続の増収となったが、既存製品のガイドワイヤが31.08億円(期初計画費5.42億円未達、前期比3.7%減)と、ユーザーの在庫調整の影響で大幅未達となった。一方でセンサ付きガイドワイヤなどのインオーガニック製品が7.37億円加わった他、新治療領域のデバイス(ステント等)が0.53億円売上計上されるなどで、全体としては計画を上振れた。
一方、利益面では既存製品の減収影響、加えて研究開発費用などが嵩みMIX悪化もあり赤字継続となった。
25/3期より分割表示したインキュベーションセンター部門は先行投資事業を集約したもので、売上高2.71億円(同0.71億円未達、同0.29億円未達、23.0%減)、営業損失8.86億円(同前0.86億円赤字拡大、同0.36億円赤字拡大、前期比0.75億円赤字拡大)となっている。
26/3期合理的な予想ができず予想開示見送るもAI半導体向け拡大で増益期待
同社は26/3期について、事業として売上規模が最大となっている車載通信機器に付いてトランプ関税の問題が未決定であること、無線通信機器についても同様にPOS向け事業などの影響がある。このため、同社は収益見通しに付いて社内目標はあるものの、不確定要素が大きいとして26/3期収益予想を非開示とした。
事業別推定ではVCCSが売上高534億円(3.9%減)、営利27億円(4.9%減)、CTCが売上高176億円(12.7%増)、営利20億円(35.2%増)、FCが売上高74億円(3.7%増)、営利7億円(23.7%減)、MDが売上高46億円(18.0%増)、営利1.70億円(3.0億円改善し黒字転換)予想、インキュベーション売上高30億円、営業損失7億円と推定される。
全体としては売上高860億円(4%増)、営利48.7億円(15%増)予想と推定した。
現状、VCCS事業については米国向けで関税10%は織り込んでいると見られる、その中で、米国向けは同社米国販社向けに関税分を上乗せて計上、米国販社は関税分を顧客に負担してもらう形で関税分を吸収するとしている。
但し、顧客との取引額の関係で関税分の転嫁についてはタイムラグが発生する見通しで、売上が嵩上げとなっても利益は大幅減益が避けられないと見られ、トヨタアメリカへの売上も多く、利益低迷が懸念される。
TS事業については後工程ではエヌビディアGPU向けの検査用ピンの供給が更に拡大すると見られ、不具合の解消もできているとのことで、AIGPU向けの需要拡大が見込まれる。
またGAFAが独自のAI半導体チップ投入を行っているが、同社はそれらの企業の開発するAI半導体向けについて、検査品の供給ではなく、テストソケットの供給も始める計画。
すでにアマゾンなどがGPUではなく「AWS Trainium 2」などで行列演算に特化したASIC(AIトレーニング向けアクセラレータ)を投入、自社ASIC(TSMC CoWoS-Lパッケージ)とNVIDIA GPUを併存させるなどの動きの中で、新規開発のデバイステストソケットの受注拡大が期待される。
加えて自動車の安全、自動運転のための車載半導体についてもNPXやクアルコムなどへの車載SoCテストソケットの拡大も継続的な拡大が期待される。
なおインテルの不振が継続しているが、同社はソケット方式ではなく、シート型も開発済みで、インテル向けの需要についてもシート型投入で失地回復を目指している。
前工程についてはクアルコムがAIスマホ、AI搭載ハイエンドPC向けに新製品の投入が期待され、特にRF対応が必要不可欠となるため、高周波対応で技術を有する同社の前工程向け需要も継続的な拡大が見込める他、クアルコム以外の第2ユーザー向けが立ち上がり、前工程向けも順調な拡大が見込まれる。YPXについては従来のSAWフィルタ、BAWフィルタともにハイエンドスマホ、PC向けで新モデル等から今期も伸びが期待される。
全体を通じ、先端半導体向けの拡大加速が見込まれ、同事業についても会社想定を上回る収益が期待される。
スプリングコネクタ事業については世界景気のスローダウンが懸念される中で、トランプ関税の影響から、利益低迷が懸念される。
但しタブレット向けなどの新規需要が多少寄与するなどで、会社想定並の収益が見込まれる。
メディカル向けは開発品の本格投入が始まり、会社想定通り黒字転換が見込まれ、2事業については会社想定程度の収益が期待される。インキュベーション事業については、タムラ製作所より光波事業を6/1付けで吸収分割を受けており、事業継承分が26/3Q2以降、同部門の収益に計上されることがメインと見られる。
継承部門のタムラ製作所における部門別売上高は24/3期において全体光波事業売上高56.8億円の中で64.59億円を占めており、光波全体の88%に当たる事業が相当すると見られる。但し今回はエンジニアの取得(従業員全体では24/3期現在、該当事業で143名)が大きな目的とのこと。
そのため事業見直しの可能性もあり、単純な足し算になるとは考えにくいが、Q2以降の連結化による売上として30億円規模のプラス寄与が見込まれる(タムラ製作所の決算説明資料では42億円の減収予想)。
利益面では譲渡基準価格として2.5億円、アドバイザリー報酬等0.5億円などがコスト増となると見られるが、これを差し引いても利益の若干の増額も期待され、営業損失の7億円までにはならないと見られる。
全体を通じ、売上面ではCTC事業の収益上振れが見込まれ、売上面では光波の寄与が見込まれ、説明会資料に示されたグラフ値に対し増額修正が期待される。
中期経営目標を軌道修正し28/3期に売上高1000億円、営業利益100億円目指す
同社は昨年、中期経営計画として27/3期に売上高965.5億円、営利109.5億円、29/3期に売上高1087.5億円、営利137.5億円を目指す経営目標を公表した。
しかしこの1年間の環境変化を考慮し、26/3期については不透明要素が多いものの、27/3期以降は正常化する前提で、中期計画目標の修正を行い、28/3期に売上高1000億円、営業利益100億円、29/3期売上高1080億円、営利129.6億円との新たな目標値を開示した。
成長戦略としては変更しておらず、従来事業の成長・収益基盤強化に加え、新たな事業の獲得、他社との協業、M&Aも実行し、売上高1000億円超を目指すとしている。
VCCS事業では車両進化に伴う高付加価値品の投入、ADAS製品への参入、CTCでは3D対応などで新たなテストニーズの獲得、統合テストソリューション企業に向けM&Aも含め事業拡大を図る計画。
実際には光波事業の取り込みで、少なくとも27/3期には50億円を超える上乗せが見込まれ、加えて2027年以降はADAS関連事業でトヨタ向けなどを中心に新規需要が立ち上がる見通しから、同事業について収益の前倒し達成が期待される。
全体の柱となるのがCTC事業。利益の拡大は半導体事業に依存する割合が高く、新たなテストニーズ、新規顧客の拡大で事業拡大を図る。
特にAI半導体向けは台湾OSAT向けプローブピン供給拡大に加えテストソケット投入がカギを握るが、すでにGAFAの一角から受注を獲得、今後ソケットだけでなく検査ソリューション分野などで協業して事業拡大を目指す。
なおファイナルテストにおいては非インテルで新たに3社の新規顧客を獲得、今後急速な拡大が見込める。またバーンインテスト分野にも参入意向。同分野に強い会社とコラボして同社顧客をターゲットに限定して参入する方針。
また微細化の進展で、再配線前ウエハテストについては超微細ウエハ対応としてMEMSプローブを利用した全く新しいテストに対応する計画がある。同分野はAI用GPU向けの更なる拡大と前工程やシステムレベルテストなどの新規分野での拡大で、計画を上回る拡大が期待される。
民生コネクタではスプリングコネクタのコスト削減を実行し、価格競争力の強化、従来参入していなかったHighボリューム市場に対応した低コストスプリングコネクタを開発、数量拡大とともにシェア拡大し売上拡大を目指すとしている。
また宇宙や海洋など特殊分野において付加価値の高い製品を投入、小型ロボットや新たなAR、VR向けには世界最小スプリングコネクタなどで高付加価値製品の充実もはかる方針。
医療向けではベンチャー等と協業し、新規需要を取り込む。製品ポートフォリオとしてガイドワイヤ、高周波デバイスに加え、25/3期Q4には微細精密加工の強みを生かしたステント事業が立ち上がった。また医療製販業認可取得したことで、自社開発品の上市、先端医療分野においてステントなどでは血栓回収などのエコシステムでの拡販も行う計画。26/3期の黒字転換、27/3期以降の収益拡大、収益性のアップを見込む。
インキュベーションでは26/3期に光波の寄与が9ヶ月分程度寄与すると見られるが、27/3期からはフル寄与しよう。現状、光波の承継対象は光波の祖業である自動販売機向けLED部品事業の枠を大きく超え、先進的な技術スタックと市場での実績を持つ、統合されたIoTソリューションプラットフォームへと進化を遂げている事業である。
原点は、自動販売機の高機能化の進化にあり、照度センサや人感センサ搭載、さらにネットワーク化が進む中で高度なソフトウェア設計技術が蓄積され、強固な事業基盤が形成されてきた。
現在の「ネットワークソリューション事業」は、ハードウェアの設計・製造から、高度なソフトウェア、ネットワーク、データ分析能力までを組み合わせ、顧客の課題を解決するエンドツーエンドのIoTソリューションプロバイダーとして進化している。これは同社にとり「モノ売りからコト売りへ」のビジネスモデル変革に大きく寄与しよう。
事業規模としてインキュベーションセンター事業として28/3期においても光は事業以外も含め年間40億円程度の売上しか見込んでいない。しかし光波の事業についてはシナジー効果としてVCCS事業への波及も期待される。これは光波がトヨタと積水樹脂3社による共同開発プロジェクト「SmartRoadStud」。
目的は道路インフラをインテリジェント化し、自動運転や歩行者の安全を向上させるプロジェクトである。この計画で光波は単なる部品供給者ではなく、革新的な技術提供社としてのパートナーとなっている。同社にとって従来の車載アンテナという部品供給社から、ネットワーク化されたドップラーレーダーとLEDアクチュエータが連携するリアルタイムシステムであり、同社が開発中の次世代ADASシステムとも連携できる。まさに同社VCCSの高付加価値化に大きく寄与すると見られる。
このように、同社の4事業において、特にCTC事業が成長の柱となるものの、その他事業においても着実な成長が見込まれ、全体として中計計画の達成に期待が高まる。
株価は業績低迷を受け4/9には1018円まで下落も、25/3期決算が計画比若干上振れで着地、26/3期について計画未発表も半導体事業拡大は続くとの見通しで、緩やかな上昇となっている。現在、前25/3期EPS95.58円に対しPER13.8倍はプライム電機平均PER21.8倍に対し割安感がある。但し、山一電機9.4倍比較で割高、エンプラスの18.5倍に対しては多少割安感がある。26/3期予想が出ていないものの、NVIDIAのGPU検査用ピンの高シェア納入、クアルコム向けの高周波デバイス向けの拡大など、車載アンテナ事業のマイナス要素を割り引いてもAI半導体関連として評価が高まると見られる。
また光波事業の取り込みは様々なシナジー効果が期待され、CVCC事業へも好影響が及ぶと見られ、予想公表未定(コンセンサスの26/3期予EPS202円は強気すぎる)もAI関連として評価が高まるものと期待し、評価をニュートラルからポジティブに変更したい。
(H.Mirai)