インドネシアのニッケル精錬会社が減産に踏み切っている。2025年6月までに4社が生産ライン28本を稼働停止したと伝わった。中には中国の青山控股集団(Tsingshan Holding Group)など大手も含まれる。ニッケル価格の低迷と燃料などのコスト高が収益を圧迫し、減産に結び付いているようだ。
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インドネシアニッケル鉱山協会(APNI)鉱業諮問委員会のジョコ・ウィダジャトノ氏による7月29日の発言として、同国経済メディアのコンタン(KONTAN)が7月30日に伝えた。APNIのデータなどから得られる情報によると、停止した企業と停止理由は以下の通り。
1. PT ガンバスター ニッケル インダストリー (GNI)
2024年初め以降、20の生産ラインのうち15以上が停止している。ニッケル価格の低迷や電気料金の高騰が響いた。
2. PT インドネシア青山ステンレス鋼 (ITSS)
2025年5月以降、一部のステンレス鋼ラインと、冷間圧延ラインまたはローラーラインを停止した。ステンレス鋼は世界的に過剰供給が指摘され、対応している。
3. コナウェのPT Virtue Dragon Nickel Industry(VDNI)
APNIのデータでは特定のラインの数が認められないが、生産能力を削減していることが読み取れる。事業内容の再編を進めており、高圧酸浸出 (HPAL) 製錬所への移行過程にあるため。
4. PT Huadi ニッケル合金インドネシア (HNAI)
2025年7月15日以降、総容量を削減し、一時的に操業を停止した。7月1日から製錬所の労働者も解雇している。ニッケル価格の低迷で製品需要が縮小した。
■ニッケル価格持ち直さずで精錬企業は苦境に
過去5年間のLMEニッケル価格の推移($/ton)
ロンドン金属取引所(LME)の製錬ニッケル価格は7月31日に現物$1万4800/tonを付けた。2022-2023年の直近高値をピークに、1年以上もじり安が続く。
ジョコ氏によると、インドネシア政府はこれらのニッケル製錬所の閉鎖について、対応策を採る構えだ。鉱物ベンチマーク価格(HPM)の策定や、ニッケル鉱石に対する国内市場義務(DMO)政策などを検討しているという。
また、ニッケル加工品の輸出先の多角化も目指し、インド、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、アフリカなどへの輸出を拡大することも視野に入れていると伝わった。
(IR Universe Kure)