2025年のステンレススクラップ市場は「ニッケル相場の軟化」と「円安と発生不足による価格下支え」が綱引きをする一年であった。ステンレススクラップを扱う業者にとっては「ぱっとしない」1年というのが正直なところだろう。
メインの304スクラップは親和スチール社が「下げ」をリードしており、22日からキロ当たり5円の下げを行う。同社買値は170~175円と推測される。他社も追随する格好となろう。
(この1年間のLMEニッケル相場と国内304系スクラップ相場の推移)


(*12月は19日現在までの数値および平均値)
2026年に向けては、新たな輸出入管理ルール(HSコード改正)や、世界的な「ニッケル供給過剰感」と「グリーン需要」の二極化が鍵となろう。
1. 2025年の振り返り:相場の二極化と円安の影響
2025年のステンレススクラップ(主にSUS304)は、一言で言えば「不安定な市場」であった。
ニッケル相場の低迷: ステンレスの価値を左右するLMEニッケル相場は、インドネシアの増産による供給過剰により、通年でやや弱含み(1.4万ドル〜1.5万ドル/トン付近)で推移。完全にボックス圏内での値動きにとどまっている。LMEニッケル在庫の25万トンという多さからみても、需給実力でいえばニッケルは10,000~12,000ドル、が妥当なところだろう。そこまで下がらないのは中国系の買い支えがあるから、だろう。

円安による「輸出価格」の維持: 本来ならニッケル安で下がるはずの国内買取価格ですが、記録的な円安が続いたことで、輸出業者の買いが強まったのは夏場頃まで。台湾ステンレスへのAD調査の副次的作用で台湾でのスクラップ需要が落ち、日本へ安値オファーが出てくるようになったのが10月以降。
モリブデン高による316系の高騰: 304系が落ち着く一方で、モリブデンを含むSUS316系は、添加金属の価格高騰により350円/kgを超える高値で取引され、発生量の少なさも相まって争奪戦となった。しかし11月以降、酸化モリブデン相場は急落。316系も下落して現在に至る。

(ここ1年の酸化モリブデン相場と316系スクラップ相場の推移)
2. 2026年の見通し:制度改正と需給の転換点
2026年は、ステンレス流通の「ルール」が大きく変わる年です。
- 新HSコードの適用(2026年1月〜)
2026年1月1日より、ステンレススクラップの輸出時に使用するHSコード(輸出統計品目表)が改正される。
内容: これまで曖昧だった「304系(オーステナイト系)」と「フェライト系」などの分類が、ニッケル含有量に基づく数値基準で明確化される。
影響: 税関での検査がより厳格になり、適当な分類での輸出が困難になる。選別精度が低い業者は、輸出時にトラブルを抱えるリスクが高まる。
- ニッケルの供給過剰と相場への圧力
国際ニッケル研究会(INSG)の予測では、2026年は世界で約26万トンのニッケル供給過剰になるとされている。
予測: 供給過剰が続くため、LME相場が急騰する可能性は低く、ステンレススクラップ価格も爆発的な上昇は見込みにくい。
- 欧州規制(WSR)とアジアへの波及
2026年からEUの廃棄物輸送規則(WSR)が段階的に施行され、欧州産のスクラップが域内に囲い込まれる。
影響: 欧州産がアジア市場に流れにくくなるため、インドや東南アジアのステンレスメーカーが日本産スクラップを求める動きが強まり、これが相場の下支え要因となる。
| SUSスクラップ | 2026年の予測と傾向 |
|---|---|
| 全体相場 | 304系は横ばい〜緩やかな下落。ニッケルの供給過剰が重石。 |
| 国内需要 | 底堅い。メーカーの「脱炭素(スクラップ利用)」が進み、国内回帰が加速。 |
| 輸出環境 | HSコード改正により、正確な分析・鋼種判定が必須に。不正な輸出は防止される |
| 注目品目 | 316系・特殊鋼。ニッケル以外の希少金属を含むスクラップの価値が維持される。 |
(IRUNIVERSE YT)