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ISLC#8 鉛バッテリーにおける責任ある生産と調達:ワークショップ&パネルセッション

2025/09/11 13:02 PRO
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ISLC#8 鉛バッテリーにおける責任ある生産と調達:ワークショップ&パネルセッション

2025年9月1日(月)から2日(火)にかけて、マレーシアのサバ州都であるコタキナバルで「Recycle 100:第9回鉛バッテリーリサイクル会議(9th International Secondary Lead & Battery Recycling Conference)」が開催された。
本会議の最後のセッションでは、責任ある生産と調達に関するワークショップ&パネルセッションが開かれたので、今回はその内容について紹介する。
 

(会議の会場となったヒルトンホテル・コタキナバル)

Lead Battery 360°- a Responsible Production and Sourcing Program for the Lead Battery Value Chain : Dr Steve Binks 
国際鉛協会(ILA)のシニア・レギュレーター関連を担当するDr Steve Binks氏は、「Battery 360プログラム」について発表した。これは2020年にILAから発展した国際的な認証プログラムであり、環境・健康・安全、責任ある調達、人材や地域連携など、鉛バッテリーのバリューチェーン全体を対象としている。
鉛バッテリーは高いリサイクル率を誇り、クローズドループによる資源循環を可能にするなど、持続可能なエネルギー貯蔵技術として多くの利点を持つ。一方で、一部の地域では非公式リサイクルによる鉛汚染が大きな課題となっており、Battery 360はその課題解決の手段となることが期待されている。
Steve Binks氏は、すでに9つのサイトがBattery 360プログラムに参加しており、今後はより多くの事業者による採用が不可欠であると指摘。このプログラムが業界全体の持続可能性と競争力の向上に寄与すると強調して発表を締めくくった。
 

From Risk to Reform: Highlights from the ProBaMet Lead-Acid Battery Recycling Project in Nigeria : Franziska Weber
WVMetalle Service GmbH プラットフォーム部門の責任者であるFranziska Weber氏は、国際的なバッテリーに関するパートナーシップ「Problemat」について紹介した。Problematは欧州を中心に大手企業やサプライヤー、NGO、政府機関が参加しており、バッテリーのライフサイクル全体において環境・健康・安全を確保し、サプライチェーンの透明性を高めることを目的に組織されている。
活動内容は、低・中所得国における非公式リサイクルの改善や標準運用手順(SOP)の策定、規制当局との協働による法的枠組みの整備であり、現場視察や技術移転を通じ、リサイクル事業者が国際基準に沿った運営を行えるよう支援している点も特徴である。Franziska Weber氏は、こうした取り組みが欧州の厳格な規制対応や資源確保だけでなく、グローバルなバッテリー産業の持続可能性強化に直結していることが強調し、責任ある調達とリサイクルを推進することで、企業にとっては国際市場における競争力と信頼性の向上にもつながると締め括った。
 

Trafigura’s Approach to Responsible Sourcing of Recycled Lead : Norman Mukwakwami 
スイスに本拠を置く大手商品取引会社Trafiguraの「金属・鉱物・バルク部門」責任者のNorman Mukwakwami氏は、鉛リサイクルを持続可能に進めるための責任ある調達とサプライチェーン管理の重要性について発表した。特にFranziska Weber氏が言及した「Problemat」プロジェクトでは、サプライヤーの環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクを評価・特定し、その緩和策と改善計画を求める枠組みであると評した。これは国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECDガイドラインなど国際規範に基づいており、EUの規制や米国ドッド・フランク法など強化される法制度への対応とも直結している。また、労働者の健康保護や安全な輸送・保管、環境モニタリングの実施など、実務的な要件も提示された。
Norman Mukwakwami氏は、責任ある調達は単なるコンプライアンス対応にとどまらず、企業の持続可能性と市場での信頼性を高める戦略的取り組みであると発表を締め括った。

Brazil Case Study-Designing a New Recycling Facility to Meet High Environmental Standards : Flávio Bruno de Sousa
ブラジルに拠点を置くGrupo Moura社所属で、鉱冶学・調達・サステナビリティ担当ディレクターのFlávio Bruno de Sousa氏は、鉛バッテリーの製造と流通の両面で循環経済を実現する戦略を紹介した。Grupo Moura社はブラジルの大手のバッテリーメーカーで、7,000人以上の従業員を抱え、年間1,000万個以上のバッテリーを生産している。
Grupo Moura社は2021年から新リサイクル施設への投資を進めており、2025年にはフル稼働を予定している。新プラントでは分離効率やエネルギー効率を改善し、アンチモンの精錬や大気質管理でも先進的な成果を挙げている。Flávio Bruno de Sousa氏は、今後はパイロットプラントで水素炉を活用した新しい化学プロセスの開発にも挑戦し、競争力強化と環境負荷低減を同時に追求する方針であると発表を締め括った。


BCI’s Voluntary Blood Lead Improvement Program: Industry Leadership Through Action : Roger Miksad
セッションの最後は、バッテリー・カウンシル・インターナショナル(BCI) 会長兼専務理事であるRoger Miksad氏が、BCIの自主的な血中鉛濃度改善プログラムおよび行動を通じた業界のリーダーシップについて発表した。
BCIは1924年以来、業界を結び付け市場や政策課題の解決を推進してきたが、同時に労働者の健康と安全を最優先事項として位置付けている。特に鉛曝露の問題は各国で規制の方法が異なり、米国では血中鉛濃度に基づく拘束力ある基準が設けられている。BCIは1996年より会員企業からデータを収集し、ベンチマークプログラムを運用することで、自社の状況を競合と比較し改善につなげられる仕組みを構築してきた。
その結果、米国の労働者の平均血中鉛濃度は過去20年間で大幅に低下し、より厳格な追加規制を回避する根拠ともなっている。また同団体は隔年でEHS(環境・健康・安全)カンファレンスを開催し、世界各国の事例や知見を共有している。これらの取り組みは単なる法令遵守にとどまらず、業界全体の信頼性向上と持続的成長の基盤を支えるものとなっている。

パネルディスカッションでは、鉛バッテリー産業における労働者の健康管理についての以下のポイントについて議論がされた。
 ●BCIは1924年以来、業界を結び付け、市場や政策課題の解決を進めてきたが、同時に労働安全も最優先事項と位置付けている。特に鉛曝露に関しては、各国規制が異なる中で、米国では血中鉛濃度に基づく拘束力ある基準が設けられている。
 ●BCIは1996年からデータ収集を開始し、会員企業に対しベンチマークプログラムを提供しており、自社の実績を競合と比較し改善に活かせる仕組みを整備している。この自主的な取り組みにより、米国の労働者の平均血中鉛濃度は過去20年で大幅に低下し、厳格な追加規制を回避する根拠ともなった。
 ●さらに、同団体は隔年でEHS(環境・健康・安全)カンファレンスを開催し、世界各国の事例共有を促進している。労働環境改善の努力は単なる法令遵守を超え、業界全体の信頼確保と持続的成長の基盤となっている。
 


パネルディスカッションによる討論が終了した後、本会議の主催者であるMark Stevenson氏は、2日間にわたる会議は非常に有意義であり、登壇者の方へ敬意を表した。また、会議の準備に費やした約80か月の間サポートしてくれた資料作成や音響・視聴覚対応、運営スタッフなど、多くのチームに感謝の言葉を述べた。Mark Stevenson氏は今後もこうした取り組みを通じて、業界全体の知見共有と課題解決に寄与していきたいと締めくくり、会議の閉幕を告げた。

 

本セッションでは特に、各国の鉛産業における健康管理の取り組みが詳しく議論され、各国の取り組みが紹介された。鉛バッテリーは世界的に需要が安定して高まる見込みであるため、労働者の健康管理に関する国際的なルール作りや取り組みは今後ますます重要となる。
特に発展途上国では、非公式なリサイクルによる健康被害や環境汚染が問題となることが多く、こうした課題への根本的な対策が求められる。今後も鉛バッテリー産業における安全・環境対策の動向を注視していきたい。
本会議では、多くの鉛バッテリー関係者と新たな関係を築くことができた。今後はこのネットワークを取材や相互協力に発展させ、業界動向の一層の理解と発信につなげていきたい。
 

(本会議参加にあたり、親切に協力してくれた本会議のイベントマネージャーLucyさん)


 

(Leoch International Technology Limitedの創業者であるDr. Dong Li氏(真ん中)とオフィスエンジニアであるAngie Lou氏(左)にバッテリーサミットの宣伝をする弊社棚町(右))

 


(IRUNIVERSE MidoriFushimi)

 

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