米アンチモン生産のUSアンチモニーは9月23日、自社ホームページ上で、「米国防兵站局(DLA)との間で、国防備蓄用のアンチモン金属インゴットの供給契約を結んだ」と発表した。中国の輸出規制による価格高騰で脱中国依存が急がれる中、米国はアンチモンのサプライチェーン(供給網)の再構築を目指している。
■高品質アンチモンを軍用に
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USアンチモニーの発表によると、供給規模は最大2億4500万ドル(約362億円)で、数量の上限はなし。契約期間は5年間。海外産に比べ高品質で軍用に耐えられる水準の製品を供給するという。
同社は米国のアラスカ州とモンタナ州でアンチモン精製を手掛け、酸化アンチモンなどを生産している。鉱石はメキシコで買収した鉱山などから調達している。米国は1983年に自国内でのアンチモン採掘を停止しており、同社も原材料調達は海外産に頼っている。
■供給不安一服、価格は峠越え
アンチモンは英MMTA規格の価格が9月18日に高値$5万5000/tonを付けた。7月上旬に$6万1000と過去最高値に上げたのをピークに、調整局面に入っている。
過去3年間のアンチモン価格の推移(MMTA grade)(99.65%)($/ton)
中国は2024年9月にアンチモンを輸出規制の対象とし、同年12月には対米輸出を禁止した。ただ、アンチモンは2024年初めの時点ですでに中国で鉱石の希少性が意識され、もともと資源枯渇懸念が強かった。中国としては、輸出規制は自国資源を守る意味もあった。
輸出規制開始から1年が経ち、アンチモンの供給網は落ち着き始めている。短期的には、規制開始前に購入したインドなどに在庫が偏在しているとの情報があったほか、中国産アンチモンの東南アジアなどを経た迂回輸出ルートが確立されているとの見方がある。
中長期的にも、オーストラリアの資源大手メタリウム(旧MTM)がスクラップからのアンチモン抽出に挑んでいる。また、同じく豪資源のラルボット・リソーシズも豪州内でのアンチモン生産を目指すなど、西側諸国の中国以外でのアンチモン供給を目指す動きは活発化している。アンチモン供給に対する過度な不安は薄れつつある。
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(IR Universe Kure)