気仙沼を拠点に、漁具のリサイクル事業を展開するスタートアップ企業・amu。今年7月には漁師から回収した廃漁網を再資源化して生まれた素材「amuca®」(アムカ)を使用した初のオリジナルコレクション「Buddy Collection」(バディコレクション)の販売を実施し、業界内外から注目を集めた。BtoBでの再資源素材卸事業の確立に挑む同社の近況や今後の展望を同社代表の加藤広大氏に聞いた。
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—— 貴社の漁具リサイクル事業の強みは
当社の特徴は「一気通貫モデル」を構築していること。漁具を回収し、分別、一次処理、ペレット化、そしてケミカルリサイクルや繊維化までを自社でディレクションしており、ブランドやメーカーへの生地活用の提案も同社が直接行っている。もちろん、当社も様々な企業の協力を得て事業を展開しているが、複数の企業・団体とアライアンス(提携)してリサイクル事業を推進する企業が多い中で、サプライチェーン全体を自社でディレクションしている点は当社ならではの強みといえる。
また、単なる素材供給ではなく、漁具に関わる人たちの思いや製品供給に至るまでの背景を“ストーリー”としてエンドユーザー(消費者)に届けることにこだわっている。我々はモノづくりがやりたいわけではなく、ストーリーを見える化して価値に変換することが目的。その目的自体も当社ならではの特徴であると考えている。
類似のビジネスを展開する競合企業としては、再生素材メーカーの㈱リファインバースグループや帝人㈱、パタゴニアなどが挙げられるが、当社としてはあまり、「競合」する相手だとは捉えておらず、漁具・漁網リサイクル市場をともに拡大していくパートナーだと認識している。実際、先に挙げた企業にご協力をいただくことも多い。

加藤代表(左)と同社の広報業務を担うCo-Founderの立元久史氏
――7月15日にクラウドファンディング販売開始した初のオリジナルコレクションでは、手元に届くまでのストーリーを伝える「amuca®タグ」を導入した
「amuca®タグ」は、記載されたQRコードを読み取ると、素材に使用された廃漁具の回収地域、提供者、回収量など詳しい情報を見ることができるもの。ストーリーをエンドユーザーに伝えるという目的においては一定の効果があったと考えているが、本当の意味での目標達成はまだまだこれからといった段階。
その理由は、元々の素材(漁具)を100%使い切っているわけではないこと。リサイクル率を上げれば良いわけでもないが、エンドユーザーにおける感情的価値を創造するためには、100%リサイクルできていると胸を張って言い切れる事業に成長させることが重要だと思う。
繰り返しになるが、モノづくりが当社の目的ではない。今回のクラウドファンディングにおいても、プロダクトとストーリーを受け取った消費者が、水産業に関心を持ち、気仙沼を観光目的で訪れたり、同地域の魚介類を提供する飲食店に来店してくれることを期待したい。
7月15日にクラウドファンディング販売開始した初のオリジナルコレクション
—— 先日、累計1.32億円の資金調達を発表したが、その用途は
まずは販売力の強化。7月15日に初のオリジナルコレクションの販売を開始した通り、現在は自社回収の漁具からようやく生地を生み出せた段階にある。資金を活用し、セールス・広報人材の採用を強化し、国内外での認知拡大や販売体制の構築を行う。同時に、プロダクトが顧客のニーズを満たし、市場に適合している状態を示すプロダクト・マーケット・フィット(PMF)の実績作りにも注力していく。
もう一つはグローバル展開の促進。漁具の廃棄問題は日本だけでなく世界的な課題であるため、東南アジアを中心に回収エリアを拡大していく。既に仙台市が主導する、海外展開を目指すスタートアップ向け伴走支援プログラム「仙台・東北エクスパンションプログラム(STEP)」にも採択されており、今月にもマレーシアにて実証試験を開始する。加えて、海外市場における販売も本格化していく。
なお、素材の供給先となるパートナーとしては、ナイロンを多く使い、かつ私たちのブランドストーリーと相性の良いアウトドアやマリン系のギア・アパレルメーカーが好ましいと考えている。興味のある企業様はお気軽にご連絡いただきたい。
BtoB販売事業の確立へ、「ブレ」を許容できるシステムを
――当面の目標として、漁具由来のぺレッドや生地をBtoBで販売する事業の確立を目指すとのことだが、それに向けた課題は
最大の課題は需要と供給のバランスを保つこと。リサイクル材は原料の配合が毎回異なるため、品質に「ブレ」があるのが当たり前だが、納入先の企業は一定の水準を求めがち。また、「年間○○トンを継続的に卸してほしい」といった要望も受けづらい。そのミスマッチがバランスの崩壊を招くことがある。
そこで、当社としては将来的には数量を決めたうえでのロットごとの事前予約の仕組みを取り入れたいと考えている。例えば「○年〇月に計30トンの生地を生産可能」といった生産計画情報を事前に開示する。場合によっては今回のように“気仙沼地域のみの漁具由来”といった付加価値が担保できない場合もあるが、そういった条件も公開したうえで、品質のブレのリスクも了承した企業と契約を交わし、その企業に向けて生地を生産するといったビジネスモデルが好ましいと思う。そうすれば無理な在庫リスクを抱えずに済み、結果として安定した供給につながるはず。
また、リサイクル推進に関する政府や地方自治体の補助金・助成金が産廃業者向けに偏っている現状も問題提起しておきたい。我々も本質的には地域資源を有効活用しているのに関わらず、制度利用の対象外となるケースが多い。もっと間口を広げてほしい。
――最後に
よく「きれいな海のためにやっている」と認識されがち。誤解を招くかもしれないが、それは一つの手段でしかない。私たちが本当にやりたいのは、漁師や漁村の歴史、カルチャーを伝え、人々の人生に希望やポジティブな価値を届けること。その手段として漁具リサイクルが最も適していると考えている。

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漁具リサイクルを単なる環境活動ではなく、「地域の物語を未来につなぐ手段」と位置づける加藤代表。amu株式会社の挑戦は、資源循環と地域活性の新たな可能性を示している。
【プロフィール】
代表取締役CEO 加藤 広大
二松学舎大学文学部在学中、(株)Gaiaxにて「TABICA」立ち上げを経験。大学中退後、当時最年少で(株)サイバーエージェントに入社。その後、AbemaTVの番組プロデューサーを担いTwitter世界トレンド1位3回、チャンネル優秀賞獲得した。2019年に宮城県気仙沼に移住後、廃漁網アップサイクルに興味をもち事業検証を行う。
2023年5月にamu(株)設立。アジアで活躍する30歳未満のリーダー「Forbes 30 Under 30 Asia 2025」に選出された。モットーは『のびのび、へこたれず』。「リサイクル業界の先輩から学んだ言葉。長いバリューチェーンを抱える事業だからこそ、仲間に任せる柔軟さも大事。自分にできないことを仲間がやってくれる。そのリスペクトを忘れずにいたい。」と加藤氏は語る。
(IRuniverse K.Kuribara)