2025年10月28日、タイ・バンコクで開催されたBIR(世界リサイクリング会議)のタイヤ・ゴム部門において、アジアの先駆的なゴムリサイクル業者が取り扱いの難しい素材に対して価値ある循環型ソリューションについて発表した。
セッションの冒頭、香港に拠点を置くGreencore Resources Pte社のMax Craipeau氏が、タイヤなどの製品からゴムをリサイクルするは、金属やプラスチックの処理よりもはるかに複雑であり、バージン材1トンとリサイクルゴム1トンを単純に置き換えることは容易ではないと指摘した。このため、リサイクル素材の導入に伴う追加コストを相殺できるよう、価値を消費者に伝える必要があり、高額でも購入する意欲が求められることを強調。Craipeau氏最後に、こうした取り組みを続けることで、ゴム製品が適切にリサイクルされ、最終的に埋立地に廃棄されないことを消費者にアピールできると締め括った。
本部門の最初の登壇者は、マレーシアに拠点を置くBridge Fields Resources社の CEOである Asmipudin Mohd Ali Jinnah氏。同社は2004年にイポーでゴムリサイクルを開始し、2010年にラサに大規模工場を移設。無毒かつ低温処理のゴムリサイクル技術を特許取得しており、2019年にはニトリル手袋のリサイクル方法も開発した。同社は回収したラテックスから「White Latex Reclaim」と「Black Latex Reclaim」、さらにラテックスとタイヤを組み合わせたハイブリッド素材を提供し、ニトリル、ブチル、EPDMラテックスからも合成ゴムを回収する。これらのリサイクルゴムは靴底やマットに利用され、粉砕後はスポーツ施設や遊具に活用可能である。
最終的に寿命を迎えた素材はパイロリシスによって油を抽出するために回収されるとのこと。Jinnah氏は、持続可能性の証明として ISO、ISCC、GRS、Cert B などの認証取得が重要であり、マレーシアが2030年までにESG(Environment Social Governance)開示を義務化することを踏まえ、透明性と認証は不可欠であると述べた。
続いて、タイに拠点を置くGreenergy One社の創業者であるAnansinee Thaboon氏が、廃タイヤから回収したカーボンブラック(rCB)にグラフェンを加え、バッテリーメーカー向けの高価値素材を生産する戦略を紹介した。廃タイヤはメーカー、販売店、物流業者、地域などのコミュニティから回収され、選別・乾燥・清掃・粉砕後、パイロリシス処理によって精製 rCB が得られる。グラフェンはメタンやバイオガスから合成され、rCB単体よりも精製後に価値が倍増し、グラフェンとの複合素材として OEM から高く評価される。現在は塗料、インク、プラスチック、技術用ゴムに利用され、将来的には EV 分野への応用も見込まれている。
発表後のパネルセッションでは、UAEのAl Sharif Metal Enterprises社に所属するFaisal Al Sharif氏が参加し、中東市場への展開について議論した。Craipeau氏は、これまで廃タイヤは廃棄物発電や人工芝に利用されてきたが、環境面で欧米では課題となっていることを指摘し、中東においても数十億本規模のタイヤ在庫処理に新しい活用法が提供できる可能性を示した。Sharif氏は中東では原油が豊富であるためゴムのリサイクルは重視されていないが、この技術は湾岸諸国に導入する革新的なチャンスになると述べた。
ゴム製品の循環性についてはJinnah氏が、特に靴などのゴム製品の設計が重要であると強調。安価な靴を大量生産すれば廃棄問題が生じるが、品質の高い製品として設計すれば再利用が可能である。プラスチックや金属部品はリサイクル可能であるが、ゴムや靴底は加硫されており、溶かして再利用することはできない。加硫結合を除去して脱加硫すれば靴底を再生ゴムに戻せると説明した。
同社は、透明性の高い持続可能な製品の提供と第三者認証機関による検証を重視し、Timberland や Decathlon などのブランドに供給している。Jinnah氏は、児童労働や違法労働が関わる場所からゴムを調達することは避けるべきであり、正しい行動を取ることの重要性を強調した。
全体として、会議では ESG パフォーマンス向上に向けた材料代替や循環型経済の実践、認証取得の課題、トレーサビリティや品質管理の重要性、付加価値のあるリサイクルソリューションの必要性が明らかになった。参加者は、透明性と倫理を重視した運営、プロセス改善、データ活用、ブランドとのコミュニケーション強化を通じて、持続可能な製造慣行を進めることにコミットしていることを確認した。

パネルディスカッション終了後、IRuniverse取材チームはGreenergy One社(タイ)のAnansinee Thaboon氏に直撃取材を行った。日本では現在、石炭の代替燃料として廃タイヤ由来のタイヤチップが利用されており、高いカロリーを活かして発電や熱源としての需要が増えている。一部の企業ではタイヤチップを独自のビジネスとして取り扱う動きもあるという。
一方、タイでは廃タイヤの価格が高騰する中、Greenergy One社は廃タイヤから回収したカーボンブラック(rCB)の製造・販売を主たる事業としており、収益確保が事業の中心であるとThaboon氏は説明した。rCBは廃タイヤや廃プラスチックから回収され、ゴムや樹脂の補強材として再利用される素材である。Thaboon氏は、日本でタイヤチップビジネスが既に確立していることを歓迎し、同市場での活動にも前向きな姿勢を示した。
さらに、IRuniverseが主催する第6回サーキュラーエコノミーシンポジウム in NAGOYA(11月25日)でタイの先進的なタイヤリサイクルについて発表してほしいと交渉したところ、Thaboon氏はスケジュールが許せば参加したいと前向きな意向を示し、現在調整が進められている。
タイヤチップやリサイクルカーボンブラックの活用は、エネルギー効率の向上と廃棄物削減を同時に進める持続可能な取り組みとして注目される。今後もアジア各国における循環型リサイクルの実践が拡大する可能性は高く、企業の収益性と環境対応の両立に向けた動きが加速しそうである。
(IRuniverse Midori Fushimi)