2025年のアンチモン価格は山形の推移となった。2024年9月の中国の輸出規制を受け年前半は供給不安からの上昇が続いたが、調達元の多角化が進み、複数の経路からの調達が可能となった。過度な供給不安が和らぎ、年末価格は年初価格とほぼ並ぶ水準に戻った。
■夏に6万ドル台も年初の4万ドル台に戻す
2025年のアンチモン価格の推移(MMTA grade)($/ton)

MMTAグレードのアンチモン価格は12月5日に高値$4万2500/tonを付けた。1月19日以来の安値水準で、年初価格($4万1500)とほぼ同水準となる。7月11日-16日には6万1000まで上げたが、ここを頂点に年後半に向け下落した。
中国は2024年9月にアンチモンを輸出規制の対象とした。同年12月にはアンチモンの対米輸出を禁止したが、これは10月の米中首脳会談を経て1年間延期した。対米輸出の禁止が解かれただけで、中国からのアンチモンの輸出が審査・認可を得なければならない状況は変わらない。
規制の継続を受け、中国の生産者のアンチモン輸出意欲は衰えている。上海有色網(SMM)は11月21日のレポートで、「税関データによると、2025年10月の中国のアンチモン酸化物輸出は1億8千トンだった。過去の月間輸出量と比べて、現在のアンチモン酸化物輸出はほぼゼロに近い」と指摘した。
■日米、東南アジアや韓国からの輸入増加
アンチモンは鉱石生産で中国が6割を占める。その中国は輸出規制前の2024年初めからアンチモンの資源枯渇が言われており、輸出規制は必ずしも資源武器化の面だけでは語れない。一方で、世界の国々は規制開始後、中国以外からの調達を進めた。
アンチモンの埋蔵量と鉱石生産量の世界シェア

(出所:JOGMEC)
まず、2025年に入り「(中国輸出規制の)先回り輸入を増やしたインドなどで在庫のだぶつきが出ている」(関連トレーダー)との噂が広がった。また、輸出規制後に、中国からタイなど東南アジア向けのアンチモン輸出が増えているとの報道も聞かれ、迂回輸出を含めて別ルートが構築された可能性も指摘された。
調達の多角化は日本のアンチモン輸入状況からも見て取れる。10月の財務省貿易統計によると、輸入元はここまで中国の輸入減少に代わって、主にミャンマーと韓国からの輸入が増えている。またベトナムとタイからの輸入量も2025年の日本のアンチモン塊粉の輸入量全体の3割を占める。10月はマレーシアやラオスからの輸入があった。
米国でも状況は同じであるようだ。アルム出版の12月のレアメタルニュースによると、米国はアンチモン輸入について、タイ、インド、ベトナムからの代替えが進んでいる。特にタイとインドからの輸入量が増加しているという。
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2026年も中国産のアンチモンをめぐる状況は変化が期待できないが、特に西側諸国は代替手段の構築に半ば成功しつつあり、過度な供給不足への警戒感は薄れつつある。中国規制の発表前の2024年8月上旬時点のアンチモン価格は$2万3700。この水準まで落ちるかはともかく、2026年は上昇よりも下落の可能性が大きいだろう。
過去3年間のアンチモン価格の推移(MMTA grade)($/ton)

(IR Universe Kure)