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経済安全保障の次なる焦点:経産省が主導する「重要鉱物・マテリアル」戦略の最前線と資源循環エコシステムの構築

2026/02/22 11:13 FREE
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経済安全保障の次なる焦点:経産省が主導する「重要鉱物・マテリアル」戦略の最前線と資源循環エコシステムの構築

近年、地政学的リスクの高まりとともに、産業の血液とも言える「重要鉱物」の安定供給が国家的な課題となっている。2026年に入り、経済産業省をはじめとする日本政府は、重要鉱物のサプライチェーン強靱化に向けた動きをかつてないスピードで加速させている。

特筆すべきは、従来の「海外権益の獲得」に重きを置いたアプローチから、国内における「資源循環・精錬網の構築」を中心とした総合的なエコシステムの形成へと、政策の軸足が明確にシフトしている点である。本稿では、直近の政策議論から、日本の金属産業およびリサイクル業界が直面するパラダイムシフトを読み解く。

1. 新審議会が提示する「自律性」へのロードマップ

2026年2月19日、政府の成長戦略本部が掲げる戦略分野の一つとして、「マテリアル(重要鉱物・部素材)」に関する新たな審議会が発足した。この場で最大のテーマとして掲げられたのが、特定国への依存度を低減し、サプライチェーンの「自律性」を確保することである。

具体的には、「鉱山開発・製錬事業の形成」「金属部素材の生産能力拡大」「技術開発とリサイクルの加速化」などが主要な論点として提示された。特にアルミニウムのスクラップ循環網の最適化や、ベースメタルの効率的な回収といった、国内の「都市鉱山」を活用したクローズドループの形成は、経済安全保障と脱炭素化の両面から急務と位置づけられている。

1.1 マテリアル・重要鉱物分野の新たな審議会がスタート(2026年2月19日)

政府の成長戦略本部が掲げる戦略分野のうち、「マテリアル(重要鉱物・部素材)」分野の課題整理と政策の方向性を議論する審議会の初回会合が2月19にtつ開催された。 中国など特定国への依存度が高い重要鉱物の調達リスクを低減し、「自律性」を確保することが最大のテーマとなっており、以下の5つの論点が掲げられている。

  • 鉱山開発・製錬事業の形成
  • 金属部素材の生産能力拡大
  • 技術開発とリサイクルの加速化(ブラックマスをはじめとする蓄電池リサイクルや、ベースメタルのスクラップ循環などもこの文脈で強力に推進されています)
  • 調達の多角化
  • 国際連携

2. 米・欧・日や資源国との国際連携の急加速(2026年2月)

国内での議論と並行して、同志国やグローバルサウスの資源国との枠組み作りも急速に進んでいる。

  • 米欧日による共同声明(2月4日): 米国、欧州連合(EU)、日本が合同で、重要鉱物のサプライチェーン強靱化に向けた戦略的パートナーシップの形成を発表しました。
  • アフリカ諸国との連携(2月9日〜10日): 松尾経済産業審議官が南アフリカで開催された「マイニング・インダバ2026」に出席し、コンゴ民主共和国などアフリカの資源国と重要鉱物分野での二国間協力を議論しました。
  • 貿易大臣会合への出席(2月13日): 赤澤経産相が米国で、重要鉱物に関する貿易大臣会合に出席し、連携強化を確認しています。

3. 「重要鉱物の供給確保計画」に基づく支援の実装

経産省は経済安全保障推進法に基づき、民間企業への助成を継続的に行っています。タングステンやモリブデンといった特定鉱物、アルミニウムの原料確保のほか、蓄電池メタルのリサイクル実証事業などに対しても国費による支援枠組みが活用され、国内における資源循環と精錬網の構築を後押ししています。

4. 蓄電池リサイクルと「ブラックマス」の戦略的価値

政策的支援の中で、現在最も熱を帯びている領域の一つが蓄電池リサイクル分野である。電気自動車(EV)の普及に伴い、将来的な廃バッテリーの大量発生が見込まれる中、これを国内の貴重な資源としていかに囲い込むかが問われている。

特に、LFP(リン酸鉄リチウム)を含む各種バッテリーからニッケル、コバルト、リチウムなどの有価金属を含んだ「ブラックマス」を抽出し、再び電池材料として国内で精錬・再資源化する技術は、サプライチェーン防衛の要となる。経産省の経済安全保障推進法に基づく支援枠組みもこうしたリサイクル実証事業に活用され始めており、事業化とスケールアップに向けた官民の動きが活発化している。

5. 国際連携の多角化:特定鉱物の供給網再構築

国内での資源循環網の構築と両輪をなすのが、同志国およびグローバルサウスの資源国との国際連携の強化である。

2026年2月上旬には、米国、欧州連合(EU)、日本による重要鉱物サプライチェーン強靱化に向けた戦略的パートナーシップの形成が発表された。また、同時期に南アフリカで開催された「マイニング・インダバ2026」には経産省幹部が参加し、アフリカ諸国との二国間協力を直接的に働きかけている。

これにより、タングステンやモリブデンといった特定鉱物や各種レアメタルにおいて、特定国からの脱却を図り、グローバルな調達ネットワークの多角化が急速に推し進められている。

結論:リサイクル産業は「静脈」から「動脈」へ

経産省が主導するこれら一連の政策動向は、国内の金属スクラップ業者、製錬メーカー、そして高度な選別・抽出技術を持つ企業にとって、かつてないビジネスチャンスを意味する。

金属リサイクル産業は、もはや単なる廃棄物処理(静脈産業)ではなく、次世代の産業基盤を支える戦略的な素材供給源(動脈産業)へとその位置づけを変えた。政策の追い風を受け、いかにして国内に付加価値の高い資源循環ネットワークを定着させるか。2026年は、日本のマテリアル・リサイクル産業にとって歴史的な転換点となるだろう。

 

(IRUNIVERSE)

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