中東の紛争に伴う世界経済の動揺が止まらない。金融アナリストの川上敦氏は3月9日の「Chuck Kawakamiの金融経済Now」最新オンラインライブで、「紛争長期化なら原油価格は瞬間的に1バレル=120ドル、為替相場も1ドル=170円まで上げる」と予想する。ただ、紛争が早期終結すれば話は別で、月末までの紛争の行方が焦点になる。(図表はmiruおよび「Chuck Kawakamiの金融経済Now」から)
川上氏は原油や為替相場について、「戦争という経済外要因をどう見るかだ」と指摘。「もしトランプ米大統領が話す通り、4週間やあるいはもっと短期に紛争が終結すれば、原油価格も100ドルそこそこ、ドル円相場も160円前後が上限となり、やがて価格は反転するだろう」と話した。
過去3か月間のNY原油価格の推移($/barrel)

過去3か月間のドル円相場の推移($/JPY)

■原油高、米国の「上流」にはプラス
川上氏は今回の原油価格高騰は「実は米国の上流、特にサービス業にはプラス」と話す。消費大国である米国の労働市場の中心は医療、教育やレジャー、飲食業などのサービス業に移っており、実は原油高による経済全体への打撃はほかの国よりも小さい。
米国の労働状況

対して打撃を受けるのは下流、つまり製造業で、これは世界共通だ。このため今回の紛争で「苦しいのは(製造業大国である)中国。原油調達元だったベネズエラとイランを米国に掌握・攻撃され、『世界の工場』としての経済全体にしわ寄せがくる」と予測する。
■円は反転の可能性も使いでなく
一方、円安について川上氏は「これまでの円安の主要因だった日米金利差は縮まっており、円安バイアスのピークは終えた」として、戦争という特殊要因を除けば反転ムードだと指摘。円売りは短期投資家が仕掛けている面もあるため、「日銀が利上げに踏み切ればインパクトがあるだろう」と話した。
日本の実効為替レート

ただ、日本の実質的な購買力である実効為替レートは既に1970年代の水準に落ちている。川上氏は「今や円は1ドル=360円時代よりも使いでがない」と話す。購買力が衰える中、世界的な品不足やインフレの中で、エネルギーや食料を買い負ける可能性が無きにしもあらずだ。
■世界経済は鈍化も流動性高く
主要金融機関の世界経済見通し

戦争要因を除いた世界経済全体は減速傾向ではあるもののなお底堅い。米国が労働市場に不安がありながらも持ちこたえ、欧州は横ばい。日本は政権が変わり消費マインドが改善した。ただ日本は機械化が遅れるなど変化に乏しく、企業はなお設備投資を増やせる余地がある。中国経済は消費が悪く、回復のモメンタムは見られない。
資金の流動性は変わらず過去最高の水準で、あり余ったお金をもとに世界的に投資意欲は活発だ。これまで勢いがあった株式は小休止だが、「まだ調整の範囲内で、本格的な下落傾向とは言えない」(川上氏)。川上氏は「金や銅の上昇も一巡した」とも話すが、金属相場にはなお投機的資金は向かいやすい。
(IR Universe Kure)