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Fe scrap watch2026#4 鉄スクラップ市場の深層:高炉のプレミアム調達とホルムズ・ショックがもたらす「スプレッド縮小」のジレンマ

2026/04/07 18:59
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Fe scrap watch2026#4 鉄スクラップ市場の深層:高炉のプレミアム調達とホルムズ・ショックがもたらす「スプレッド縮小」のジレンマ

現在、国内の鉄スクラップ市場は、価格の先高観と実需の低迷が入り交じる複雑な局面を迎えている。西日本のディーラー動向から浮かび上がるのは、高炉メーカーと電炉大手の明確な戦略の乖離、そして経済安全保障を背景としたリソース・ナショナリズムの台頭である。一方で、中東の地政学リスクの長期化がサプライチェーン全体を蝕み始めており、鉄鋼メーカーはかつてないジレンマに直面している。

1. 乖離する高炉と電炉の調達・価格戦略

現在、国内市場を牽引しているのは日本製鉄やJFEスチールといった高炉メーカーである。西日本市場を中心に、新断やHSといった上級鉄スクラップの買値はすでにトン当たり6万円台に突入している。

これに対し、電炉の王者である東京製鐵は追随を意図的に控えている。同社の新断建値は55,000円にとどまっており、実勢価格としての「裏値(プレミアム)」を考慮したとしても、高炉の提示価格には及ばない。この価格差の背景には、東京製鐵の明確な技術・調達戦略がある。同社は「下級スクラップを活用して高品質な鋼材製品を製造する」ことに主眼を置いており、特級と一級の買値をいずれもトン5万円と同値に設定している点にその姿勢が顕著に表れている。これは単なるコストダウンだけでなく、過熱する輸出市場に対する牽制(輸出対策)としての意味合いも強く帯びている。

(市中実勢H2スクラップ価格の推移 yen/ton)

 

2. 経済安全保障と「資源囲い込み」の加速、そしてディーラーの懸念

今後も高炉メーカーは上級品種に対してプレミアムを支払い続ける公算が大きい。その根底にあるのは「経済安全保障」という大義名分のもとで進む、国内資源の囲い込み戦略である。

脱炭素化の流れの中で、鉄スクラップは単なるリサイクル原料から「戦略物資」へとフェーズを変えた。日本製鉄の本音としては、国内の貴重な良質スクラップの流出を防ぐだけでなく、輸出税を課すことで「国内の良質なスクラップを安価に独占調達できる有利な条件」を維持したいという思惑が透けて見える。

しかし、仮にこの輸出税構想が現実のものとなれば、日本国内の鉄スクラップ市場は国際市況から乖離した独自の相場(国内独自の安値圏での固定化)を形成するリスクを孕んでいる。これは、より高く売れる海外市場への販路を制限され、国内の巨大高炉メーカーに価格決定権を握られることを意味する。サプライヤーである鉄スクラップディーラーからすれば、収益機会を奪われる全く望ましくない市場環境の到来であり、メーカー側との潜在的な利害対立は今後さらに深まるだろう。

3. 短期的な価格見通し:早まる大台到達の可能性

こうした中長期的な市場分断の懸念はあるものの、足元の需給逼迫と様々な地政学リスクを背景に、目先のスクラップ価格は市場の想定を上回るペースで上昇していく可能性が高い。H2のトン6万円、新断のトン7万円という大台への到達は、従来の予測よりも前倒しされるシナリオを視野に入れるべきだ。

直近の試金石となるのが、4月10日に控える関東鉄源の輸出テンダーである。市場では大幅な価格上昇が織り込まれており、落札価格は53,000円前後に達すると予想される。また、これに連動する形で中部鉄源における新断価格も大幅な続騰を見せることはほぼ確実な情勢である。

(最近1年間の関東鉄源テンダーと中部鉄源新断価格の推移 yen/ton)

4. アキレス腱となる「スプレッド縮小」と実体経済の乖離

しかし、原料価格の高騰が鉄鋼メーカーの収益に直結するわけではない。むしろ、現在の市場の最大のリスクは「スプレッド(利ざや)の急激な縮小」と「実需の冷え込み」である。

特に懸念されるのが「ホルムズ・ショック」の長期化がもたらす多重的なサプライチェーンの寸断だ。

  • 最終製品の減産: 物流網の混乱により、自動車や家電などの製造業で部品調達が滞り、最終製品が作れないことによる減産が顕在化している。これにより、鋼材に対する実需そのものが伸び悩むことになる。

  • 鉄鋼メーカーの操業リスク: 影響は需要側にとどまらない。鉄鋼メーカー自身も副資材の入手難に直面しており、最悪の場合、原料(スクラップ)の確保以前に、生産停止を余儀なくされる事態が懸念される。

総括

現在の鉄スクラップ市場は、高炉の積極調達と資源囲い込み戦略によって強力な上昇圧力がかかっている。しかしその足元では、輸出税構想に見え隠れする市場のガラパゴス化の懸念、ホルムズ・ショックに端を発する実体経済の停滞、そして副資材不足という深刻なボトルネックが口を開けている。原料高・製品安という「縮小するスプレッド」にどう立ち向かうのか、各メーカーの調達力と価格転嫁力がかつてなく問われる局面に入っている。

(IRUNIVERSE YT)

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