Loading...

Fe scrap watch2026#5 関東鉄源4月テンダーで54,000円!H2トン6万円への道筋と顕在化する反転リスク

2026/04/09 16:11
文字サイズ
Fe scrap watch2026#5 関東鉄源4月テンダーで54,000円!H2トン6万円への道筋と顕在化する反転リスク

1. エグゼクティブ・サマリー(要旨)

足元の鉄スクラップ市場は、歴史的な円安と底堅い輸出需要を背景に強力な上昇モメンタムを維持しており、指標となるH2(特級)のトン当たり6万円到達は十分に射程圏内にある。9日の関東鉄源輸出テンダーでの大幅な価格上昇や、国内最大手である東京製鐵の全工場一律1,500円の買値引き上げは、この強気基調を明確に裏付けるものである。

(関東鉄源輸出テンダーの推移 Yen/ton)

(東鉄田原H2価格と市中実勢H2価格の推移)

しかしながら、現在の価格上昇はアジア圏における鋼材実需の力強い回復によるものではなく、為替要因や地政学リスクによるコストプッシュの側面が強い。目先は強気相場が継続する公算が大きいものの、海上運賃の高騰やそれに伴う船積み遅延が国内需給を急激に緩めるリスクを孕んでおり、市場は徐々に「天井警戒エリア」へと移行しつつあるとみるべきである。

2. 上昇を牽引するファンダメンタルズ(強気材料)

現在の相場を強力に押し上げている主要因は以下の2点に集約される。

  • 強烈な輸出ドライブと円安効果

    4月の関東鉄源輸出テンダーは前月比4,208円高の54,329円で決着し、市場の強い先高観を反映した。特にベトナム向け輸出価格がトン380〜390ドルという高値で推移するなか、158〜159円という歴史的な円安水準が強力なブースターとなっている。ベトナム着価格換算でトン当たり60,000〜62,000円レベルに達しており、これが国内相場の水準を大きく切り上げている。

  • 国内電炉の防衛的値上げと価格水準の切り上げ

    高値の輸出市場へのスクラップ流出を防ぐため、国内電炉メーカーは対抗措置を講じている。東京製鐵は全工場でトン当たり1,500円の買値引き上げを発表した。これにより、主要拠点である東鉄田原のH2買値は52,500円、新断は57,500円へと水準を大きく切り上げている。これは自社の入荷・原料確保を最優先とした明確な「防衛的値上げ」であり、輸出価格(テンダー価格54,329円)とのスプレッドが埋まるまでは、国内相場が引き続き上値を探る展開が想定される。

3. 警戒すべき反転リスク(弱気・懸念材料)

強気な指標が並ぶ一方で、外部環境の不安定さが相場の急ブレーキとなるリスク要因が顕在化しつつある。

  • 地政学リスクに伴う海上運賃の高騰と船積み停滞

    イラン情勢の緊迫化やホルムズ海峡周辺の地政学的リスクを背景とした原油価格の変動は、海運市場に直接的な影響を及ぼしている。フレート(海上運賃)の高騰や配船の難航が深刻化した場合、高値での輸出オファーが実際の成約・船積みに結びつかず、国内にスクラップが滞留する恐れがある。滞留在庫の増加は、タイトな国内需給を一気に緩和させ、価格下落の引き金となる。

  • アジア鋼材実需との乖離と「需要破壊」への懸念

    ベトナムからの引き合いは旺盛であるものの、中国市場の停滞を含め、アジア全体の鉄鋼製品(製品建値)の実需が力強く回復しているわけではない。スクラップ価格の上昇が製品価格へ十分に転嫁できない状況が続けば、海外ビレットメーカーや電炉メーカーの採算が悪化し、ある一定の価格水準で突如としてスクラップの購買意欲が減退する「需要破壊」が起こる可能性がある。また、急激な為替の巻き戻し(政府・日銀による為替介入への警戒感など)が発生した場合の反落リスクにも引き続き留意が必要である。

4. 今後の展望と戦略的フォーカス

目先の市況としては、為替と輸出主導による牽引力が依然として強く、東鉄田原のH2買値が52,500円に乗せたことで、大台であるH2の60,000円到達を試す展開が現実味を帯びている。現在の上昇局面は「まだ上げの途中」と評価して差し支えない。

ただし、相場転換のサインをいち早く察知するためには、以下の指標を定点観測することが推奨される。

  1. 輸出商談の「実成約」ボリューム: オファー価格だけでなく、高値での実際の成約数量と配船の進捗状況。

  2. 為替動向と国内電炉の入荷状況: 円安是正の動きが出た際の、国内電炉の買値引き下げのタイミングと足元の工場在庫水準。

  3. フレート市場の動向: 中東情勢に端を発するエネルギー価格と海上運賃の上昇幅。

総じて、高値追いを継続しつつも、実需の裏付けが乏しい中での「コストプッシュ型インフレ」特有の脆さを認識し、予期せぬ外部要因による急反落シナリオを常にポートフォリオの片隅に置いておくべき局面と言える。

(IRUNIVERSE YT)

関連カテゴリ

関連記事

新着記事

ランキング