2026年5月15日、創業48年の老舗レアメタルリサイクル企業、株式会社メタルドゥが大阪本社にて「経営継承セレモニー」および「祝賀会」(リーガロイヤルホテル)を執り行った。レアメタルリサイクルが「廃棄物、くず屋」と呼ばれていた時代から「サーキュラーエコノミーの中核」へと劇的なパラダイムシフトを遂げる中、長年同社を牽引してきた経営陣から次世代リーダーへとバトンが渡された。
■ 塩田健司 新社長:現場力を武器に「資源循環の当事者」へ
初のプロパー出身社長として就任した塩田健司氏は、入社からの24年間を振り返り、ニッケル相場の暴落やリーマンショック、コロナ禍による航空機向けチタン市場の低迷など、幾多の危機を乗り越えてきた同社の「底力」は社員一人ひとりの「現場力」にあると強調した。
現在、年商180億円規模へと成長した同社の次なる課題として「サーキュラーエコノミー加速化への対応」「サプライチェーンにおける中間業者の役割確立」「人材確保・育成」を挙げ、以下の3つの方針を堅持すると表明した。
会社の成長と持続: 経営基盤を維持・拡大し、収益体制を強化する。
社員の幸福の実現: やりがいと公平な評価制度を備え、物心共に報われる会社づくり。
社会貢献: 特定国への依存や供給途絶リスクが高まるレアメタル資源において、高度な再生技術で産業界への安定供給に貢献する。
また、新たな経営理念の軸として、ミッション・ビジョン・バリューを再定義するとともに、新タグライン「回せ資源を、つなげ未来へ」を発表。持続的な成長企業へと導く力強い決意が語られた。
■ 片山こころ 新専務(営業本部長):トレードから「プロダクション」への進化

入社30年目を迎える片山新専務は、新設された「営業本部長」としての具体的な戦略を提示した。今後の同社ビジネスモデルの根幹を成す3つの重点課題は以下の通りである。
部門間連携の強化: 国内外の営業部、物流部、管理部の垣根を取り払い、情報共有と業務効率・品質管理を飛躍的に向上させる。
「Made in Metal Do」の確立: 単なる売買(トレード)にとどまらず、設備投資と加工技術による付加価値を追求し、プロダクション(製造拠点)への進化を図る。
国際化とDXの推進: 環境対応やコンプライアンスに精通した原料ハブ企業として世界中から原料を調達。同時に、AI・DXを積極的に導入し次世代型のビジネスモデルを構築する。
■ 山頬 前社長(新相談役):付加価値追求への転換と次世代への託し

13年間にわたり社長を務めた山頬俊彦氏は、社長就任時に掲げた「数量重視から付加価値重視への転換」が結実したことを回顧した。
月間取扱量2000トン強という規模を追うのではなく、ファースト物流センターへの傾斜型チタン切断機の導入をはじめとする設備投資を断行。加工の幅を広げ、品質と付加価値を高めたことが現在のメタルドゥの強固な基盤となっていると語り、今後は「一歩下がった立場」から新体制へ助言を行っていくと述べた。
■ 藤田國廣 元相談役(退任):半世紀の歴史と「変化」への期待
前身時代を含め半世紀にわたり同社の土台を築き、今回退任を迎えた藤田國廣氏は、激動のレアメタル業界を生き抜いてきた歴史を振り返った。

若い社員たちに向けては「過去の価値観にとらわれることなく、急速に変化する情報やイノベーションを活用し、新たな価値を社会に提供し続けてほしい」とメッセージを送り、世代交代による内部変革に大きな期待を寄せた。

■ 祝賀会:来賓が語るメタルドゥの真髄

リーガロイヤルホテルに場所を移して行われた祝賀会では、長年同社を支えてきた来賓から、同社の歩みと今後への期待が語られた。
【山田庸男 弁護士が語る「引いて勝つ」経営哲学】

30年以上にわたり顧問を務める山田弁護士は、2008年のリーマンショック時の知られざるエピソードを披露した。当時、業績好調により上場(IPO)の準備を進めていた矢先に未曾有の経済危機が直面。藤田氏は即座に上場を断念し、大規模なリストラや給与カットという苦渋の決断を下したという。
山田弁護士は、「中小企業は業績が落ち込んでも最後まで無理に頑張ってしまうことが多い中、藤田氏の『引いて勝つ』経営判断は本当に素晴らしいものだった」と称賛。新社長に対しては「何のために会社があるのかという経営哲学をしっかりと持ち、企業を成長させてほしい」とエールを送った。
【豊通マテリアル株式会社 浅井繁 社長が期待する「地上資源」の活用】

2003年、そして2019年と資本参加を通じて絆を深めてきた豊通マテリアルの浅井繁社長は、今後の重点分野として「EV向けバッテリーリサイクル」への期待を語った。
「資源ナショナリズムによる囲い込みが起きる中、日本はスクラップという『地上資源』の有数な保有国である。メタルドゥの回収網と加工技術を生かし、共に日本国内での資源再生を通じて社会貢献していきたい」と、サーキュラーエコノミーにおける両社の強固なパートナーシップを強調した。
■ 60年前の中古トラックから始まった軌跡と「人生賛歌」

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祝賀会のハイライトとなったのは、プロのソプラノ・テノール歌手とピアノ演奏によるステージである。そこで披露されたのは、森繁久彌の「人生賛歌」。今から60年前、藤田氏自身が中古のトラックに乗り、一人でスクラップの仕入れに奔走していた時代に、よく口ずさんでいたという思い出の曲だ。
激動の時代を乗り越え、今日のメタルドゥを築き上げた藤田氏の歩みと重なる、その味わい深い歌詞をここに掲載しておきたい。
1.どこかで微笑む人もありゃ
どこかで泣いてる人もある
あの屋根の下
あの窓の部屋
いろんな人が生きている
どんなに時代が移ろうと
どんなに世界が変わろうと
人の心は変わらない
悲しみに喜びに
今日もみんな生きている
だけどだけど
これだけは言える
人生とはいいものだ
いいものだ
(ムムムム~~~~)
人生とはいいものだ
2.どこかで愛する人もありゃ
どこかで別れる人もある
この空の下
この雲のかげ
いろんな人が生きている
どんなに時代が移ろうと
どんなに世界が変わろうと
人の心は変わらない
幸せがつかめずに
今日も誰か涙する
だけどだけど
これだけは言える
人生とはいいものだ
いいものだ
人生とはいいものだ
■ 取材後記(IRUNIVERSE 棚町)
長年、それこそ大阪商事時代から見てきた私からすると、メタルドゥも確実に第4、第5世代が育ってきていることを痛感する。これまでの一部のトップメンバーから、組織的な会社へと成長していることを肌で感じた。また、創業者である藤田氏もそのことをうれしく感じており、目を細めながら次世代へ安心してバトンを託す姿が非常に印象深いセレモニーであった。
(IRuniverse YT)