5月19日9時半、神戸製鋼所は、KOBELCOグループ中期経営計画 (2024~2026年度)進捗説明会を開催した。説明に使われた資料はこちら。説明は勝川社長が行った。なお、説明会は音声トラブルで開始が10分強遅れた。
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〇事業環境認識と中東情勢の影響

●メガトレンドの継続と変化
トランプ関税、地政学リスクの高まり、人口構造の変化(少子高齢化による国内需要の縮小や人手不足)などのメガトレンドは継続しているが、国内の鋼材市場における縮小スピードは想定より早まっている。
●中東情勢悪化によるリスク
中東情勢の悪化によるマイナス影響を年間で約200億円規模と想定。26年度の業績見通しには、この状況が「26年度上期末まで継続する」という前提で、半期分にあたる約100億円のマイナス影響を既に織り込んでいる。
・原油市況高騰・物流コスト増(▲100億円): 原油市況の高騰に伴うエネルギー価格や物流コスト、諸資材価格の高騰による影響。操業を止めるような重大な影響は出ていないものの、各事業(鉄鋼、素形材、溶接、機械、エンジニアリング、建機)で少なからずコストアップが発生すると見込む。
・機械系事業における売上減少・時期ずれ(▲60億円): 中東向けの取引が減少、あるいは納入の遅れなどが発生するリスク。会社全体の売上に占める中東向けの割合は約1%だが、機械系事業(機械、エンジニアリング、建機)に限ると売上の3〜5%を占めているため、情勢が長引けば相当程度の影響が出ると警戒している。
・アルミ関連事業における調達コスト増(▲10億円):アルミ関連事業において、原材料を代替調達することによるコストアップを見込む。
・その他の間接的・未確定な影響(▲α):現時点では金額として算出されていないが、以下のような影響が顕在化することを懸念し、今後の動向を注視。
原油関連製品の供給減や物流停滞に伴う、自社の生産・出荷への制約。
顧客や取引先における生産・販売面への影響(間接的な影響)。
現時点では間接的な影響は軽微とされるが、会社としては予断を許さない状況と認識しており、長期化によるコストアップの継続に危機感を持っている。
〇中期経営計画 最重要課題の進捗評価
●稼ぐ力の強化(評価:△)
アルミ板やアルミ押出材で厳しい状況が続いており、グローバルでの事業基盤整備も道半。一方で、アルミサスペンション事業は生産が安定し、黒字化を果たすなど成果も出ている。
●成長追求(評価:△)
機械・エンジニアリング事業は高い収益を上げており、建機や溶接などの海外展開も進展しているが、M&Aを含めた将来の成長に向けた具体的な施策はこれからという段階。
●カーボンニュートラルへの挑戦(評価:〇)
製鉄プロセスにおいて、2030年度のCO2排出量30%削減(13年度比)に向けた技術的なめどが立った。電力事業でもアンモニア混焼20%の実現に向け、長期脱炭素電源オークションを落札するなど着実に進捗している。
●サステナビリティ経営の強化(評価:〇)
「KOBELCO-X(コベルコエックス)」と名付けた全社的な変革活動を推進し、社内の意識浸透が進んでいる。CDPやMSCIといった外部評価機関からも高い評価を獲得した。
〇事業領域別の取り組み・ポートフォリオ戦略
独自の収益構造の構築を目指し、事業ポートフォリオの見直しを進めている。
●素材系:収益力の改善・改革が急務
・アルミ板:自動車向けの不調等で減損を実施。早期にROIC(投下資本利益率)6%の達成を目指す。
・アルミ押出材:ダウンサイジングや他社との協業を含めた抜本的な改革を検討中。
・アルミサスペンション:生産課題が解決し、今後は成長事業へとポジションを転換する。
・鋼材:国内需要の減少に備え、下限出銑量を10%以上減らす技術開発などで損益分岐点の引き下げに注力中。
●機械系:成長ドライバー
幅広い分野にアプローチし、特定のドメイン(ORV(気化器)、ゴム混練機、等方圧加圧装置など)で世界や国内の高いシェアを獲得している。また、素材系と機械系が連携する部門横断の「半導体ワーキンググループ(半導体WG)」を設置し、成長市場の需要を取り込むアプローチを行っている。
※半導体WG
・一体となった顧客課題の解決:機械系が持つ装置(半導体検査装置や等方圧加圧装置など)と、素材系が持つ材料(アルミ板や銅板など)、さらには成膜といった技術を組み合わせ、一体となってユーザーの課題解決に取り組んでいる。
・既存メニューの拡販と新規事業の探索:半導体製造の各工程に向けて販売メニューを有しており、既存製品の拡販だけでなく、新たな事業機会の探索も推進している。
・事業機会の最大化と投資の見極め:グループ全体の事業機会を最大化させるとともに、技術開発への投資の見極めなどにも注力。
●電力事業:安定基盤
安定的な収益基盤としての役割を果たしつつ、維持更新を進める。
〇財務状況とキャッシュアロケーション
●財務指標の進捗
25年度のROICは5.3%となり、目標の6%には届かなった。一方、純資産比率は46.4%(目標40%台前半)、D/Eレシオは0.61倍(目標0.7倍台半ば)となり、安全性指標については目標を前倒しで達成した。
●投資計画
財務規律を維持しつつ、次期中期に向けた成長投資を検討している。今中期期間の事業投資は約8,300億円を予定し、そのうちカーボンニュートラル関連投資は2030年度までに合計約3,000億円を見込んでいる。また、株主還元には約4,500億円を充てる計画。
〇コーポレート・ガバナンスと組織変革(KOBELCO-X)
●ガバナンスの強化
取締役会の多様性を進め、独立社外取締役の比率を46.2%、女性取締役の比率を30.8%へ引き上げる予定。また、全取締役が参加する会議で中長期戦略やサステナビリティに関する議論を活性化させている。
●DX・業務変革
生成AI(Microsoft 365 Copilot)を活用した実証実験を3,600人規模で実施し、月平均240分の業務削減効果を確認。KOBELCOグループでは、こうした成功事例や失敗事例を社内で可視化・共有し、表彰する仕組みを整えることで、26年度からの全社展開に向けた変革を後押ししている。
●人材戦略
年間30カ国の株式を配布する株式報酬制度を導入し、従業員の経営参画意識とエンゲージメントの向上を図る。
カーボンニュートラルについてはこちら➡「神戸製鋼所:カーボンニュートラルロードマップ説明会を開催」
(IRuniverse 井上 康)