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【インタビュー】国内アルミベースメタル市場の現在地〜「価格の歪み」と地政学リスクをどう乗り越えるか〜

2026/05/22 11:34
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【インタビュー】国内アルミベースメタル市場の現在地〜「価格の歪み」と地政学リスクをどう乗り越えるか〜

 長引く地政学的リスクや国際物流の混乱、そして円安は、国内のアルミベースメタル業界にどのような影響を与えているのか。今回は、国内ベースメタル企業の担当者(以下、A氏)に、昨年の大赤字の背景にある「指標の歪み」、スクラップ需給のリアルな実態、そして業界が生き残るための次の一手について話を伺った。A氏の会社はベースメタルもADC12も生産している。主原料はエンジンスクラップという伝統的なエンジン流し替えリサイクラーである。

1. 「上がらない相場」の裏側:業界紙の指標と実勢価格の乖離

ーー昨年はベースメタル業界全体にとって非常に厳しい一年でした。御社の状況はいかがでしたか。

A氏:

率直に申し上げて、昨年は大赤字を抱える苦しい状況でした。最大の要因は、製造コストや原料高が製品(ベースメタル)価格にまったく転嫁できなかったことです。

我々やバイヤーにとって現在最も悩ましいのが、業界新聞などが発表する「公式な価格指標」と「実際の市場取引価格(実勢価格)」との間に、極めて大きな乖離が生じている点です。例えば、実際の入札価格がキロ当たり540円まで跳ね上がっているのに、新聞の指標は420円や430円のまま動かない時期が長く続きました。

ーーなぜそのような乖離が起きるのでしょうか。

A氏:

買い手側、つまり合金メーカーやエンドユーザー側に指標が寄りすぎていると感じています。ロシア塊などの輸入価格が高騰していても、国内のベースメタル相場がそれに連動しない。このギャップが市場に大きな歪みを生み、取引の現場では売り手と買い手の間に不信感すら引き起こしています。

(ここ1年のロシア産AK5M2輸入価格と国産ベースメタル相場の推移 *MIRUは常に忖度なしの確かな実勢値を記録しております)

2. 供給制約と大赤字、そして「スポット価格」への移行

ーー原料となるスクラップの供給不足も深刻化していますね?

A氏:

ええ。円安(156~160円台)の影響もあり、エンジンブロックなどの自動車由来のスクラップはどんどん海外へ流出しました。本来10必要だった原料が半分しか集まらないような状況です。

これまで我々は、指標に連動する「フォーミュラベース」での価格設定・供給契約を結んでいました。しかし、これだけモノがなく、原料調達コストが急激に跳ね上がる中では、従来の指標ベースの契約では完全に赤字を垂れ流すことになります。そのため、本年の4月からはフォーミュラ契約を廃止し、足元の需給を直接反映する「スポット価格」での値決めに移行せざるを得なくなりました。

3. ホルムズショックと国内スクラップの現在地

ーー中東情勢、いわゆる「ホルムズショック」の影響はいかがですか?

A氏:

皮肉なことですが、ホルムズショックによって中東最大のハブであるドバイへの中古車や自動車部品の輸出が滞り、結果として一定量のスクラップが国内市場に戻ってきています。若干ではありますが。

しかし、国内にモノが多少出回るようになっても、我々が最も必要とする「白エンジン」の価格はキロ150円〜180円台と高止まりしています。本来であれば、ベースメタルの販売価格が550円レベルまで上がって初めて、我々も採算を合わせて国内のエンジンスクラップを買えるようになります。国内でのリサイクル循環を回すためにも、ベース価格の適正化が不可欠なのです。

4. 紛争終結後に待ち受ける「二つのリスク」と安価な輸入品

ーー地政学的リスクが落ち着き、海峡の封鎖などが解除された場合、状況は好転するのでしょうか?

A氏:

そこが一番の懸念点です。もし紛争が終結し、ホルムズ海峡が再びスムーズに通れるようになれば、国内に滞留していた中古車や解体部品が、またぞろドバイや海外へ一気に流れ出ます。そうなれば、国内の原料スクラップは再び極端な品薄に陥り、価格が急騰するでしょう。

ーー製品側への影響はどうでしょうか。

A氏:

同時に、海外からマレーシア産やインド産の安価なADC12(アルミ合金地金)などの輸入品が国内市場に氾濫するリスクがあります。原料確保で合金メーカーが海外バイヤーと激しい価格競争を強いられる一方で、製品販売(ADC12)では安価な輸入品に国内価格を叩かれる。「上と下からの板挟み」に遭う未来を非常に危惧しています。

5. 活路は「透明なベンチマーク」と「輸出ルート」の開拓

ーーこの厳しい状況を打破するためには、どのようなアプローチが必要ですか?

A氏:

まずは、「公正な価格設定メカニズムの確立」です。一部の指標に振り回されるのではなく、実際の輸入塊の価格や国内スクラップの動向を反映した、独自の透明な価格指数を作ることが重要です。当たり前のことではありますが。。

そしてもう一つ重要なのが、「海外への輸出ルート(逃げ道)」を確保することです。鉄スクラップの業界では、輸出という選択肢があるからこそ国内価格が保たれています。実は最近、地政学的な文脈で「中国プラスワン」のリスク分散として、アジアの企業から「高くてもいいから日本産のベースメタルが欲しい」という引き合いが来ています。

国内市場だけに依存するのではなく、商社などのステークホルダーと協力し、戦略的な販売先の多様化(アジア市場への輸出拡大)を進めること。それが、この難局を乗り越えるための最大の鍵になると考えています。

ーー貴重なお話、ありがとうございました。

(IRUNIVERSE YT)

YT

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