22日資源大手トラフィグラ(Trafigura Group)が、LME(ロンドン金属取引所)倉庫から5万トン超の銅を引き揚げる動きを見せていることが明らかとなった。Bloombergによると、トラフィグラは5万1,000トン超の出庫指示(キャンセルワラント)の主要当事者となっているとみられ、これは2013年以来最大規模という。背景には、COMEX(NYMEX)銅価格がLME価格を大幅に上回る異常な米国プレミアムがある。
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■ 米国プレミアム急騰、400ドル近辺へ
市場関係者によると、直近では
COMEX銅の対LMEプレミアムが1トン当たり400ドル前後まで急拡大していた。
トランプ政権による銅輸入関税観測を背景に、米国市場では、「関税込み」で取引されるCOMEX価格が上昇しやすい構造となっている。
一方、LME価格は国際指標価格で関税を含まない。この価格差を利用し、LME在庫を引き揚げ、米国へ持ち込みCOMEX市場へ受渡す裁定取引が再び活発化しているようだ。
実際、2025年以降、こうした裁定機会を狙った銅の米国向け流入が急増しており、COMEX在庫は63万トン台と、史上空前の水準まで積み上がっている。
ただ、この在庫積み上がりは、米国実需というより「関税ヘッジ」と裁定取引のための在庫との見方が市場では支配的だ。
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■ LME在庫統計で“兆候”確認
今回のBloomberg報道については、LME在庫データとも整合が取れている。
22日公表のLME在庫レポートでは、新規キャンセルワラント(出荷引き当て済在庫)が前日比約5万1,000トン増加していた。
キャンセルワラントとは、既に倉庫から出庫指示が出され、今後物理的に搬出される予定の金属を意味する。
数量がBloomberg報道の5万1,000トン超とほぼ一致していることから、今回トラフィグラが関与したとされる大量出庫案件を反映している可能性が高いとみられる。
一方で、COMEX在庫にはまだ同規模の増加が見られていないことから、現時点では「LME倉庫から出庫指示が出た段階」で、実際の米国搬入・COMEX登録はこれからとの解釈が自然のようだ。
市場では、今後数日〜来週にかけてCOMEX在庫へ反映される可能性が意識されている。
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■ LME逼迫、COMEX過剰という“二極化”
今回の動きは、世界的な銅不足を意味するものではない。むしろ、LME在庫を米国へ移す「地域間在庫シフト」という性格が強い。
ただし、LME市場に限れば影響は無視できない。大量キャンセルワラントが実際の出庫へ進めば、
• LME流通在庫減少
• 現物プレミアム上昇
• バックワーデーション再拡大
• 現物スクイーズ的値動き
が起きやすくなる。
足元の銅市場では、中国実需の高値警戒による調整圧力が見られる一方、米国プレミアムがLME在庫を吸い上げる
構図が強まっている。
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■ 総括
今回のトラフィグラによる5万1,000トン超のLME銅引き揚げは、関税リスクを背景とした米国向け裁定取引が再加速している兆候とみられる。
LME在庫データでも同規模のキャンセルワラント増加が確認されており、報道との整合性は高い。ただ現時点では、LMEで出庫指示 → 物理移動 → COMEX受渡登録というタイムラグの途中段階にある可能性が高く、COMEX在庫増加にはまだ十分反映されていないようだ。
結果として、「LME逼迫」と「COMEX過剰在庫」が同時進行する、極めて歪んだ銅市場が続いている。短期的には、中国需要減速による調整圧力と、米国プレミアムによるLME在庫流出の綱引きが焦点となりそうだ。
(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)
本記事は執筆者個人の分析および見解であり、IRuniverseの公式見解を示すものではありません。内容は情報提供を目的としたもので、投資判断の根拠として用いることを意図したものではありません。