国内ステンレス鋼材市場は、メーカー主導のコスト転嫁による値上げが続く一方、流通市場(店売り)においては地域間格差を伴いながら、緩やかな上昇ムードが醸成されつつある。
1. 日本製鉄、2カ月連続の値上げを発表(6月契約分)
日本製鉄は6月11日、6月契約分のステンレス一般流通(店売り)向け価格の引き上げを発表した。値上げは2カ月連続となる。
【値上げ幅の内訳】
ニッケル系冷延薄鋼板: 1トンあたり 2万5,000円(キロ当たり25円、5%弱の引き上げ)
クロム系冷延薄鋼板: 1トンあたり 1万円(キロ当たり10円、3~4%程度の引き上げ)
厚中板: 1トンあたり 2万5,000円(キロ当たり25円、5%弱の引き上げ)
【背景・要因】
今回の値上げは、指標となるLMEニッケル国際価格のベースアップに加え、中東情勢の緊迫化に伴う重油などの燃料費高騰、さらには電力料金や輸送費の上昇といった複合的なコスト増を全品目に転嫁する措置である。メーカー側は採算確保に向けて強い姿勢を維持している。
2. 流通市場の動向:「東高西低」と緩やかな価格転嫁
コイルセンターなど流通ディストリビューターの動向を見ると、メーカーの値上げ姿勢を受けて、市況全体としては「緩やかな上げムード」へのシフトが見られる。
しかし、需要の強弱には地域差が顕著であり、関東圏が相対的に底堅く推移しているのに対し、関西圏は荷動きが鈍い「東高西低」の市況相場感が継続している。需要家の本格的な買い戻しには至っていないものの、流通側も仕入れコストの上昇から安値販売を是正する動きに出始めている。
3. 大阪市況(仲間売り)の実勢価格と海外材の価格差
関西圏(大阪市況)における業者間取引(仲間売り)の実勢価格は以下の通り。国内材と輸入材、特に「その他の海外材」との間には依然として大きな価格差が存在している。
【SUS304 定尺ケース売り】 (単位:円/キロ)
国内材: 560 ~ 580
輸入A(韓国材、台湾材): 480 ~ 500
輸入B(その他の海外材): 430 ~ 440
【SUS430 定尺ケース売り】 (単位:円/キロ)
国内材: 380 ~ 390
輸入材: 330 ~ 340
【分析】
SUS304において、国内材(560〜580円)に対して、韓国・台湾材はキロ当たり80円程度の価格差を維持している。特筆すべきは、東南アジア等を中心とする「その他の海外材(輸入B)」が430〜440円と、国内材よりキロ100円以上も安価に流通している点である。
メーカーの継続的な値上げ方針が流通末端までスムーズに浸透するかは、この「輸入B」クラスの安値材の動向と、秋口にかけての実需回復ペースが鍵を握ることになる。

