中国のタングステンを巡る対日輸出規制が思わぬ方向に飛び火している模様だ。タングステン不足で日本企業が精製を取りやめた結果、韓国の半導体大手がメモリの材料をこれまでのタングステンからモリブデンに切り替える動きが出ているという。
■SKハイニックスやサムスン電子がモリブデン採用
中国ニュースを扱う日本語メディアの中国経済新聞の6月16日の報道によると、韓国の半導体大手SKハイニックスがこのほど生産検証を終了した375層の第10世代3D NANDフラッシュメモリーで、記憶セルを制御する「ワードライン(字線)」の金属材料として、10年以上使用してきたタングステンではなく、モリブデンを本格採用した。
韓国では半導体最大手のサムスン電子がすでにモリブデンを採用。米マイクロンもNANDとDRAMの双方でモリブデン採用を進めているという。
■日本の2社、現材料難で六フッ化タングステンの生産停止
事の起こりは4月にさかのぼる。専門家のnoteなどによると、韓国の半導体専門メディアThe Elec(ディイレク)が4月上旬、「日本の関東電化工業とセントラル硝子の2社が、六フッ化タングステン(WF6)の生産を停止する」と報じた。中国は2025年2月からタングステンを輸出規制の対象に加え、同年秋の高市早苗首相の発言以降は事実上、タングステンの対日輸出を取りやめた。このため、2社はWF6の原材料であるタングステン粉末が入手できなくなったという。
関東電化工業とセントラル硝子のWF6の世界シェアは25%と大きく、取引先である韓国勢も苦境に陥った。このため、韓国メディアを中心に、6月に入ってからも繰り返しこの日本勢の生産停止が報じられている。タングステンはそもそも、中国自体も資源枯渇感が強く、世界的に流通量が細ってもいる。
モリブデンへの切り替えを促す記事も散見されるようになってきた。Ferroalloynetは6月17日、「韓国でタングステン鉱山を手掛けるカナダ資源のアルモンティ・インダストリーズが、同国でモリブデン生産にも着手している」と伝えた。2月にはドイツ化学のメルクによる韓国でのモリブデン生産も伝わった。
需要期待がジワリと広がり、足元のモリブデン価格は高止まりしている。米国の酸化モリブデン価格は6月11日に$38.46/LBと、過去最高値圏で推移している。
過去20年間の酸化モリブデン価格の推移(Mo57% USA)($/LB)
