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タングステン市況の反発と迫る「資源流出」リスク:改めて考える日本が取るべき国家戦略

2026/06/17 17:40
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タングステン市況の反発と迫る「資源流出」リスク:改めて考える日本が取るべき国家戦略

 4月以降、中国を震源としてアジア市場で下落基調にあったタングステンAPT市況が、足元で再び中国で明確な反発局面を迎えている。これに連動し、中国の超硬スクラップ相場も上昇に転じている。しかし、日本国内では精錬キャパシティの限界からスクラップが余剰気味となっており、マクロな価格上昇圧力と国内特有の買い控えが交錯する歪な事態が生じている。

1. 中国・アジア市場の反発と国際相場の復調

3月中旬をピークに急激な在庫調整を進めていた中国・アジアのタングステン市況は、足元で底入れから反発へと舵を切った。鉱石の構造的な供給制約や環境規制によるコスト高といった強固なファンダメンタルズが改めて意識された形だ。

中国のタングステンAPT相場と中国国内の超硬スクラップ相場の推移

この動きに呼応し、超硬スクラップ相場も上昇基調を強めている。急落時に値を下げていた中国国内のスクラップ価格は、足元で16,000〜17,000円/kgの水準まで回復。中国勢の旺盛な買い気が再び市場を牽引する様相を呈している。

2. 日本国内の構造的ボトルネックと「代替輸入」の進展

アジア全体が反発色を強める一方、日本国内の超硬スクラップ市場は停滞感を抱えている。その主因は、国内主要メーカーの精錬キャパシティの制約にある。

国内の超硬スクラップの流通実勢価格はキロ当たり8500~10,000円で推移している。

日本国内の超硬スクラップ相場とアジアの純タングステンスクラップ相場の推移

 

 日本国内でタングステン精錬を担うアライドマテリアルや日本新金属などの主要メーカーは、現在スクラップの処理枠が上限に達しており、国内のスクラップ在庫は余剰気味となっている。加えて、日本の需要家は経済安全保障の観点からサプライチェーンの多角化を進めており、足元では台湾やベトナムといった中国以外の代替国からの中間原料(APT、YTO)の輸入が大きく進展している。この海外からの安定調達ルートの確立も、国内におけるスクラップの買い気を薄れさせる一因となっている。→ https://www.iru-miru.com/article/83596

 

3. 国内メーカーの危機感とアライドマテリアルの巨額投資

国内メーカー側としては、現在の落ち着いたスクラップ買値を維持したいのが本音である。しかし同時に、国内で消化しきれない余剰スクラップが、価格が上昇している中国市場へ再び流出していく事態に対しては神経をとがらせている。戦略物資であるタングステンの国内循環サイクル(クローズド・ループ)が崩壊することは、長期的な製品競争力の喪失を意味するからだ。

このボトルネックを打破する大きな動きとして、2026年4月、アライドマテリアルが総額約159億円を投じる大規模な生産能力の増強を発表した。富山製作所近郊に新工場を建設し、2028年度上期までに「タングステン粉末」および「炭化タングステン粉末」の製造能力を約1.5倍に引き上げる計画である。

アライドマテリアル 富山に新工場建設 W供給能力1.5倍増に 28年度上期より

この動きは、経済産業省の「重要鉱物に係る供給確保計画」にも認定されており、世界的な供給不足と国内の精錬枠不足という二重の課題に対する、官民一体となったサプライチェーン強靱化の確固たる一歩と言える。

4. 結論:日本政府が推進すべき今後の国家方針

アライドマテリアルの投資は極めて重要な布石であるが、2028年の稼働までの期間、そして中長期的な国家の資源安全保障を考慮すれば、これに甘んじることはできない。足元の「上げ含み」の市況において、日本政府は早急に以下の戦略的方針を打ち出し、実行に移す必要がある。

  1. さらなる国内精錬能力・リサイクル設備の増強支援

    一企業の投資にとどまらず、国策としてタングステン精錬およびスクラップリサイクル技術への継続的な助成・投資を行い、国内処理能力の絶対量を引き上げる必要がある。

  2. 「スクラップを含む」タングステン国家備蓄の拡充

    これまでの中間原料を中心とした備蓄にとどまらず、「超硬スクラップ」そのものを国家あるいは官民ファンドの枠組みで戦略的に買い上げ・備蓄する制度の構築が急務と考える。市況の谷間で国内メーカーが買い控えた際に、安値で海外(特に中国)に流出するのを国が防波堤となって食い止める仕組みが不可欠だ。

 タングステンは半導体から防衛装備品まで直結する「産業の歯牙」である。現在の市況の歪みを放置すれば、貴重な二次資源は容易に海外へ流出してしまう。国内のリサイクル能力の抜本的拡大と、スクラップ流出を防ぐ次元の異なる備蓄戦略こそが、次なる時代に日本が取るべき必須の処方箋である。

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