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2026年1~5月中国のタングステンAPT輸出分析 対日輸出ゼロの衝撃!

2026/06/25 17:13
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わずか2件の出荷記録、合計22トン。それが2026年1〜5月、中国が世界に向けて行ったAPT輸出の全容だ。

かつて年間782トンを供給し、日本やドイツ、韓国の製造業を支えてきた中国のAPT輸出は、今や「輸出の停止」と呼んでもいい水準にまで落ち込んでいる。

なかでも衝撃的なのは、日本向け出荷の完全消滅だ。2025年まで全輸出の56.8%を占めていた最大の買い手が、5ヶ月連続でゼロになった。これは単なる量の変動ではない。中国が重要鉱物を地政学的な圧力手段として本格的に行使し始めたことを示すデータだ。

 

2026年中国のAPT輸出量

 輸出国・地域貿易方式数量(kg)金額(USD)
3月韓国一般貿易2,000$83,000
5月ドイツ進料加工貿易20,000$3,958,477
合計  22,000$4,041,477

出所:中国税関データ  ※USD金額は中国税関公表値

 

対日輸出、5ヶ月連続ゼロ

2026年1〜5月、日本向けのAPT出荷記録はゼロだった。これが驚きなのは、日本がかつて中国APTの最大の輸入国だったからだ。

2025年、中国の対日APT輸出量は約158トンで、全輸出量の半数以上を占めていた。それが2026年に入ると、記録から完全に消えた。

 

2025年中国の対日APT輸出量

 輸出国・地域数量(kg)金额(RMB)
1月日本42,0018,983,455
2月日本20,0004,377,672
6月日本40,0008,971,422
8月日本6,0001,341,549
9月日本10,0002,135,952
11月日本20,0007,029,141
12月日本20,0007,016,006
合計 158,00139,855,157

出所:中国税関データ

きっかけは明確な政策の連鎖だ。2026年1月6日、中国商務部は軍事転用が懸念される両用品目について日本向け輸出を包括的に禁止する公告を発布し、APTをその対象に明記した。さらに2月24日には、軍需産業への物資供給に関与するとされた日本企業20社を輸出禁止リストに追加。かつての最大取引先が、一挙に「出荷不可」の相手となった。

この規制強化の背景には、近年の日中関係の悪化がある。日本の防衛費増額や日米同盟の深化、対中半導体輸出規制への参加に対し、中国は重要鉱物を外交的圧力の手段として活用する姿勢を鮮明にしてきた。「軍事転用の恐れがある」と判断した時点で輸出許可を即座に停止できるこの仕組みは、経済関係を安全保障の道具として使う「資源外交」の典型だ。日本はかつて中国産APTの最大の買い手だったが、それが今や最大のリスクとなった。


一夜にして主要調達先を失った日本の対応は、しかし迅速だった。3月の米国産スクラップタングステン輸入は前年同月比約10倍に急増。日本新金属は受注を前年実績の80%に制限しながら非中国原料への切り替えを急ぎ、住友電工は新たなリサイクル工場の建設を、三菱マテリアルも日本と欧州での回収能力の拡大にそれぞれ着手した。


それでも埋まらない穴がある。大手WF₆メーカーの関東電化工業とセントラル硝子は、2026年7月1日をもってWF₆の生産を永久停止するとSamsungやSK Hynix、TSMCに正式通知した。WF₆は半導体の成膜工程に不可欠なガスであり、「永久停止」という言葉が示す通り、これは一時的な供給不足ではなく構造的な撤退だ。WF₆価格はすでに前年比70〜90%上昇しており、その影響はグローバルな半導体製造ラインに、静かに、しかし確実に広がりつつある。

 

中国が握ってきた供給力

これほどの混乱が生じた背景には、中国の圧倒的な市場支配がある。世界のタングステン鉱山生産の約80%は中国が担っており、APT市場においても同様だ。2024年の中国APT輸出量は年間782トンに達し、日本やドイツ、韓国、オランダといった製造大国が安定的に輸入してきた。価格形成においても、中国は事実上の決定権を持つ唯一の存在だった。

2025年2月に輸出許可証制度が導入されると状況は一変した。2025年1〜11月の累計輸出は243トンと前年比70%減。そして2025年12月には2026〜2027年の輸出許可企業を15社のみに絞ると発表。供給の80%を一国が握るとき、その国が輸出を絞れば価格は動く。市場に選択肢がない以上、買い手は高値を飲むしかない。その構造が今、あらゆる数字に現れている。

数量が消えた一方で、残った取引の価格は別次元に跳び上がった。ドイツ向け同規模(20,000kg)の単価を比べると、2025年の約$30/kgから2026年5月には$198/kgへ、約6.6倍の水準に達した。

国際指標であるロッテルダムCIF価格(APT 88.5% WO₃)も同じ方向に動いている。2024年まで$280/mtu前後で推移していた水準は、2026年初頭から急騰し始め、5月には$3,050/mtuに到達。年初来の上昇率は200%超だ。かつては$250/mtu以下で取引されていたことを思えば、市場の変容ぶりは劇的という言葉でも足りないかもしれない。

輸出量が消えても、値段は残る。それが今の市場の歪んだ現実だ。

 

中国のタングステン相場の推移(RMB/ton)

 

主要輸入国の現状と対応

韓国 2026年3月に2トンの輸入記録はあるものの、逼迫した状況は日本と変わらない。Almontyが国内のSangdong鉱山で2026年3月に採掘を開始し、第2期拡張が2027年稼働を目指しているが、当面の供給不足を補うには時間が足りない。

欧州(ドイツ) 2026年5月の20トンは進料加工貿易の形態での取引で、輸出管理の枠内でかろうじて継続している。ただし単価は2025年比で約6倍。払うコストは別次元に変わってしまった。

米国 2026年中に備蓄タングステンが底をつくと試算されており、危機感は防衛産業の中枢を直撃している。パトリオットやTHAADミサイルにはタングステンが不可欠であり、ウクライナや中東の紛争が米国の在庫を急速に消費している。ペンタゴンは重要鉱物の備蓄に最大10億ドルを投じる計画を進め、国防兵站局(DLA)はタングステン鉱石・精鉱約1,700トンの調達に向けた情報収集をすでに開始した。さらに2027年1月1日からは国防調達においてタングステン製品の中国産使用を原則禁止とする規則が発効する予定で、サプライチェーンの脱中国化を法的に義務付ける動きも加速している。タングステンをめぐる攻防は、市場の問題をとうに超えた。

 

拡大する需要と、遅れる代替供給

需要側の構造は、この逼迫をさらに長引かせる方向に動いている。Argusのシニアアナリスト、クリスティーナ・ベルダ氏がロイターの取材に対して明らかにしたところによれば、現在の最大消費分野は超硬工具を中心とする自動車産業(全体の25〜30%)だが、電動車普及によりこの分野の需要は将来的に伸び悩む可能性がある。一方、防衛・航空宇宙分野は年率約8%で成長を続けており、2030年代中期には自動車を抜いて最大の消費セクターに浮上するとみられている。

代替供給の動きも出てきた。韓国のAlmontyはSangdong鉱山で採掘を開始し、ベトナムのMasan High-Tech Materialsも中国以外では世界最大のタングステン鉱床を擁し生産拡大を急いでいる。カナダやポルトガルでも開発が進む。しかしこれら全体を合わせても、中国の生産能力の10%未満にとどまる。本格的な代替には最低でも3〜5年かかるとみられ、それまでの間は中国の判断ひとつで市場が揺れ続ける構造は変わらない。

Keikoo

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