冨士ダイスは機械要素技術展で、会長インタビューでタングステン調達難への対策を披露 。自社廃材などのリサイクルを開始するほか 、ダイジェット工業と提携して省資源合金の販路拡大を推進 。さらに水素製造向けなどの新製品も展示し、次代の成長に向けた姿勢をアピールした。
冨士ダイス 機械要素技術展で取材:タングステン調達対策、リサイクルと省タングステン素材提携で対応
東京ビッグサイトで開催された第31回機械要素技術展にて、冨士ダイスブースで同社会長の春田氏から、同社のタングステン調達、リサイクルについて取材した。
展示ブースには省タングステン「サステロイSTN30」の展示もあった。現状、タングステン代替合金はまだ昨年10月からのスタートで、27/3期は3000万円程度の規模となる見通し。サンプル出荷しているが、評価に時間がかかるとのこと。自動車メーカー向けは認定を必要とし、さらに先の話とのこと。
同硬質材料は、超硬合金の主成分である炭化タングステンとコバルトの含有量を、汎用超硬合金比9割削減した合金。 超硬合金の主原料となる希少金属は、希少性や産出国の偏在性があり、安定供給に課題がある。同社はかねてより、地政学的リスクが懸念されるタングステンとコバルトを極力減らした合金を作るというコンセプトで新合金の開発に取り組んでいた。23年 3月に「サステロイ ST60」を開発・販売し、25年10月により耐摩耗性を向上させた「サステロイ STN30」を開発、販売を開始した。この材料は地政学リスクの影響を受けにくい炭化物や金属成分を組み合わせた材料で安定供給できる。なお重さは、超硬合金の半分以下で、硬さ(HRA)は88.2(汎用超硬は88.0~90.0)。工具摩耗の低減による品質向上、工具の長寿命化にも貢献できる。



一方、タングステンリサイクルについては、従来実施していなかったが、今回使用量の10%を目処にリサイクルを始めるとした。まずは自社の廃材から始め、さらに工具納入先からの回収を行うが、ユーザー数も多く、全国展開し、回収率をさらに高めていく方針。なお回収した金型などは自社で大型のものは破砕処理してから処理業者に渡すとのことで、現状、特定の処理業者を決めているわけではないとのこと。ちなみに同社はタングステンの年間使用量を開示していないが、展示会場でヒアリングしたところでは年間100t前後を使用している模様で、リサイクル率10%となると、年間10tのタングステン量となる。
なお、タングステン代替では、6/26にダイジェット工業と重要鉱物であるタングステンとコバルトの使用量を削減した合金に関する業務提携を締結した。地政学的リスクの低減は同社のみならず、業界全体の課題ととらえ、タングステンとコバルトを含まない合金「サーメタル」を開発しているダイジェット工業との間で、新合金に関して、両社の販売ネットワークを活用した販路拡大を行う。本提携により、互いの強みとリソースを最大限に活用し、代替材料としての認知度向上を推進し、相互の企業価値向上を目指すとしている。まず第1弾として、ダイジェット工業が同社に「サーメタル」を提供、素材または加工したうえで、工具・金型として顧客に販売することとした。一方、「サステロイ」については、両社の販売ネットワークを活用した販路拡大に向けた検討を進める予定となっている。


同社は現在、足元でのタングステン調達に対し、中国からは一切の入荷がない状態であり、国内の調達先からの入荷は従来の7~8割程度にとどまっているとのこと。このため、欧米から一部代替調達を行っているものの、すでに高騰前のタングステン在庫はなくなりつつある。このため同社は超硬部材の販売をセーブし、既存顧客への供給責任を堅持する方向で、超硬金型や超硬工具の納入は計画通りに行う予定としている。
同社は27/3期業績について、売上高260億円(49.0%増)、営業利益7億円(14.9%減)予想としている。タングステン価格高騰を織り込み、売上大幅増ながら、下期にタングステン価格高騰分の値上げのタイムラグがあるとしている。単独決算の推移をみると、26/3期にすでに売上高材料費比率が前期比4.8ポイントアップし22.2%、材料費33.92億円(34.8%増)と、すでに材料費比率が大きくアップしている。

現状、連結27/3上期は高騰前のタングステン在庫の寄与があり26/3上期比21.0%営業増益ながら、下期には原価高と販売価格のタイムラグから26/3下期比38%減、27/3上期比20.5%減益予想としている。ただしこの要因は、単に価格高騰影響だけでなく、超硬部材販売の数量減を見込んでいることが大きい模様。前26/3期は売上高174.5億円のうち、超硬工具類、超硬金型類の売上が90億円、構成比51.6%を占め、その他超硬製品売上が49億円、構成比28.1%、超硬以外の製品が売上高35.4億円、構成比20.3%を占めた。この中でその他超硬製品の中に超硬素材販売が含まれるとみられるが、26/3期は15.0%増と、伸び率が一番高い分野だった。同分野は26/3期に中国向けの母材販売が好調だったことが売上増の主因。同社は中国市場での売上高倍増を掲げ、現地での販路拡大や新規顧客獲得を加速させ、東莞市の拠点を足掛かりとして現地展示会への出展や、光学機器など中国金型メーカーなど、旺盛な超硬母材需要を取り込んでいた。なお同社は中国向け輸出金額を開示していないが、輸出全体で36.77億円(前年比23.4%増)、金額にして7億円増加となっているが、従来地区向けは横ばいとみられ、増加分の大半が中国向けと推測される。しかし現在は超硬母材の需要が旺盛であるが、玉不足という状況で、母材販売抑制で27/3期の中国での数量減の影響が利益減につながると懸念される。なお、海外展開では休眠していたインドにおいて現地法人の事業活動を再開した。これは自動車を中心とするインド市場の拡大を見据えたものであるが、現状、超硬素材などの調達先の確保というメリットのほうが先行しているとのことで、これは思わぬプラス要因といえる。
このような環境の中で、今回の機械要素技術展では「サステロイSTN30」以外にも、潜在成長力豊かな開発製品が多く展示されていた。



これらの製品群は、自動運転や監視カメラ、水素製造、医療関連など、従来とは異なるユーザー、高付加価値製品群であり、28/3期以降の同社の再成長を支える製品として、注目度が増してこよう。
*図、写真は展示会チラシ、HPなどから添付、表は有報から加工