ポルトガルの建設大手Mota-Engilは、中国の電池メーカーCALB Europeとの間で、ポルトガル南部シネス(Sines)に建設する「New Sines Gigafactory」フェーズ1工事について、約2億700万ユーロ(約2億3,600万米ドル)の契約を締結した。契約主体はMota-Engil Engenharia e Construção、工期は約22カ月の見込み。
対象地はシネス工業・物流ゾーン内、敷地面積約42エーカー(約17万平方メートル)、建設延床面積は約667,000平方フィート(約6.2万平方メートル)。フェーズ1にはワークショップ、変電設備、貯蔵エリア、産業廃棄物・排水処理設備、警備関連施設、統合発電設備関連の建屋などが含まれる。
CALBの計画全体では、総投資額は約22億8,000万米ドル、直接雇用は1,800人を見込み、稼働開始は2028年を予定している。年産能力は15GWh(EV用電池約18万7,000台相当)で、主に欧州市場向けに供給する計画とされる。
シネスはリスボンから南に約100km、深海港を有し、大型設備・原材料の搬入や電池製品の輸出に適した物流拠点とされる。CALBは立地の戦略性、労働力の確保のしやすさ、港湾アクセスの良さを選定理由として挙げている。
ポルトガル政府は本プロジェクトを「国家的利益を有するプロジェクト(Project of National Interest)」に認定。欧州のインセンティブ制度のもとで、最大約3億9,900万米ドル規模の公的支援を受けられる可能性があり、ペドロ・レイス経済相は支援枠が対象投資額の最大35%に達し得ると説明している。
なお、リチウム原料の調達については、ポルトガル国内での採掘を含む複数の調達オプションを組み合わせ、原料の出所にかかわらず自律的な運営を目指すモデルだという。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、2025年時点で中国は世界のEV生産の70%、電池セル生産の80%超を占め、正極活物質(カソード材)の約85%、負極活物質(アノード材)の90%超も中国が占めるとされる。EUの2026年文書では、2024年のEUの電池輸入額は約319億ドルで、うち約251億ドルが中国からの輸入だったとされており、シネスのプロジェクトが単なる一工場の話にとどまらない背景がうかがえる。
もっとも、中国資本の工場が欧州域内に立地したからといって、供給ルートは短縮されても、電池技術や原材料そのものへの対外依存が自動的に解消されるわけではない、という見方も根強い。
今後22カ月の建設進捗、インセンティブの承認状況、リチウム調達の実態、雇用状況、そしてフェーズ1が欧州向け安定生産拠点として機能するかどうかが注目点となる。計画通りに進めば、2028年の稼働開始という当初のロードマップに沿う形となる。