Loading...

貴金属・PGM市場近況2026#7 米利下げ観測後退で調整色、PGMは需給主導の選別相場へ

2026/07/08 09:19
文字サイズ

ドル円為替相場 3ヶ月

■ 金相場(Gold)
6月の金相場は、米国経済の底堅さを背景とした利下げ観測の後退が主導する調整局面となった。月初は米主要経済指標が市場予想を上回り、米長期金利の上昇とドル高を受けて2026年に入って初めて4,000ドル台前半まで下落。その後、米国とイランの停戦協議進展を受けて一時持ち直したものの、中旬のFOMCでは政策金利が据え置かれ、金融引き締め姿勢が当面維持されるとの見方が強まり、相場は再び軟化した。
今後は、米国のインフレ動向や雇用統計などを通じた金融政策見通しが最大の焦点となる。利下げ期待の後退は引き続き上値を抑える要因となる一方、各国中央銀行による継続的な金購入や地政学リスクを背景とした安全資産需要は依然として下値を支える構図に変化はない。当面は4,000ドル近辺を下値の目安としつつ、米金融政策と中東情勢をにらんだ一進一退の相場展開が続く見通しだ。

NY金($/toz)と国内金建値(\/g)の推移 3か月



 

■ 銀相場(Silver)
6月の銀相場は、75ドル近辺で始まり、中東情勢の改善期待から一時反発したものの、米国で追加利上げ観測が強まる中で売りが優勢となり、上値の重い展開となった。ホルムズ海峡の航行は一部再開されたが、物流網の正常化やエネルギーコストの低下にはなお時間を要するとみられ、インフレ圧力の残存も相場の重石となった。また、主要需要国インドでは輸入関税引き上げを受け、5月の銀輸入量が前年同月比94%減となるなど、実需面にも弱さがみられた。
今後は、米国の金融政策やインフレ動向に加え、中東情勢の行方が引き続き相場を左右する見通し。AI・データセンターや電子部品向けなど中長期の産業需要は下支え要因となる一方、市場規模の小さい銀は投機資金の流出入に左右されやすく、金相場に連動しながらボラティリティの高い展開が続くとみられる。

NY銀相場($/toz)と国内銀建値(\/kg)の推移 3か月


 

■ プラチナ相場(Platinum)
6月のプラチナ相場は、投資資金の利益確定売りが優勢となり、月間では約400ドル下落した。米・イランの攻撃停止合意を受けて一時反発する場面もあったが、FOMC後に年内利下げ観測が後退したことで再び軟化し、上値の重い展開となった。
需給面では、南アフリカの鉱山各社が増産よりも収益性を重視する姿勢を維持しており、構造的な供給制約に大きな変化はない。一方で、ロンドン白金属市場で過熱していた現物逼迫感は徐々に和らいでいる。宝飾品や自動車触媒、水素関連など幅広い実需が引き続き下支えとなるものの、当面は米金融政策やドル動向に左右されやすく、需給の引き締まりを背景に押し目買いを交えながら一進一退の展開が続く見通しだ。


NYプラチナ相場($/toz)と国内プラチナ価格(\/g)の推移 3か月




 

■ パラジウム相場(Palladium)
6月のパラジウム相場は、中東情勢と米国経済の動向を背景に売り買いが交錯し、おおむね1,200~1,400ドルのレンジで推移した。月半ばにはホルムズ海峡の航行正常化期待を受けて産業活動改善への思惑から持ち直したものの、その後はFOMCを受けた追加利上げ観測やドル高進行を背景に他の貴金属相場とともに軟化し、月末には1,200ドル台前半で取引を終えた。
需給面では、自動車触媒向けを中心とした実需は底堅さを維持している一方、市場では供給逼迫の緩和観測も残っており、上値を追う材料には乏しい。南アフリカやロシアで急激な増産は見込みにくいものの、当面は米金融政策やドル動向、他の貴金属相場に連動しながら、1,200ドル台を中心とした神経質な相場展開が続く見通しだ。


NYパラジウム相場($/toz)と国内パラジウム価格(\/g)の推移 3か月



 

■ 総括:金は調整局面、PGMは個別需給による選別色続く
6月の貴金属市場は、米国経済の底堅さを背景とした利下げ観測の後退が相場全体の重石となった。金は米主要経済指標やFOMCを受けて4,000ドル台前半まで下落し、安全資産需要や中央銀行の継続的な買いに支えられながらも調整色を強めた。市場の関心は地政学リスクから米金融政策へと徐々に移りつつある。
銀は追加利上げ観測やインドの輸入減少を背景に上値の重い展開となったものの、AI・データセンターや電子部品向けなど中長期の産業需要への期待は依然として下支え要因となっている。一方、市場規模の小ささから投機資金の流出入による価格変動の大きさは続いている。
PGM市場では、プラチナ、パラジウムとも米金融政策や景気見通しの影響を受けて軟調に推移したが、南アフリカの慎重な生産姿勢を背景に構造的な供給制約には大きな変化はない。現物逼迫感は和らいでいるものの、自動車触媒や宝飾、産業用途など実需が下支えとなり、銘柄ごとの需給環境の違いが価格形成を左右する展開が続いている。
総じて、貴金属市場は「金が金融政策を映し、PGMは個別需給を映す」という構図が一段と鮮明になった。当面は米金融政策を軸に神経質な値動きが続く一方、供給制約を抱えるPGMは実需動向や用途別需要を背景とした選別相場が続く見通しである。

Rhodium / Iridium / Ruthenium
■ ロジウム相場(Rhodium)
6月のロジウム相場は、9,000ドル近辺で始まった後、手持ち筋の利益確定売りに押されて8,000ドル近辺まで下落した。その後も月下旬には一時7,750ドル近辺まで軟化したが、7月初旬には押し目買いが優勢となり、8,100ドル近辺まで持ち直している。2026年3月以降続いた上昇局面の反動による調整色が強まった格好だ。
一方で、自動車触媒向けを中心とした実需は底堅く、供給面でも急激な増加は見込みにくいことから、大幅な下落にはつながっていない。市場の流動性が低いため価格変動は大きくなりやすいが、当面は投機的な売りと実需の買いが交錯しながら、需給均衡点を探る神経質な展開が続く見通しである。


JMロジウム価格($/toz)と国内ロジウム価格(\/g)の推移 3か月


 

■ イリジウム相場(Iridium)
6月のイリジウム相場は、5月後半以降7,400ドル近辺で推移していたものの、6月後半は他のPGM相場の軟調地合いに連れて下落し、月末には7,300ドルを割り込んだ。利益確定売りが優勢となった一方、7,000ドル割れでは押し目買いも見られ、高値警戒感と実需買いが交錯する展開となった。
需給面では供給制約に大きな変化はなく、中長期的な下支え要因は維持されているものの、流動性の低い市場だけに投機資金の動向に左右されやすい。当面は7,000ドル近辺を下値の目安に需給均衡点を探る展開が続き、明確な方向感が出るにはなお時間を要するとみられる。


イリジウム価格($/toz)と国内価格の推移 3か月


 

■ ルテニウム相場(Ruthenium)
6月のルテニウム相場は、5月末からの軟調な流れを引き継ぎ、月前半には1,525ドル近辺まで下落した。その後は1,400ドル割れで押し目買いが入り下値は支えられたものの、1,500ドル近辺では高値警戒感も強く、売り買いが交錯する展開となった。
一方、AI関連投資を背景としたHDDや電子部品向け需要は引き続き底堅く、構造的な需要環境に大きな変化はない。当面は1,400ドル台を中心に需給均衡点を探る展開が続き、中東情勢や米金融政策に加え、他PGM相場の動向にも左右されながら神経質な値動きが続く見通しだ。


JMルテニウム価格($/toz)と国内価格の推移 3か月


 

(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)
 

青山 雫

関連カテゴリ

関連記事

新着記事

ランキング