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インドネシア・ニッケル市場の転換点――中国企業に求められる事業モデルの再構築

2026/07/28 09:11
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インドネシア・ニッケル市場の転換点――中国企業に求められる事業モデルの再構築

2026年後半のニッケル市場は、供給過剰から供給管理へと市場の関心が移りつつある。LMEニッケル3か月物は6月後半に一時16,300ドル台まで下落した後、7月下旬には17,000ドル台を回復した。2022年3月のショートスクイズで一時10万ドルを突破した局面からみれば落ち着きを取り戻したものの、市場は依然としてインドネシアの政策動向に大きく左右される状況が続いている。


LMEニッケル相場動向(USD/T) 5年

6カ月

 

国際ニッケル研究会(INSG)は昨年秋時点で2026年の供給過剰を約26万トンと予測していたが、その後、インドネシアの生産抑制やHPAL向け硫黄不足などを反映し、最新見通しでは約3万トンの供給不足へ修正した。一方、ロシアのノルニッケルも供給過剰は2万トン程度まで縮小するとの見方を示しており、市場では需給均衡に近づくとの認識が広がりつつある。


RKAB政策が市場構造を変え始めた
最大の焦点はインドネシア政府によるRKAB(採掘作業計画・予算計画)の運用である。
2025年には約3億7,900万トンの生産枠が認められたのに対し、2026年は当初約2億5,000万~2億6,000万トンへ圧縮された。その後、市場では総枠を3億6,000万トン程度まで戻すとの観測も流れたが、ESDM(エネルギー鉱物資源省)は、追加承認は原料不足に直面する製錬所を中心とした限定的な運用とする方針を示している。
さらにHPM(国内鉱石基準価格)の運用厳格化やロイヤルティ引き上げが加わり、ロイターによればHPAL事業ではニッケル1トン当たり3,000ドルを超えるコスト増要因となり、一部案件の損益分岐点は18,000ドル近くまで上昇したとされる。
つまり政府の狙いは単純な増産でも減産でもなく、
「価格を維持しながら資源価値を最大化する」
方向へ軸足を移しつつあると整理できる。

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中国企業は「量」より「採算」の時代へ
インドネシアでは青山控股、徳龍、華友鈷業など中国系企業がNPIからMHP、ニッケルマットまで巨大な供給網を構築してきた。
Financial Timesによれば、中国側はRKAB削減やロイヤルティ制度変更について、約500億ドル規模の既存・計画投資への影響を懸念している。
もっとも、中国企業が直ちに撤退する可能性は低い。
すでに鉱山、製錬所、港湾、発電設備まで一体化したインフラを形成しており、課題は
•    稼働率をどう維持するか 
•    新規投資を選別するか 
•    高付加価値製品へ転換するか 
という経営判断へ移っている。


需要も「伸び率鈍化」の局面
需要面では、中国ステンレス生産は高水準を維持しているものの、不動産不況や輸出環境の変化を背景に伸び率は鈍化している。
EV市場でもLFP電池の普及により三元系電池向けニッケル需要の伸びは従来予想を下回るとの見方が一般化している。
一方、中国国内ではスクラップ利用率向上やリサイクル拡大も進み、新規ニッケル需要を一部代替する動きもみられる。
供給能力拡大競争から、稼働率やキャッシュフローを重視する経営へ移行する兆しが鮮明になってきた。

展望
2026年後半は、インドネシア政府がRKAB追加承認をどの程度認めるかが最大の相場材料となる。
追加承認が限定的であれば鉱石供給は引き締まり、LMEニッケルは16,000ドル台後半から17,000ドル台を維持する可能性がある。一方、大幅な生産枠拡大へ転じれば、再び供給過剰観測が強まり価格には下押し圧力がかかるだろう。
中国企業にとっても、競争の軸は生産量ではなく資本効率へ移りつつある。低コスト鉱石を前提とした事業モデルから、鉱山権益、製錬効率、電池材料、リサイクル、低炭素化までを含めた総合的な競争力が問われる段階に入ったと言えそうだ。

(IRuniverse S. Aoyama)

 

青山 雫

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