Loading...

【BIR2026年7月レポート】物流コスト増がリサイクル市場に影響

2026/08/05 23:45
文字サイズ
【BIR2026年7月レポート】物流コスト増がリサイクル市場に影響

国際リサイクル局(BIR)が2026年7月付で発表した部門別レポート「ワールド・ミラー(World Mirror)」シリーズによると、世界のリサイクル市場は地政学的な動揺と供給側の制約が重なる状況にある。各レポートは主に第2四半期から7月前半にかけての市場動向をまとめたものであり、需要の本格的な回復が見られないなか、エネルギー価格の上昇や物流の停滞、新たな規制対応に伴うコスト増が、各セクターの取引に共通の影響を及ぼしている。

※本記事はBIR(国際リサイクル局)が発表した「ワールド・ミラー」各部門レポート(2026年7月付、紙・非鉄金属・鉄鋼・ステンレス・プラスチックの各部門)をもとに作成した。      

 

地政学リスクの再燃と物流・規制コストの増大

今期の市場では、中東情勢の変化が市場全体に大きな影響を与えている。BIRプラスチック部門会長のヘンク・アルセマ氏(INVIPLAST、オランダ)は、米国による対イラン攻撃の再開を受け、数カ月続いていた市場の沈静化が損なわれたと指摘し、レポートの中で「市場は新たな局面を迎えており、慎重な姿勢が求められる」と述べている。BIRプラスチック部門理事のシュバム・ラクラ氏(BREDLAK SAS、フランス)によると、エネルギー市場はこの動きに反応し、北海ブレント原油価格は一時バレル当たり80ドルを突破した。この原油価格の上昇はバージンポリマー価格を押し上げる要因となる一方、市場の不透明感から買い手の意思決定を停滞させているとしている。

物流面では、海上輸送の要衝での混乱が続いている。BIR紙部門欧州レポートを執筆したジョン・アテオルトゥア氏(REMONDIS Trade and Sales GmbH、ドイツ)によると、ホルムズ海峡と紅海の航路が同時に影響を受ける事態となっており、欧州からアジアへの輸送時間は喜望峰経由で10〜20日延長されている。同じく紙部門アジアレポートを執筆したシモーネ・スカラムッツィ氏(LCI SRL、イタリア)によれば、5月以降、欧州からアジアへの海上運賃は20〜35%上昇しており、燃料費高騰により内陸輸送費も3〜6%上昇しているという。

また、5月21日に導入された欧州の改定廃棄物輸送規則と「デジタル廃棄物輸送システム(DIWASS)」も、事務的な負担となっている。ラクラ氏は、このシステム運用に伴う港湾チェックの厳格化が輸出業者に大きな負担を強いていると報告しており、「一件でも荷物が拒否されれば、その追加コストで次の数コンテナ分の利益は簡単に消えてしまう」と述べている。

 

廃プラスチック:バージン樹脂の過剰供給と規制強化の動き

プラスチックセクターでは、バージン樹脂の供給過剰が再生材価格の重石となっている。BIRプラスチック部門理事のマックス・クレイポー氏(Greencore Resources Limited、中国)は、プラスチックリサイクル市場が直面する課題の背景として、特に中国における石油化学分野の拡張によるバージン樹脂の過剰供給を挙げている。同氏によると、2025年の中国のPET生産量は約1,750万トンに達し、これは欧州の生産能力(約260万トン)の6倍以上に相当する規模である。

クレイポー氏は、再生材の需要を維持するためには法的拘束力のある使用義務化(マンデート)が必要であるとの見方を示し、インドがPET食品包装で40%の再生材使用に向かっており、ナイジェリアも2030年までに50%を達成する枠組みを打ち出していると紹介している。一方、スペイン市場についてゲスト寄稿者のナタリア・クルス・カユエラ氏(Ferromolins SL、スペイン)は、欧州の需要が鈍化しており、11月から実施される非OECD諸国への廃プラ輸出禁止措置が国内の廃棄物管理への負担を増大させる可能性に言及している。

 

鉄鋼・金属:地域別の需要動向と政策の影響

鉄鋼および非鉄金属市場では、地域ごとに異なる要因が価格形成に影響している。

BIR鉄鋼部門理事のアビジート・マハンタ氏(Stelaris Resources AG、スイス)によると、トルコ市場のHMSスクラップ価格は5月の1トン当たり410ドル(CFR)をピークに、6月には国内需要の抵抗もあり388ドル前後まで下落した。一方、同じく鉄鋼部門理事のジョージ・アダムス氏(SA Recycling、米国)は、米国市場について自動車分野の減速をAI(人工知能)関連のデータセンター投資に伴う新鋼材需要が相殺し、再生鋼材の価格を下支えしていると分析している。

非鉄金属部門では、中国の動向が注目されている。BIR非鉄金属部門理事のシェン・ドン氏(OmniSource Corporation、米国)によると、中国政府は「2025-26年二カ年計画」を通じて年間リサイクル非鉄金属生産量を2,000万トン以上に引き上げる目標を掲げ、銅やアルミニウムなどの資源自給率の向上を急いでいる。インドについては、同部門理事のアニルーダ・アグラワル氏(Manaksia Aluminium、インド)がGDP成長率7.8%(3月期)や製造業PMIの堅調さを挙げ、経済のレジリエンスを報告している。

南アフリカ市場に関してBIR鉄鋼部門理事のクウィンティン・スターキー氏(MRA、南アフリカ)は、国内の価格優先制度(PPS)が国際価格よりスクラップ価格を低く抑制しているとして、リサイクル業者団体が議会に異議を申し立てている現状を伝えている。

 

古紙:供給不足による価格の維持

古紙市場は、需要の回復ではなく、供給側の要因によって価格が維持される傾向にある。BIR古紙部門会長のフランシスコ・ドノソ氏(DOLAF Servicios Verdes SL、スペイン)は、第2四半期から7月前半にかけて、製品の需要回復ではなく、回収量の減少によって繊維の供給が不足したことが市場のタイト化を招いたと指摘し、市場を「堅調だが不安定」と表現している。

アテオルトゥア氏によると、欧州のOCC(段ボール古紙)スポット価格は6月には130〜145ユーロ程度まで上昇する見通しとなったが、これは回収ボリュームの減少によるものであり、需要に基づかない価格上昇であるため脆弱な基盤の上にあるとしている。また、インドネシアなどが輸入管理を厳格化していることから、品質管理が市場アクセスの維持において重要性を増しているとの見解を示した。

 

まとめ

2026年7月付の各報告を通じて、世界のリサイクル市場では地政学リスクや物流の停滞が原材料価格以上に取引へ影響を与えていることが共通して示された。また、バージン樹脂の過剰供給が続くプラスチック分野では、法的拘束力のある使用義務化の重要性が指摘されているほか、需要が全体的に停滞するなかでも、回収量の減少や操業コストの上昇といった供給側の要因が価格を支える構造が各市場で見られた。

今後は、夏季休暇シーズン後の需要動向に加え、物流コストの推移や各国で進む規制強化が市場へ与える影響が引き続き注目される。

 

Giulia Zanasso

関連カテゴリ

関連記事

新着記事

ランキング