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SMM電池材料フォーラム:原料高と高圧密度化が塗り替えるLFP勢力図(LFPセッション編)

2026/09/10 12:43 FREE
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SMM主催のアジア電池材料フォーラムがソウルで開催され、中国・韓国から130社超が参加した。9月3日午後に設けられたLFPセッションでは、SMMのアナリストによる需給・コスト分析、韓国装置メーカーによる量産設備の技術解説、蓄電システムメーカーによる安全設計の講演、正極材料メーカーによる高圧密度品の量産戦略が相次いで発表されたほか、締めくくりのパネルディスカッションでは中韓の材料・設備・コスト面での協業の可能性が議論された。

陳泊霖氏(SMM):硫黄高がコストの中枢に、鉄酸化物ルートが総コストで優位

セッション冒頭では、上海有色網(SMM)のリン酸鉄リチウム担当アナリスト、陳泊霖氏が「2026年の世界LFP産業構図と原料コスト伝導・価格形成メカニズムの再構築」と題して登壇した。同氏によるとFP(リン酸鉄、LFP前駆体)の生産能力は2023~2030年にかけて年平均22%のペースで拡大する見通しで、名目産能は37.3万トンから125万トンへ、実際の生産量は11.5万トンから108万トンへと伸び、稼働率も31%から86%へ改善が続く。原料構成では、リン源は各ルートともリン酸(H3PO4純度85%以上)を用いる点で共通する一方、鉄源はアンモニウム法・ナトリウム法が硫酸第一鉄を用いるのに対し、鉄法は鉄粉やスクラップを直接投入する点で異なり、アンモニウム法が引き続き主流(2024年76%から2026年見込みで69%)を占めるものの、鉄法のシェアが8ポイント上昇しているという。

陳氏は、硫黄価格が硫酸、工業級リン酸一アンモニウム(MAP)・リン酸、そしてFP・LFPへと連鎖的にコストを押し上げる構図を示し、2026年8月の月平均価格は硫黄が1トンあたり8,861元(前年同月比248%高)、リン酸(純度85%以上)が8,673元(同34%高)、MAPが7,480元(同22%高)に達したと説明した。一方、鉄源については硫酸第一鉄が6月のピークから24%下落し8月平均798元と価格変動が最も大きかったのに対し、電池級鉄粉(6,100元)や電池級酸化鉄赤(6,275元)は比較的安定して推移しているとした。硫黄が1トンあたり1,000元上昇した場合のコスト転嫁を試算すると、アンモニウム法は764元(総コストの5.6%)、ナトリウム法・鉄法は680元(同4.8%)増加し、アンモニウム法が最も硫黄価格に敏感な構造にあるという。もっとも、8月28日時点の月平均価格でコストを再計算すると、リン酸価格の上昇が鉄法・ナトリウム法の従来の優位性を打ち消す形となり、総コストはアンモニウム法が1万3,500元台と、鉄法・ナトリウム法(いずれも1万4,000元台)を下回る逆転現象が生じているとした。

LFP最終製品の生産能力については、2026年見込みで名目産能1,100万トンに対し実際の生産量は880万トン、品質基準を満たす有効生産量は760万トンにとどまり、名目能力の拡大が実際に使える高品位の供給を上回っている状態にあると指摘。下流電池の世代交代を背景に高圧密度品(3.5世代以上)のシェアは2026年見込みの約22%から2030年には約6割まで上昇する見通しで、新規参入が相次いだことで上位5社の集中度(CR5)は2023年の62%から2025年には55%まで緩やかに低下しているとした。また、LFP正極材そのものの製法別コスト比較(8月28日時点)では、鉄酸化物(鉄紅)ルートが1トンあたり5万2,356元と3ルート中最も低コストで、主流のリン酸鉄ルート(5万6,156元)を6.8%下回った一方、蓚酸第一鉄ルート(5万5,884元)はリン酸鉄ルートにわずかに次ぐ水準にとどまり、直近では原料高の影響でリン酸鉄ルートが3ルート中最も高コストになる逆転が生じているという。鉄酸化物ルートの生産能力は2025年の2.7万トンから2030年には25万トンへと低い基数から急拡大する見通しだが、現時点(2026年見込み、LFP市場全体1,100万トン規模)でのシェアは5%にとどまり、当面は主流ルートを補完する位置づけにあるとした。

このほか、蓚酸第一鉄(LDP、LFPおよびマンガン鉄リチウム(LMFP向け原料)は名目産能に対し実際の稼働能力が大きく下回る状態(2026年見込みで名目60万トンに対し実質は35万トン程度)が続くとしつつ、LMFP需要の本格的な立ち上がりを背景に2025~2030年のCAGRは名目で56%、実効ベースで61.6%に達し、需給は2025~26年にタイトな状態が続いた後、2027~29年に供給過剰局面へ、2030年には需給再調整に向かうとの見通しを示した。海外生産拠点については、インドネシア(Lopal:12万トン稼働済・12万トン計画)を筆頭に、米国、欧州(湖南裕能、容百科技、万華化学など)、モロッコ(国軒高科の20GWh一体型電池プロジェクトを含む)、インド(容百科技とリライアンスの合弁、2028年稼働目標)、韓国(容百科技のLMFP、中偉新材料のLFP)などで新規プロジェクトの計画・建設が進んでいると紹介した。価格形成の仕組みについては、現在の中国市場ではSMM炭酸リチウム価格を基準としたリチウム連動型の決済が主流で、リン酸鉄コストと製造コストが一本の加工費に一括計上されているためリン酸鉄自体の市場価値が見えにくい構造になっていると指摘。将来的には炭酸リチウム・リン酸鉄・固定加工費の3つに決済を切り分ける方向への移行もあり得るが、これは自動的に進むものではなく、鉄源価格の変動が大きく需給がタイトな局面でこそ実現しやすいとの見方を示した。

金相浩氏(INFOR/公州国立大学):竪型ビーズミルで微粉砕効率を追求

続いて登壇したのは、公州国立大学教授でLG化学研究院シニアリサーチャーを務め、韓国の粉砕装置メーカー、INFOR(亿富智能)の顧問でもある金相浩(Sang Ho Kim)氏。同氏は電池の専門家ではなくナノ材料の専門家という立場から、LFP正極材やシリコンカーボン負極材、CNT分散などに用いられるビーズミル装置について解説した。

金氏は、量産設備に求められる条件として、微細かつ迅速で均一な粉砕性能に加え、故障やメンテナンスの少なさ、設備コストと工程コストの両面での競争力を挙げた。その上で、INFORが横型・竪型双方のビーズミルを手掛け、横型は最大2000リットルまでのラインナップとEPC対応を備える一方、竪型ビーズミルについては2007年に業界に先駆けて大型機の商用化に成功したと紹介した。竪型設計の優位性としては、遠心分級機能により十分に粉砕された微粒子のみを上部から排出できるためスクリーン(メッシュ)を用いる横型設備で頻発する目詰まりが起きにくく、粒度分布がより均一になる点を挙げた。また、大径の回転軸を横向きに配置する横型設備に比べ、縦向き配置の竪型設備は構造的な安定性が高いとし、同社の試算では処理能力が横型比で7割超高まり、1台あたり年間5000トン超の増産効果が見込めると説明した。あわせて、韓国国内に技術者が常駐する拠点を持ち、24時間体制でのアフターサービス対応が可能な点を、中国拠点への往来が必要となる他社との差別化要素として挙げた。

徐菡氏(サングロー):「電池システムはESSではない」、システム全体設計と安全性を追求

阳光电源(サングロー)韓国区技術責任者の徐菡氏は「超越電池:エネルギー転換時代のESSの再定義」と題して講演した。同氏によると、世界のESS市場は再生可能エネルギー需要の急増と系統の不安定化を背景に急拡大しており、2024年までの累計導入量は約142ギガワット時(中国71.0、南北アメリカ41.6、欧州17.1、アジア太平洋10.6、その他1.8)に達し、2030年には445ギガワット時規模への拡大が見込まれている。用途面でも、再生可能エネルギーとの組み合わせにとどまらず、ピークカット、電力価格差を利用した裁定取引、非常時のバックアップ、需要管理、周波数調整補助など多様な事業モデルが広がっているとした。

価格動向については、世界平均のターンキー型ESSシステム価格が2017年の1キロワット時あたり614ドルから2024年には165ドルまで下落し、中国国内平均はさらに低い101ドル(いずれも有効容量ベース)になっていると紹介。コスト構成では、電池ラック(セル・BMS等)が中国以外の市場でシステムコストの56%程度を占め、残りをDCボックス側のBOS(12~13%)、PCS(4~8%)、EMS(2~3%)、変圧器(2~4%)、システムインテグレーターマージン(11~14%)などが分け合う構造で、中国市場では電池の比率がさらに高い62~65%に達するという。価格下落の背景として、電池大手の増産が需要の伸びを上回っていること、高金利や電力料金の安定化による一部案件の延期・中止、新興市場における補助制度の未整備を挙げる一方、システム統合の高度化(電池・PCS・EMSの一体供給によるコスト低減と信頼性向上)、裁定取引や周波数調整といった収益モデルの多角化、北米・欧州に続くインド・中東・豪州など新規市場の開拓が、今後の成長を下支えするとの見方を示した。

同氏が繰り返し強調したのは「電池システムはESSではない」という考え方で、Wood Mackenzieによる2026年版グローバルBESSインテグレーター総合ランキングでサングローが世界1位(2位テスラ、3位CATL、4位BYD、5位エンビジョン・天合儲能)に位置づけられている点を紹介しつつ、ESSは電池セル単体ではなくBOS(周辺機器)・冷却・保護回路を含むシステム全体で設計すべきだと述べた。安全性については、米国の非営利研究機関EPRIによるBESS事故の原因分析を引用し、原因別では「統合・組立・施工」が36%と最大の要因で、運用(29%)、設計(21%)、製造(14%)が続く一方、故障箇所別に見ると制御系統(46%)と周辺機器BOS(43%)が大半を占め、電池セル・モジュール自体に起因する事故は11%にとどまると紹介。世界的に導入量が急拡大する中でも、導入量あたりの事故発生率はここ数年で顕著に低下しているとした。

技術トレンドとしては、PCSと電池ラックを冷却装置とともに1つのコンテナに集約する一体型設計への移行(従来の分離設置型から)、空冷から水冷への転換、そして1台のPCSに複数のラックをぶら下げる従来方式から1台のPCSに1つのラックのみを接続する方式へと変え、ラック間のSOCばらつきを最小化することで性能と寿命を改善する設計を紹介。安全面では、多層構造による耐火設計と、可燃性ガスを外部へ逃がす防爆構造により、火災時の延焼や二次被害を防ぐ設計を挙げた。さらに、系統電圧の一時的な変動時にも同期状態を維持できるHVRT・LVRT(高低電圧ライドスルー)対応や、仮想同期発電機(VSM)技術による仮想慣性の提供、系統周波数の安定化支援、電力動揺の抑制、そして停電時に自律的に電力供給を再開するブラックスタート機能など、系統形成型(グリッドフォーミング)ESSへの技術シフトが今後の焦点になるとの考えを示した。

パネルディスカッション:「LFP産業化の実現、中韓協業でどう材料・設備・コストのボトルネックを打開するか」

 

セッションの締めくくりとして、陳泊霖氏(SMM)の司会により、江原大学の金杞炫教授(炭素中和融合学・水素安全融合大学院兼任)、SungEel Hitech副社長のポール・ヨム(Paul Yum)氏、彩客新能源(Tsaker)総経理の柯君雄氏、瑞浦蘭鈞(REPT BATTERO)研究院常務副院長の黄海寧氏、天賜材料(TINCI)マーケティング責任者の黄正勇氏によるパネルディスカッションが行われた。

中国市場の需給については、8月の中国国内LFP販売量が45万トン前後、稼働可能な実質生産能力は550万トン程度で、名目上語られる600万トン規模の能力にはかなりの「休眠」分が含まれるとの説明があった。2027年については、コンサルティング会社の予測を引用する形でリン酸系正極材需要が前年比3割強伸び、全体で800万トン規模、うちLFPが7割強を占め600万トン前後になるとの見通しが紹介された。稼働率については、年末から旧正月にかけて在庫調整に伴う一時的な価格の小幅な下押しはあり得るものの、来春以降は需要が回復し、通年では8割超の稼働率を維持できるとの比較的強気な見方が示された。天賜材料の黄正勇氏も需給が引き締まった状態が続くとの見立てに同調し、川下の増産ペースが川上のLFP材料の増産ペースを上回る構造的なミスマッチがあるため、高品質品を中心に大手メーカーは早期の数量確保を進めるべきだと述べた。新規ラインは既存設備と同条件であっても立ち上げから安定稼働まで3~6カ月を要するため、今年発表された増産計画の多くは来年春以降にならないと実際の供給には結びつかないとの指摘もあった。瑞浦蘭鈞の黄海寧氏は電池メーカー側の視点として、上期の稼働率がおおむね8割超で推移しており需要は総じて底堅いとし、高エネルギー密度化を背景に高圧密度品への需要シフトは今後も続くとの見方を示した。

韓国市場については、江原大学の金杞炫教授が、自身は電池の専門家ではなくエネルギー資源・技術経済の観点から発言するとした上で、LFPの価格優位性がそのまま需要独占にはつながらないとの見方を示した。同氏は、モビリティ用途とESS用途を分けて考える必要があり、ESSでは単純な価格ではなくLCOS(均等化貯蔵コスト)で評価すべきだとし、太陽光と組み合わせた日次サイクル用途と揚水発電など長時間貯蔵用途とでは求められる特性が異なるため、LFPがESS市場全体を席巻するとは考えにくいと述べた。モビリティ用途についても、価格だけでなく安全実績や充電インフラ、機械式駐車場との適合性、中古車市場での評価といった需要側の要因が導入を左右するとし、米国で議論される航続距離延長型EV(レンジエクステンダー)の事例を挙げながら、韓国のLFP産業は技術開発と市場開拓を継続しつつ、こうしたシステム・需要側の要因も踏まえる必要があるとの考えを述べた。

リサイクル分野では、韓国の電池リサイクル事業者から、事業化に向けた2つの課題が指摘された。1つは経済性で、現行の商慣行では炭酸リチウムのみが価値のある回収物とみなされる一方、リン酸鉄の処理コストが新品材料の価格を上回る場合があり採算面の課題になっているという。もう1つは原料確保で、月間数百トン規模のブラックマス処理能力を安定稼働させるための原料集荷にはなお時間を要するとした。中国のリサイクルサプライチェーンが前処理からリサイクルまで一貫して整備が進んでいる点を参考にしたいとの発言もあった。また、電池スクラップの処理費用を誰が負担すべきかという点で社会的な合意形成がまだ整っていないことが、前処理事業の拡大を妨げている要因の一つに挙げられた。これに関連し、材料メーカーが単独でブラックマス処理や前駆体生産を内製化するリスクは大きく、リサイクル事業者との連携や協業体制の構築が望ましいとの意見も出された。

議論の終盤では、中国企業の代表者が再生可能エネルギー分野における中国企業の取り組み姿勢を紹介し、中韓双方の一層の協業を呼びかける場面もあった。

Keikoo

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