NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は22日、ムーンショット型研究開発事業「生分解開始スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチックの研究開発」において、東京大学や海洋研究開発機構、群馬大学が、深海をはじめとする分解微生物が極めて少ない海洋環境下でも、生分解が大幅に速く進む「酵素内包生分解性プラスチック」の開発に成功したと発表した。
開発した酵素内包の技術は、酵素を添加しても元の生分解性プラスチックと同等の強度を維持し、さまざまな製品に熱成形加工することも可能な革新的なアプローチとなる。さらに、使用中は分解せず、環境中に流れ出たときに摩耗や断片化により生分解が誘発される「生分解開始スイッチ機能」も有している。また、深海環境下でも速やかに分解が進むため、マイクロプラスチック汚染問題の低減にも貢献する。
同事業では、生分解性プラスチックに自然由来の分解酵素(クチナーゼやリパーゼなど)を、それぞれのプラスチックの熱軟化点以上で熱混練することにより作製。酵素を添加しても、元のプラスチックと同等の強度や柔軟性を維持するとともに、水温が低く、水圧も高い深海へと沈降・拡散した場合でも酵素活性を保持し、生分解速度が大幅に速まる「酵素内包生分解性プラスチック」の開発に成功した。
具体的には、酵素内包の技術により、岸壁に加え、深海でも速やかに分解が進行し、岸壁では1カ月以内に、水深757m付近の深海でも5カ月以内に完全に分解させる。酵素内包生分解性プラスチックの分解速度は、酵素を内包していない場合と比べて、約30倍の速さとなった。
この結果は、低温(4℃)かつ高水圧(7.6MPa、大気圧の約75倍)という深海の極限環境下でも、プラスチック内に包埋された酵素が変性・失活することなく分解活性を維持し、基質であるプラスチックの分解を進行させ得ることを実証するものであり、深海環境下での生分解性に関する重要な知見となる。
また、開発した「酵素内包生分解性プラスチック」では、プラスチック内に埋め込まれた酵素は、水のない環境下では分解活性を発現しないという。したがって、ドライな環境下で製品として使用している間の分解はほとんど進行せず、環境中に流出したのち、物理的な崩壊や表面摩耗などにより、埋め込まれている酵素に水が触れたときに分解がはじまる生分解開始スイッチ機能を備えている。
(IRuniverse K.Kuribara)