スペイン・マラガで開催されたBIR国際リサイクル会議2026の初日となる10月26日、国際環境委員会(IEC)が「環境法制からサプライチェーン安全保障へ」をテーマにセッションを行った。進行はIEC委員長のOlivier François氏。EU、国連、G7、米国のいずれでも、環境関連の規則がリサイクル材の貿易を制限する手段として使われつつあり、その根拠は安全保障へと移っている。
EU:金属の輸出禁止が具体化
改正EU廃棄物輸送規則(WSR、規則(EU)2024/1157)は、2026年5月21日から大部分が適用されている。2027年5月21日からは、回収目的の廃棄物の非OECD諸国への輸出は、仕向国と廃棄物の種類がEUのリストに載らない限り禁止され、輸出者は受け入れ施設が規則が定める環境基準に基づく独立監査に合格していることを確認しなければならない。プラスチック廃棄物の非OECD諸国向け輸出は2026年11月21日から禁止される予定だ。
François氏によると、2019年から続くWSRの議論に欧州委員会の「鉄鋼・金属行動計画」(2025年3月)が合流し、リサイクル金属が規制対象に入った。BIR貿易・環境政策担当官のAlexandra Vartan氏が説明した最初のリスト案では、金属スクラップの輸入承認を申請した24か国のうち、一部の金属品目で対象となったのはモルドバ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、ウクライナの5か国のみ。インド、パキスタン、エジプト、マレーシア、タイ、台湾などは含まれていない。リストは案の段階である。

BIRの対応と今後
BIRは10月16日の意見書で、欧州の需要と処理能力では現在の輸出量を吸収できず、輸出先を閉ざせば価格が下がり、回収・選別・投資が弱まると主張した。除外措置の再検討を求めている。ブリュッセル駐在の7つの代表部(エジプト、インド、マレーシア、パキスタン、台湾、タイ、香港)とも面会した。欧州委員会は2026年11月21日に最初のリストを採択する見通しだ。
バーゼル条約:事前同意の対象が拡大
BIR貿易・環境ディレクターのAlev Somer氏は、有害廃棄物を対象に作られたバーゼル条約(191か国)が対象を広げ続けていると解説した。事前の情報に基づく同意(PIC)手続きは2021年から一部のプラスチック廃棄物に、2025年からはすべての使用済み電子機器に適用され、回路基板1枚の混入を理由に非鉄スクラップが港で止められた例もある。2027年4月の第18回締約国会議(COP18)では、ノルウェーによる全プラスチック廃棄物のPIC対象化提案と中古繊維製品の管理方法が議論される予定で、いずれも未決定である。

G7・OECD:重要鉱物が流れを加速
Somer氏によると、OECDのデータでは原材料の輸出制限は過去15年で5倍に増え、廃棄物・リサイクル材が最も制限されている。G7の表現も「開かれた貿易」(2023年)から「強靭性」を経て「安全保障」(2026年)へ移った。2026年のG7重要鉱物宣言は、G7とパートナー国以外の単一供給国への依存度を2030年までに60%未満に下げる目標を掲げ、備蓄、トレーサビリティ、リサイクル目標を進める一方、クォータや価格下限などの貿易措置も検討している。同氏はこれを「G7の循環性パラドックス」と呼び、国境を閉ざしても物の流れは止まらずグレーゾーンに移り、正規の事業者が不利益を被ると警告した。
米国:国内購入義務による安全保障
米国リサイクル材協会(ReMA、旧ISRI)で国際貿易・グローバル問題担当副会長を務めるAdam Shaffer氏によると、トランプ政権は国防生産法(DPA)に基づき、再生タングステン、タングステンスクラップ、ブラックマスに国内購入義務を課している。形式上は輸出禁止ではないが、国内に精錬設備や需要がなくても輸出には政府の許可が必要で、行き場を失う材料が出かねない。供給網が西側にとどまると示せれば例外が認められ、実質的には許認可とトレーサビリティの仕組みとして機能している。ReMAは銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスへの拡大は見込まないが、欧州の措置が輸出制限を求める際の前例になることを懸念している。
展望
総じて、リサイクル材は戦略資源として扱われ、貿易政策もそれに沿って動いている。廃棄物・リサイクル材は、国際貿易で最も制限を受ける分野となっている。輸出先が閉ざされればスクラップの価値は下がり、回収や投資は弱まる。ただし何も確定しておらず、EUのリストは案、バーゼル条約の提案は未決定、米国の例外も個別判断であり、BIRやReMAによる働きかけの余地は残る。日本もこの流れと無縁ではない。G7の一員として重要鉱物の備蓄・トレーサビリティ・リサイクル目標が国内産業に及ぶ可能性が高く、バーゼル条約締約国として2027年4月のCOP18の決定の影響も受ける。EUの最初のリストの採択が見込まれる2026年11月21日と、新たな輸出制度が始まる2027年5月21日以降は、アジア市場に関わる物流にも変化をもたらす可能性がある。
出所:BIR第157回世界リサイクル大会(マラガ)、国際環境委員会(IEC)セッション、2026年10月26日