スペイン・マラガで開催されたBIR国際リサイクル会議2026の2日目となる10月27日、BIR鉄鋼部会(Ferrous Division)が、プレナリーセッションをアフリカにあてた。進行はAbhijeet Mahanta氏(Stelaris Resources、スイス)。冒頭でBIR鉄鋼統計顧問のRolf Willeke氏が統計を報告し、英国、インド、南アフリカ、シンガポールから登壇者が加わった。アフリカでは鉄鋼需要とスクラップ輸入が伸びる一方、登壇者は、各国の輸出規制、北アフリカの買い手に影響しうるEUの改正廃棄物輸送規則(WSR)案、投資リスクを課題に挙げた。
「アフリカは単一の市場ではない」
BIR鉄鋼部会長のShane Mellor氏(Mellor Metals、英国)は、アフリカには製鋼・リサイクル産業が確立した国と、育ち始めたばかりの国が混在すると述べた。2026年のアフリカの鉄鋼需要は約4.4%増と、世界全体の弱い状況を大きく上回る見通しである。世界鉄鋼協会(worldsteel)によると、1〜9月の粗鋼生産は1,900万トンで、前年同期比10%弱増えた。同氏は、供給だけでなく回収・選別・加工・取引のインフラを整える機会があるとする一方、港湾、輸送、資金調達、支払い条件、材料規格、規制を課題に挙げた。
統計:欧州・中国は減、アフリカは増
Willeke氏は「World Steel Recycling in Figures」第17版の2026年1〜6月更新版を報告した。世界の粗鋼生産は9億3,150万トンで0.7%減だったが、アフリカは10.0%増の1,260万トンだった。エジプトは13.6%増の570万トン、アルジェリアは34.3%増の368万トンで、南アフリカは13.7%減の208万トンにとどまった。アルジェリアが南アフリカを上回った形である。エジプトのスクラップ輸入は98.6%増の210万トンとほぼ倍増した。アフリカ最大の輸出国は南アフリカだが、11万トン(33.5%減)である。世界の鉄スクラップ使用量は0.7%減の2億3,410万トンで、中国が7.1%減、EU27が3.2%減、米国が9.3%増だった。インドは17%増で、データのある市場で最も伸びた。

「4つの市場」:人口、電炉、輸出禁止
インド・リサイクル材協会(MRAI)会長でMTC Group取締役のSanjay Mehta氏は、アフリカを北・西・東・南の4地域に分け、「4つの異なる市場、4つの異なる戦略」が必要だと述べた。人口は14億人で、その6割が25歳未満である。同氏によると、1人当たりの鉄鋼量はアフリカが24キログラムで、欧州の284キログラム、アジアの292キログラムを大きく下回る。同氏は「今の低い消費は、将来のスクラップ発生源だ」と述べた。スライドはOECD推計として、2040年まで年1,550億ドルのインフラ投資が必要だとし、アフリカの鉄鋼生産の89%は電炉(EAF)だとする。原料炭が乏しいためである。エジプトはスクラップの発生量375万トンに対し、輸入が397万トンあり、アフリカから買うのではなく、アフリカに売る機会だと位置づけた。
同氏はガーナ、コートジボワール、セネガル、トーゴ、ケニアがスクラップの輸出を禁止していると紹介し、国内での付加価値を求める動きが広がっていると指摘した。同氏の試算では、域内の回収・選別・加工が整えば、アフリカ経済に120億ドルの価値を生みうる。

南アフリカ:価格優先制度の教訓
XA Global Trade AdvisorsのCEO、Donald MacKay氏(南アフリカ)は、14年続く南アフリカの価格優先制度(Price Preference System、PPS)を取り上げた。スクラップは輸出許可を得る前に国内で割引価格で売る必要があり、買い手がつかない場合に限って輸出でき、輸出には20%の関税が上乗せされる。国内の鋼材を人為的に安く保つ狙いである。同氏は、電炉メーカー(ミニミル)が流出を止める追加措置を求めてロビー活動に時間を費やし、スクラップ価格が下がれば回収も減ると指摘した。同氏のスライドによると、スクラップの輸出規制がある国は2009年の33か国から2024年に43か国へ増えた(OECD)。余剰分の輸出ルートを残すことも提案している。
南アフリカ金属リサイクル協会(Metal Recyclers of South Africa)のQuintin Starkey会長は、需要家が内陸のヨハネスブルグ周辺に集中するため、沿岸の業者は運賃負担で回収が採算に合わなくなったと述べた。市場の不透明さから投資の引き揚げが進み、雇用は1万5,000人から9,000人に減ったという。同氏は「政策は良いものだが、バリューチェーン全体を考えたものでなければならない。ある産業から別の産業への富の移転にとどまってはならない」と述べた。
EUの規則と北アフリカ
Navigate Commodities(シンガポール)のマネージングディレクター、Atilla Widnell氏は、WSR改正の影響を分析した。エジプトとモロッコはいずれも純輸入国で、非OECD諸国向けの輸出を制限するEU案で影響を受けうる国に挙がっている。スライドによると両国は申請済みだが、申請は承認を意味しない。実施されれば鉄スクラップ取引への影響が最も大きく、特にコンテナで扱う小規模な「ボックス」トレーダーが、直接の需要家との取引を失いかねない。両国は欧州の一部の供給元との取引が減る一方、米国や英国から調達できるとの見方を示した。スライドは条件付きのシナリオとし、End-of-Waste(廃棄物の終了)の要件を満たす欧州のバルク貨物は続く可能性があるとする。新設の電炉能力は、稼働時期と装入原料の構成が確定して初めてスクラップ需要を示すと指摘した。

出所:worldsteel「World Steel in Figures 2026」(Donald MacKay氏の発表資料より)
投資リスク:「目を大きく開けておくべきだ」
Enicor(英国)のExecutive Chairman、Tom Bird氏は、アルジェリアとナイジェリアでの自身の商取引の経験を挙げ、政治的不安定、規制の不透明さ、そして「部屋の中の象」である汚職を警告した。「取引と、現金を投じる投資はまったく別の話だ」とし、「アフリカに進出するなら、目を大きく開けておくべきだ」と述べた。
展望
Mahanta氏は、この5〜6年でアフリカのスクラップ貿易は、15〜18か国の輸出国から、大半が純輸入国へと変わったと述べた。ナイジェリアの輸入は1年で300%増えたが、量はまだ大きくない。EUの案は検討段階にある。日本はOECD加盟国で、非OECD向け規制の直接の対象ではない。BIR統計では日本の1〜6月のスクラップ輸出は7.4%減の353万5,000トンで、主な仕向け先はベトナム、バングラデシュ、韓国、タイである。EUがアフリカやアジアの仕向け先をどう扱うかで欧州のスクラップの流れが変わりうるため、注視が必要である。
【アーカイブ】BIR 2026 世界リサイクル会議&展示会 in マラガ
出所:BIR世界リサイクル大会(マラガ)、鉄鋼部会プレナリーセッション、2026年10月27日、各登壇者の資料