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特許技術でLiBのリサイクルに参入 エマルションフローテクノロジーズ

写真 今後の市場拡大が確実視されているリチウムイオンバッテリー(LiB)のリサイクルに、特許技術を持って参入する「エマルションフローテクノロジーズ」(EFT、鈴木裕士社長、茨城県東海村)。強みは従来技術に比べて10倍にも及ぶ驚きの生産性だ。同社の挑戦を紹介する。

 

 

2022年2月に福岡で開催されたICCサミットで事業説明をする鈴木裕士社長

 EFTは2021年4月に設立された日本原子力研究開発機構(JAEA)発のベンチャー企業。JAEAで中性子利用研究に従事していた鈴木氏が、機構内に設けたイノベーション推進室での活動中に「エマルションフロー」という技術に出会い、その秘めた可能性の大きさにほれ込んでできた会社と言ってもいいほどだ。その技術をJAEAで開発した長縄弘親氏は現在EFTの取締役CTO(最高技術責任者)。長縄氏に技術の概略を教えてもらった。

 

 この技術の元になっているのは「溶媒抽出」だという。大まかにいえば取り出したい金属を溶かした酸などの水溶液と、その金属にくっつく抽出剤を溶かした油を混ぜ合わせ、その後分離した油から目的金属を取り出す技術だ(下図参照)。

 

 

図

 

 

 この抽出法の中で1950年代からよく使われてきたのが「ミキサーセトラー」という技術。ここでは混合、静置、分離の3工程が必要で、通常は大がかりな装置になる。これに対して、長縄氏が中心になって開発した「エマルションフロー」技術ではこれらを1工程で行うことができるのだという(下図)。長縄氏は約30年間、使用済み核燃料に含まれる元素を溶媒抽出で高度分離する研究を続けていたが、その過程で「油と水が良く混ざりながらもきれいに分離する」という常識を覆すような現象を見つけた。この現象を「エマルション(乳濁液)の流れ(フロー)」と呼んで、これを抽出方法として確立した。その段階で従来技術に比べて生産性は10倍、設備のサイズを10分の1にすることができたという。

 

 

図

 

 

 ポイントは、マイクロメートルサイズで大きさのそろった微細な粒として油を吹き上げ、降下してくる目的物の入った水溶液と混ぜること。容器の上部と下部を大きくすることによって上部と下部では乳濁状態が迅速かつ完全に解消されるのだという。LiBのリサイクルで考えると、上の図の右側のように上から降下してくるコバルトやニッケルといった目的金属の入った水溶液に、下のノズルから抽出剤の入った油を吹き上げて、装置の中間部に水っぽいマヨネーズといった感じの乳濁液(エマルション)の状態を作る。このエマルションは細かく均質な液滴群からなっていて、比重の関係で油系の液滴は上に、水溶液系の液滴は下に流れていく。この過程で、目的金属は油系の液滴に取り出されて上の部分に移っていくという仕組みだ。

 

 構造上、工程で臭いが出ることはなく、IoT(モノのインターネット)による24時間の無人運転ができ、人件費の削減も可能だという。エマルションフロー技術はJAEAによって国内外で40件の特許が出願されていてEFTがライセンスを受けて事業に活かしている。現在はEFTがさらに技術を発展させ、装置を何段階か組み合わせた第5世代の「多段エマルションフロー」に進化させている。この第5世代では生産性で100倍、サイズで100分の1、元素の精製率99.99%以上を実現できるとうたう。すでに装置の大型化と自動化に道筋がついていて、2023年の稼働を目指して商用プラントの設計を始めたという。

 

 EFTはこの技術を、今後大幅に増えると予想される電気自動車の車載LiB用のレアメタルの製錬とリサイクルに活用して事業を展開する戦略だ。国内レアメタルのリサイクル事業にはEFT自らが参入する。先行する海外LiBリサイクルにはプラント普及事業で2025年、国内は2030年前後を参入時期と設定している。

 

 

図

 

 

 IRuniverseは2022年8月31日(水)に「Battery Summit 2022 vol2」を東京都千代田区の学士会館で開催するが、エマルションフローテクノロジーズ社も講演企業に決定した。サミットではこの記事の後の展開も含めて、技術と事業の中身を詳しく知ることができる。

 

→(関係記事)開催決定!Battery Summit 2022 vol2(8/31) at学士会館 supported by ACE

 

 

(IRuniverse 阿部治樹)

 

 

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