英国初の産業規模LIBリサイクラー RECYCLUS
ICBR:第27回国際電池リサイクル会議会場から〜
MIRUではオーストリア・ザルツブルグで開催されたICBRの会場から参加者の声をシリーズで伝えているが、今回は英国の電池リサイクルスタートアップRECYCLUS 販売部長Ralph Harkess氏へ取材、現在業務開始への許可を待っている同社について話を聞いた。
欧州では現在リチウムイオン電池需要の増加に伴い、欧州域内におけるリサイクル能力の引き上げの必要性が論じられるているが、中でも特に英国は遅れをとっている。
そんな現状を改善しようと名乗りをあげたのが英国で初となる産業規模リサクラーを目指すRECYCLUSだ。2019年に創設したスタートアップが扱うのはリチウムイオン電池および鉛蓄電池で、鉛蓄電池用の施設はTipton 、リチウムイオン電池用施設はWolverhamptonに位置する。リチウムイオン電池の処理能力は、稼働開始年で8,300トン、その後2027年までには41,500トンまで引き上げる予定だ。Tipton施設では、鉛蓄電池処理能力を初年度16,000トン、その後2027年までに 80,000トンまでの引き上げを見込んでいる。
リチウムイオン電池のリサイクル施設では、同社の独自の破砕技術を採用し、事前の浸漬を行わず、乾いた状態で破砕機にかけられる。処理過程では、高熱は発生しないため最高温度でも約85度を超えない。生産されたブラックマスはその後既存の技術で精錬される。扱う電池はEV用電池に加えポータブルも扱う。電池の化学物質については、NMC・LMO ・LCOなどコバルトとニッケルを含むものが主流となる。なお、LFPについては検討していない。目下の焦点はブラックマスの生産に集中することで、精錬については欧州やアジアの提携業者に委託することになっている。
現在同社はリチウムイオン電池リサイクル施設の稼働開始にあたり、英国の環境局からの最終許可を待っている。開始はいつ頃になるのかとの問いにHarkess氏は、「許可さえ降りれば、すぐにでも稼働できる状態です」と答えた。許可取得に関しては、手続きに時間を要するとのことだ。
RECYCLUSは、稼働が本格化すれば、英国内で産業規模のリチウムイオンリサイクル施設を運営する初のリサイクラーとなる。英国ではこれまで、プロジェクトやパイロット規模のリチウムイオンのリサイクル施設は存在するが、産業規模の施設が存在しなかったため、使用済み電池は輸出されていた。
リサイクル事業を開始するにあたり現在の課題は何かとの問いについて、Harkess氏は、「とにかく、処理能力が圧倒的に不足しているということです。これは英国だけでなく欧州も同様です」と強調した。
同社はまた、今回稼働を間も無く開始する2件の施設に加え、向こう5年間に新たに4件の施設を建設し、英国内の処理能力をさらに拡大する予定だ。向こう12ヶ月以内に欧州、米国、アジアにも施設を開設することも検討しているが、その場合は合弁などの形態で行う予定である。サステナビリティへの取り組みとして、今後使用済みリチウムイオン電池を施設内で放電し、回収した電力をグリッドへ送ることも計画している。加えて、リチウムイオン電池専用の輸送・保管に使用する「Halo」というメーカーのボックスも提供しており、同社の顧客は購入だけでなくリース契約も可能。
日本の企業との提携に興味があるかとの問いには、「もちろん、興味を持っています。先ほど述べたように当社は、国内の事業が軌道に乗り次第、海外における合弁事業を念頭に入れています。」
取材協力:
・Mr. Ralph Harkess
・Commercial Manager
・RECYCLUS
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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