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廃自動車不足が深刻化:フランスの自動車解体業事情INDRAに聞く

写真 日本の自動車市場では、自動車向け半導体の不足により自動車の生産が落ち込むなか、中古車需要の上昇が続いている。そのため、廃車となる車の数が減少し、解体業者は原料不足に悩んでいる。欧州の自動車市場も例外ではなく、自動車リサイクル業界への影響が広がっているようだ。

 

 MIRUでは今回、過去にも何度かご登場いただいている仏自動車解体大手INDRAのOliver GAUDEAU氏へ取材、フランスの自動車解体業の現状について聞いた。INDRAは、国内自動車解体業者のおよそ3分の1をネットワーク傘下に置く最大手で、ルノーとスエズが所有する。ルノーが提携や買収によって構築している自動車バリューチェーン上の一社でもある。

 

 

Q:自動車の生産が激減するなか、フランスの自動車解体業界の現状は?

A:Oliver GAUDEAU氏

 ここフランスでも、日本と状況は同じです。新車の購入が難しくなっているため、消費者は中古車へと目を向けている。そのため、廃自動車の数が激減しています。ことの発端はご存じのとおり、電子部品の不足です。加えて、一般的な物価も大きく上昇しており、経済的な理由で新車の購入を避ける消費者が増えている。こうした背景から、中古車の需要が一気に高まりました。ここ数ヶ月、廃自動車の価格は上昇し続けています。また通常なら廃車となる車でも中古車として再販されています。加えて、本来なら買い替えが必要な状態の古い自動車をなんとか修理して使用しようとする人も増えています。

 

 

Q:INDRAは中古部品の販売に注力していますが、こちらの事業については?

A:Oliver GAUDEAU氏

 確かに当社は、中古部品販売に注力しているため、この部門については順調です。しかし、廃自動車の数全体が減少している今、中古部品が供給不足に陥るのは時間の問題です。現状がこのまま続くようであれば、一年以内には事業への影響が深刻化すると思います。すでに在庫不足に直面している同業者もあり、皆必死で原料を探しているという状況です。フランスだけではありません、欧州全体が同様の状態です。

 

 

Q:小規模なATF(承認処理施設)にとっては特に痛手が大きいのでは?

A:Oliver GAUDEAU氏

 その通りです。フランスのATFは大きく2つのタイプに分かれます。一つは、大規模な解体施設を持つ大手で、施設の設備や技術も揃っており、保険会社とも提携しています。そのため、事故車や破損車の供給ルートを持っています。この種の廃車は中古部品としての価値が高いので利益性も高い。保険会社と組んでいる解体業者は、廃自動車のフローが維持できるため、在庫状況は今でも悪くない。だが、保険会社からの自動車の供給が確保できない業者は、より価値の高い部品へのアクセスがなく、通常は古い使用済み自動車のみを処理している。こうした業者が現在特に打撃を受けており、かなり差し迫った状況に直面しています。

 

 

Q:フランスの現在の拡大生産者スキーム状況についてはどうですか?自動車における拡大生産者責任を強化する2020年の新法が可決されて以来、新たな動きはあったのでしょうか?

A:Oliver GAUDEAU氏

 新法では、使用済み自動車に対する自動車メーカーの責任がより強調されており、回収システムの改善に焦点が当てられています。そのなかで2つの選択があり、自動車メーカーはそのどちらかを選ばなければなりません。一つは、エコ・オーガニズムと呼ばれる組織(生産者責任組織)を複数の自動車メーカーが集まって結成し、コストを分担することで使用済み自動車の管理を行います。もう一つは、独自のシステムを自動車メーカーが構築するもので、合弁や提携により廃自動車の管理を行うというものです。

 

 ここでのコストとは、自動車の最終所有者に対する情報拡散などの広報費用(最終所有者の義務についての告知など)、回収にかかる費用、リユース・リサイクル・リカバリー(3R)率の達成にかかる費用、使用済み自動車リサイクルセクター事業の補償などを含むものです。新法は自動車業界へ大きな変化をもたらすことになるでしょう。エコ・オーガニズムを他社と結成すれば、情報を共有することになるため、自動車メーカーはこのシステムを嫌う傾向にあります。そのため、自動車メーカーは独自のネットワーク構築を選択することが予想されます。詳細については、今年の終わりまでに法令による具体的措置が発表されることになっています。実際に業界がどの適度の影響を受けることになるのかは、その時点でより明確になるでしょう。

 

 

Q:現在の使用済み自動車解体事業における問題は?

A:Oliver GAUDEAU氏

 現在業界が抱えている問題は、不法業者の存在です。国内基準では路上を走行できない状態の車を国外へ中古車として輸出する業者です。こうした車は、国内で無害化しリユースできる部品を解体し、原料をリサイクルすべきなのですが。これは、自動車の最終所有者と自動車メーカーの間における情報の共有が明らかに不足していることに起因しています。消費者専用のウェブサイトなどで、自動車の最終所有者に対する適切な情報が拡散されれば、こうした問題は解決されると思います。例えば、最終所有者が使用済み自動車のデータをサイト上で登録し、そのデータをATFのネットワークへ直接接続するというシステムです。それにかかるコストは自動車メーカーが負担すべきです。当社では「Goodby-Car」というプラットフォームを構築し、既にこのようなシステムを提供しています。

 

 

Q:現在改正作業が実施されているELV指令(改正後はELV規則となる)でも、EPRスキームが強化されることになっています。EPRを含め全体として業界への影響は?

A:Oliver GAUDEAU氏

 EPRシステムの強化により、自動車メーカーが中古品や原料の管理へも手を伸ばす可能性があり、これは我々の業界にとっては大きなリスクです。中古部品や原料はATFが管理すべきです。

 

 全体的な影響としては、これはポジティブな面ですが、使用済み自動車の数が上昇すると思います。かねてよりEU内で大きな問題となっている行方不明の使用済自動車への対策が強化されるからです。そのため、原料の量も上昇するでしょう。ネガティブな面では、経営が難しくなる業者が出てくる可能性があります。ATFがリサイクル基準の改正に対応するためには、施設の格上げが必須となり、それには投資が必要です。小規模なATFは新規制への対応が困難となり、最終的にその数が減少することが考えられます。

 

 

取材協力:

 Olivier GAUDEAU

 Directeur Ingénierie et HSE

 Engineering and Health, Safety and Environment Manager

 INDRA

 

 

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SCHANZ, Yukari

 オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。

 趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。

 *ヨーロッパに御用がある際はぜひご連絡ください→ MIRUの「お問い合わせ」フォーム又はお電話でお問い合わせください。

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