風力発電設備のリユース、リサイクルについて
国内では風力発電設備の老朽化あるいは新規入れ替えによる廃棄が増加している。
現在でも今後は3000基ほどの風力発電設備の解体案件が出てくるといわれており、さながら風力発電「解体」ルネッサンスとでもいうべきスクラップ&ビルどの時代に入っている。
一方で風力発電のリユース市場もある。
https://www.env.go.jp/content/900535821.pdf
(環境省 風力発電設備のリユース・リサイクル・適正処分に関する検討より)
増速機は、新品で2,000~3,000万円と高額であり、機構が複雑なため故障しやすく、風車の設計寿命(約20年)の中で2~3回修理が必要となる可能性があること、新品の調達に数ヶ月要する場合があること等から、最も中古品の利用ニーズが高い部品となっている。海外では最大の中古部品市場を形成しており、増速機の中古販売・修理の専門業者が存在している。海外からの輸送コストを加味しても、新品に対する中古品のコストメリットが出る場合があり、特に新品の調達期間が数ヶ月必要となる場合には18、短期間で調達できる中古の増速機の付加価値は高くなる。なお増速機は、遊星ギアやその周辺部品が壊れている場合、中古品としての価値はほとんどなくなる可能性があり、メンテナンス・修繕の実施状況により、中古品としての利用可否や価値が大きく変わってくる。 発電機は、増速機と比較すると故障頻度は低いが、高価であり、新品の調達に数ヶ月要する場合があることから、増速機と同様に中古品の利用ニーズが高い部品の一つである。
リサイクル
現状では洋上風力と陸上風力のいずれも各所で解体案件が目白押しとなっているが、地域的には風力の建設が多い北海道、東北、九州に偏在している。
解体の場合、元請けがゼネコンや自治体というケースが多い。
風力発電のリサイクルコストは通常、発電事業者が負担しているとのこと。どのくらいの金額でやっているかは業者も明かさなかったが、いまのところは「言い値」で決まっている模様。
新設の風力発電設備建設の大手は日通。来年でも40基ほどの建設を控えており、こちらで繁忙をきわめている。物流の山九、上組、JFE物流。解体では最大手はアチハ。ベステラ社も解体の特許をとっている。アチハは風力発電メーカーと連携していることもあり、解体件数は最も多いと思われる。
ここに総合リサイクラーが入ってきており、イボキン(兵庫)、鈴木商会(北海道)、エンビプロHDグループ(クロダリサイクル)といった大手のリサイクラーが解体処理を伸ばしている。
代表的な2MWクラスの風車(ENERCON27製2.3MW機)の主要な素材割合を図 3-11に、風車の主要部位別の素材構成および重量を表 3-4に示す。 風車全体としては、基礎に使用されるコンクリートが重量の8割を占めている。基礎を除いた風車本体の主な素材は鉄(約88%)や銅(約3%)、アルミニウム(約0.4%)といった金属や、ガラス繊維強化プラスチック(以下、GFRPとする)(約8%)であり、約9割が金属で構成されている。
(環境省 風力発電設備のリユース・リサイクル・適正処分に関する検討より)
大型風車(MWクラス)の構成素材 代表的な風車(Gamesa28製2MW機、増速機付き)のナセルの主要素材の割合を図 3-12に、ナセルの主要部品別の素材および重量を表 3-5に示す。ナセル内部品の約90%は鉄で構成されており、残りは銅、アルミニウム、FRP、潤滑油等で構成されている。 また、ギアレス式の風車では、永久磁石式同期発電機が使用されている場合がある。永久磁石には、レアメタル(ネオジム、ジスプロシウム)が含有されており、ギアレス/永久磁石式同期発電機を用いている2MWの風車では、1.5~2トンの永久磁石を使用し、うち約30%がネオジム、約4%がジスプロシウムで構成されている
(環境省 風力発電設備のリユース・リサイクル・適正処分に関する検討より)
風力発電のリサイクルでは、鉄、銅(巻き線、エナメル線)、アルミ、ネオジム磁石といった素材はリサイクルで売却できるが(ネオジム磁石は現状、中国向けのリユース用途販売が中心)、問題はブレードのGFRP(およびCFRP)である。現状、多くが埋め立てかセメント工場や電炉での焼却処理であり、処理費用はキロ当たり40~50円もあれば、100~150円と高額なケースがある。実際にリサイクルを手掛けてる企業によると、ブレードはある程度まで裁断したあとに埋め立てというケースが多く、平均して100円程度のコストを支払って「埋め立てて」いるという。
しかしこのブレードについてもリサイクルが求められており、欧米では義務化の方向になっている。この波は必ず日本にも及ぶ。
(関連記事)
・GE、Veolia との米国初の風力タービン ブレード リサイクル プログラムを発表
早急にブレードのGFRP&CFRPの適切なリサイクルルートの構築が急がれている。国内にはいくつかのCFRPリサイクラーが存在するが、製品化(原料化)まで一貫して処理できるリサイクラーは、実は少ない。
ネオジム磁石については新金属協会とJOGMECで調査しており、新金属協会のなかで
「大型電力機器からの希土類等リサイクルシステム研究会」を立ち上げている。この中に参画している大手リサイクラーと大手磁石メーカーとでネオジム磁石のリサイクルプラントを立ち上げる計画もあるようだ。
これは喜ばしいことではある。やはり国内にネオジム磁石のリサイクル拠点を設けておく必要性は資源セキュリティの観点からも肝要。前述したが、現状は多くのネオジム磁石が中国かタイかベトナム。しかし結局は中国に流れていくことになる。値段で流れる。従って国内でも相応の価格でネオジム磁石スクラップを買い取る仕組みが必要なのだが、この点を大手磁石メーカーが持続的に購入していけるかが国内リサイクル成立の最大のポイントになろう。
日本最古の希土類メーカーであり磁石合金でもあった三徳(神戸)は敦賀(福井県)に溶融塩電解設備をもっており、これが磁石リサイクルには必要な設備ではあったのだが、三徳は2017年に日立金属に買収され(身売り)、その日立金属もいまや米ファンドのベインキャピタルにTOBをかけらている状態(→ 日立金属:米ファンド、ベインによる同社株に対する公開買付け )で、この設備がこの先どうなるかアンノウン。JOGMECでも旧三徳のこの設備を維持すべく国内の磁石メーカーに声をかけて説得もしたようだが、どこも手を挙げなかったという。この話を聞いて、率直にいってなにか物悲しさ、わびしさを憶えたのは私か旧三徳の良心ある方々だけだったかもしれない。
ゆえに、前述したように新しい磁石リサイクルプラントを北海道、東北地区などで立ち上げることが検討されているようだ。
(IRUNIVERSE Yuji Tanamachi)
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