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ソリッドバッテリー株式会社 アンパワージャパン株式会社 利昌グループ:新世代の電池に向けて

2023年3月15日から17日の間、東京都江東区の東京ビッグサイトにて「第19回 スマートエネルギーWeek【春】」が開催された。
今回の記事では昨今着目されつつある全固体電池を巡る中国の動きについて、ソリッドバッテリー株式会社 アンパワージャパン株式会社 利昌グループの取り組みを軸に見ていくこととする。

 

 

全固体電池のニーズとリチウムイオン電池の限界点

 

 今や私達の生活に欠かせない物となっているスマートフォンを中心とした通信デバイス。
それでなくともNintendo Switchの様な携帯可能なゲームハードウェア、あるいはタブレット、一部のユーザーには熱烈な愛好家も居る携帯音楽プレーヤー。
あるいは普及しつつある電気自動車もはじめ、多くの物が充電可能なリチウムイオン電池によって支えられている。
この私達の生活を一変させたと言ってもいいリチウムイオン電池には、それ相応の欠点が存在する。

 

 1つ目は構造上の問題から、電解液の劣化や外部からの衝撃によりショートが起き、過剰な発熱や発火といった事故が発生する問題だ。
たまに目にするであろう袋の様に膨らんだリチウムイオン電池など最たるもので、化学反応が促進されすぎた結果発火や爆発といった予期せぬ事故が起こる事も往々にして存在する。
外部からの衝撃などによる事故も相次いで発生しており、衝撃に対して十分な防御措置を取る必要がある。
2つ目は同様に構造上の問題から、簡単にリサイクルや廃棄をする事が出来ない製品であるという点だ。
先述した通り衝撃等でセパレーターが破損し、正極と負極に直接電解液が流れ込んだ結果ショートが発生し事故に至るケースは多い。
そしてそれはゴミ収集車等に何の分別もしないままにリチウムイオン電池を放り込んだ結果、車両が炎上する火災が発生したという事故に繋がる。
その為専門の処理を行う業者に回収し分解・再利用される事になるが、この時に発生するブラックマスという残渣物から電池に利用されていた金属を十全に回収する技術は未だに出来ていない。
3つ目は寿命の問題である。
リチウムイオン電池はその構造上電解液を用いている為、超高温や超低音といった環境ではその性能を発揮する事が出来ない状態になるのだ。
また電解液が蒸発し続け性能が劣化してしまう事態は、電池を使用していようがいまいが回避する事は出来ない。
その為定期的な買い替えや交換が必要であり、その経済性が十分にあるかと言われれば「環境と用途による」という結論となってしまう。

 

 こういった種々の問題は全固体電池という電解液を利用しない二次電池で解決可能ではあるが、現在多くの企業がその実現に向けて研究を重ねている所である。
そういった中でソリッドバッテリー株式会社は車載用途や住宅向け用途に対応する大型の全固体電池を開発し販売・提供しているというのだ。

 

市場規模の大きさと試行サイクルの早さ

 

 ソリッドバッテリー株式会社は神奈川県川崎市に本社を置く企業である。
同社は東京都渋谷区のアンパワージャパン株式会社と共に、2社共同で事業に取り組むという事である。
そんな同社が今回展示していたのが、家庭用のリチウムイオン電池を中心とした製品群だ。

 

 

 現在同社の全固体電池はアメリカや欧米、中国でその販路を拡げている。
そのラインナップは家庭用のスマートグリッド向けバッテリーのみならず、自動車対象製品として通常仕様の他に急速充電対応仕様も用意。
更には寒冷地等にも対応したモデルも用意しており、実際にブースの電源については家庭用の全固体電池で賄っているというのである。
筆者も稼働中の製品を触らせてもらったが、ブース1棟には幾つも照明が飾り付けられており常時電力を放出しているにも関わらず製品の表面は「冷たい」のである。

 

 展示許可が降りなかった業務用の大型コンテナサイズの全固体電池も提供する同社の開発の足跡は、なんと2015年に遡る。
翌年2016年に1,000Ahの全固体リチウム電池セルの開発に成功しており、2018年にはCE認証を含めた国際認証を取得している。
この国際認証を受けるには幾つもの基準となる項目が存在する。
すなわち、基本的な電池の容量、重量当たりで蓄電できる量を表すエネルギー密度の高さ、実際に電力をやり取りする為の充放電効率の高さ、電池としての寿命を示す電力の保持率の高さ、そしてあらゆる環境で対応できる温度に対する適正の高さ。
これらの項目をクリアしているからこそ、認証を取得し正常に動作する事が保証されているのだ。
現在は電気自動車等のモビリティを始め、同社の製品は幅広い事業で活用されている。

 

 

 その上でここでもう一つ重要な要素が出てくる。それが電池のリサイクル性だ。
先述したリチウムイオン電池の様な構造では、電解液を用いている事もあり正極・負極の分離はもちろん処理後の残渣物の取り扱いも面倒なものであった。
しかし全固体電池は文字通り内容物が全て固体で構成されている為、分離しリサイクルする事が非常に行いやすい。
そしてこの製品を提供する上で最後の課題となるリサイクル事業において手を挙げたのが、利昌グループである。

 同社グループは株式会社利昌を中心とした産業廃棄物処理業者であり、プラスチックから汚泥まで多くの種類の廃棄物処理を引き受けている。
そんな同社が今回日本に進出するソリッドバッテリー株式会社とタッグを組み、製造物の最後の要となる「生産者の処理する責任」に対する業務を任せる事になるというのだ。
特にリユースやリサイクルが推進される昨今において、製品の回収と処理を一手に引き受ける事業者の存在は生産者にとって大きな励みとなる。
今後日本で展開していくソリッドバッテリー株式会社に強力なパートナー企業が出来たと言えるだろう。

 

 これから求められる全固体電池というソリューションに対し、大波の様に市場へと押し寄せていく三社の流れ。国内市場における大きな起爆剤となる可能性は十分にある。

 


(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

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