いよいよ緊迫?「重要鉱物War」 G7と中国、それぞれ供給網を強化へ
レアアース(希土類)やレアメタルなどの重要鉱物をめぐる関係国の供給網(サプライチェーン)争いが緊迫しつつある。主要7か国(G7)をはじめとする西側諸国が関係強化を通じて供給確保を急ぐのに対し、シェアの多くを保有する中国も輸出規制などで対抗するもようだ。電気自動車(EV)をはじめとする電動化、そして世界のカーボンニュートラル化に欠かせない重要鉱物を巡り、水面下の緊張は増している。
■G7は供給網で連携、中国は磁石製造技術の禁輸へ
経済産業省が5日にホームページ上で発表したところによると、4日夜にオンライン形式で開かれたG7貿易相会議では、グローバルサウスを含めたG7以外の国々を含め自由で公正な供給網の強化で連携したいとの提言があった。個別の対象品を議論していくことも提言され、まずは重要鉱物を議論の対象とする方針とした。また、経済的威圧により現状を一方的に変更する試みに強く反対するとも表明した。これらの提言は10月に開催予定の次回会議に生かしたい考えで、4日の会議には、日本からは西村康稔経産相が参加した。
一方、5日の読売新聞朝刊は、中国政府がネオジムやサマリウムコバルトといったレアアース磁石の製造技術について「国家安全」を理由に輸出を禁止する方向で検討していることが分かったと伝えた。既に一般からの意見公募を終了し、年内にも磁石の製造技術が輸出禁止リストに加えられる可能性があるという。
■脱中国依存が先か、中国の供給網制圧が先か
世界の重要鉱物の生産は中国に拠るところが大きい。読売新聞の報道では、ネオジム磁石が84%、サマリウムコバルト磁石は90%超を中国が生産する。コバルトなど一部の資源はコンゴなどアフリカやチリといった南米などの埋蔵量が多いが、中国企業が生産に進出し、世界の電池メーカーなどは中国企業から材料を仕入れる構造となっている。
また、寧徳時代新能源科技(CATL)のように世界のEVメーカーに電池を供給する大型の中国企業も出現しており、かつ、リチウム鉱山の開発にも直接乗り出すなど、重要鉱物の供給網に関しては、中国が川上から川下まで抑えにかかっているのが現状だ。
西側諸国はこうした中国占有に危機感をあらわにし、2020年代に入り急速に重要鉱物の脱中国依存の姿勢を強めている。2023年3月には、日米両国がEV電池向け重要鉱物供給網の強化で協定を結んだ。米国はカナダや欧州連合(EU)とも、3月に重要鉱物の供給網確立で合意している。
一方の中国は、習近平国家主席が2020年に内部の会議で、国際社会の供給網での対中依存を高めるよう指示したと伝わる。足元で進む磁石の製造技術の禁輸措置は、この流れの一環との見方が出ている。
■重要鉱物、今後も焦点に
中国が2010年の日中関係の悪化時に、日本への制裁措置としてレアアースを禁輸したことは記憶に新しい。日本側の対策はその後進んだとされるが、13年間の平穏な時代を経て気が緩んだ部分もありそうだ。また、制裁や報復の手段としての貿易措置は輸出大国である中国自身にも諸刃の刃となることは、オーストラリアからの石炭輸入禁止などをみても明らかで、実際にどこまで踏み切るかは見極めにくい。
ただ、中国と西側諸国との覇権争いが緊迫する中、重要鉱物が焦点となる状況は今後も続く可能性が高い。関連会社は気を引き締める時にきているようだ。
関連記事:
中国国内レアアースおよび永久磁石材料産業チェーン川上・中・下分析(2023年第1四半期)
中国商務部は139件技術の輸出を禁止・制限する予定で、具体的にはレアアース関連技術の公開に関わる
(IR universe Kure)
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