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オーストリアからEV用電池の安全を担うSEDA

 オーストリアの美しい山岳地帯チロルに拠点を構えるSEDAは、燃料自動車解体ツールに加え、EV(ハイブリッドも含む)およびEV用電池の包括的な安全対策ソリューションを提供する欧州でもまだ数少ない業者の一つだ。今回MIRUでは同社に取材、担当者のSvetlanaさんへEVおよび電池の取り扱いについての同社の取り組みや最新ソリューションについて話を聞いた。

 

お話を聞いたSvetlanaさん

 

 欧州では輸送部門における電気化と共に、今後EVの大幅な増加が‘予想されている。EUは3月末に、2035年からディーゼル・ガソリン車の新車販売を禁止する規制を採択し、EVの推進は今後さらに加速化されるものと思われる。EVは温室効果ガス削減には必要不可欠なツールの一つと考えられているが、一方でいつくかの問題も抱えている。その一つがEVに搭載されるリチウムイオン電池だ。事故などで破損したものは言うまでもなく、外見からは何の異常も見られないEV用電池にも熱暴走の危険性は決してゼロではない。一方で、危険性の高いリチウムイオン電池については、輸送や梱包に関する国際危険物道路輸送協定(ADR)などがあるが、取り扱いや保管専用の規制はまだ整っておらず、包括的な基準設定が急がれるところだ。

 

 こうした中、EV事故車や破損車の運搬、EVから電池と取り出す作業、その後の電池の保管については、まだ多くの自動車解体業者は手探りで進めている状態だ。SEDAは、EVの解体時や電池の取り扱い時における安全性確保に困惑する自動車解体業者を支援すべくして、オーストリアでは初のEV用解体設備を開発した自動車解体業者向け機材の販売業者である。その発端となったのは、2019年にEVの事故車の取り扱いに途方に暮れたある解体業者から相談を受けたことだった。

 

 SEDAは解体業者と協力のもと、パイロットプロジェクトとしてEV処理を開始した。続いて、EV・ハイブリッド車用の解体ツール・電池の運搬用梱包材・ボックス・コンテナ、保管用ソリューションの開発に乗り出した。EUではリチウムイオン電池の運搬には、前述のADRの要件に沿う必要があるため、同社の製品はこれらの要件に沿って開発されている。

 

 パイロットプロジェクト施設は、E-Car Centerと呼ばれ、EVとハイブリッド車の処理に特化しており、そこではEVの取り扱いに関するセミナーやコンサルティングも提供する。参加者は、欧州のみならず世界各国から集まっている。EVの取り扱いについては、オーストリアとドイツでは既に3段階に別れた認定資格制度が導入されており、これらの資格検定に向けたコースもある。

 

 現在EV処理はまだ新分野でもあるため、SEDAは多くの自動車業界のパートナーと協力し、開発を進めている。パートナーはVW・BMW・ポルシェなどドイツの自動車メーカーを中心に、テスラやルノーも名を連ねる。加えて、欧州の電池セルスタートアップNorthvoltと同社との提携でリサイクルを担当する Hydrovoltの名前も見られる。同社のソリューション販売提携先は世界27ヶ所にわたっており、グローバルに事業を展開する。

 

 SEDAのサービスは、解体・保管・梱包にとどまらず、回収業務もカバーする。同社は、危険物取り扱い認定資格も取得しており、自社の梱包や運搬用器材で、事故車や破損車およびリチウムイオン電池の運搬・保管も請け負っているのだ。同社のサービスでは、電池の状態を分析し、その状態に応じた梱包法を施した輸送を実施する。この運搬サービスでは、パッケージ価格も提供されており、EV+LIB /台で3500ユーロ(約514,000円)、回収はLIB /個で499ユーロ、破損などで危険性の高いと診断されたLIBでは999ユーロ(価格はオーストリア国内の例)となっている。

 

 EV電池の安全を確保するための取り組みの裏には、苦い経験もある。2021年にSEDAの施設で起こった電池による火災だ。施設へ数ヶ月間保管され、危険な兆候は全く見られなかったEV用電池のモジュールが突然発火し建物が全焼するという災難に見舞われた。この教訓から100%安全な電池はないという結論に到達、あらゆる角度から安全対策を立てる必要性を痛感した。その結果、新製品の一つである解体作業中のリチウムイオン電池を室内で安全に保管できる作業テーブルの開発に至ったという。

 

 以下では、同社が提供するEV・電池用の最新ソリューションの一部を紹介する。

 

●事故車を含むEV・ハイブリッド車を安全に運搬するコンテナ

 リモートでコントロールできるローラーがついており、車を載せてコンテナへ移動。運搬中に事故などの衝撃が起こった際や電池の熱暴走が起きた際などには、コンテナの底から約60cmまで浸水可能。クーリングポンプ付き。隔離用にも使用可能。

●事故火災などで燃焼したEVの隔離用断熱シート。 -40℃ から+70℃まで対応。シートの中は浸水可能。コンテナとの比較ではリーズナブルな価格となっている。

 

 

●危険な状態のLIB運搬用ボックス

 ADRに準じて開発された運搬・保管専用ボックスは3サイズ展開。フィルターシステムが一体化されており、有毒ガス発生時にフィルターが作動し無害化する。また、ボックス内部から固体・液体・炎が外へ出るのを防止する。

●安全装置付き作業テーブル拡大

 破損・通常の状態の高電圧LIBを解体する際、火災リスクを最小限にとどめるよう開発された作業用テーブル。SEDAの施設で実際に起こった火災事故(テスラのモジュールが突然発火し施設が全焼)により、安定していると思われた電池・モジュールでも危険性が高く、事故の予測が非常に難しいという教訓を学び、開発された。解体時に作業員の安全を確保し、また一時的に作業中の電池・モジュールを置いてでも作業場を離れることが可能なツール

●破損・欠陥LIB保管用ボックス

 クリティカルおよびノン・クリティカルな状態のLIBを安全に保管するコンパートメント付きボックス。破損LIB用のコンパートメントは4つあり、冷却・消火・浸水システムが付いており、中の温度が80℃を超えるとスプリンクラーが作動。安定LIB用コンパートメント4つも備えている

 

 EVセクターにおけるSEDAの次のプロジェクトは、電池のモジュールに焦点を当てる予定だ。「OEMはそれぞれ自社モデル用に電池を開発・改造を重ねていますので、モジュールの種類は多数あります。そのため、この分野では、多数の研究・開発課題が横たわっています。当社ではモジュールのセカンドライフ活用に焦点を当てることを考えています、もちろんリサイクルにおける安全性を確保する技術やツールの更なる開発へも注力して行きます」とSvetlanaさんは語る。

 

 今後増加するEVリサイクルの将来については、「今後は、ガソリン・ディーゼル車に加えて、EVのリサイクルが必要となります。しかしながら、EVセクターの方向性は不透明な部分もあります。例えば、水素燃料車の更なる開発が進むことも考えられます。その場合、自動車リサイクラーは、ハイブリッド・EVへ加え、水素燃料車への対応も必要となります」

 

 日本企業との提携への興味についての質問には、「当社は、日本の企業とのパートナーシップに非常に興味を持っています。当社は、安全性を確保した適切なテイクバックシステムの構築に豊富な経験があります。欧州で高く評価されている当社の技術を日本のOEMやリサイクラーへご紹介できる機会を探しています」との熱のこもった回答が返ってきた。

 

 なおSEDAは、5月24日から26日までに東京で開催されるN-EXPOでブース出展(ブース番号A208)することになっており、今回記事で紹介したSEDAのEV解体ソリューションや電池の運搬・保管用ソリューションについて、Svetlanaさんから直接説明が聞ける絶好の機会である。

 

 

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SCHANZ, Yukari

 オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。

 趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。

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