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SAF狂想曲に揺れる日本の廃食用油(前)〜価格は2年前の2倍超!

 

 国際民間航空機関(ICAO)は2022年秋、国際線航空機が排出するCO2を2050年までに「実質ゼロ」とする目標を設けた。ここで、その達成の切り札となるのが廃食用油(Used Cooking Oil=UCO)などを原料とする航空燃料「SAF」だ。SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは「持続可能性の評価基準を満たす、再生可能または廃棄物を原料とするジェット燃料」をいう。燃焼時にCO2排出がカウントされないバイオマスが原料の代表格だが、前記UCO他、化石由来の廃プラなども原料になり得る。今回は、主にUCOのSAF化について、全国油脂事業協同組合連合会(全油連)の事務局長 塩見 正人氏(写真)に話を聞いた。

 

2030年までに、SAF使用を全体の10%までに!?

 日本政府はICAOの目標を受け、2030年に国内航空会社の使用燃料の10%をSAFに置き換える計画を立てた。だが、現状では欧米からの供給に頼らざるを得ない状況にある。そこで国産SAF製造への動きが加速しているわけだが、それには原料確保がカギとなる。さて、今回はその原料のうちUCOに着目するが、日本の高品質なUCOを巡っては、既に海外燃料大手が大量調達を進めており取引価格も急騰しているという。

 

「2021年度は事業系UCOの3割に当たる12万トンが輸出にまわり、2017年度の6万トンと比べても倍増しています。輸出価格も2022年11月は1キロ当たり約190円と、2年前の水準の80円程度の2倍超となっています。主な供給先はフィンランドの大手燃料会社ネステで、同社はシンガポールにSAF工場を持っています。日本国内のUCO自体は、シンガポールの工場へ直接送られると思いますが、お金やカーボンフットプリントのカウントはフィンラド本社への計上となるでしょう。全日本空輸(ANA)はすでに来年から輸入契約を結んでいるといい、日本のUCOがSAFになって戻ってくるという、まさに逆輸入の様相を呈しています」(塩見氏)

 

 現在、国内では国産SAF製造へ向けていくつかの企業が協業体制を組むなどして、推進されつつある。日揮ホールディングスはコスモ石油、バイオ燃料製造のレボインターナショナルは共同出資を行い合同会社サファイア・スカイ・エナジー(出資比率:日揮48%、コスモ48%、レボ4%)を設立し、大阪府堺市(コスモ石油堺製油所)に、UCOを主原料としたSAF製造プラントを新設、2024年度にも生産を開始し、2025年に供給(年間約3万トン)をスタートするとしている。

 

 しかし国内UCOは、古くからリサイクルの優等生とされ(回収量のほぼ100%をリサイクル)、そのサプライチェーンは確固に形成されていた。国内食用油の年間消費量は約234万tで、UCOの年間発生量は全体で約52~54万tと推定されている。このうち、外食産業・食品産業などの事業系から排出されるものは約40万tで、これはほとんどが回収され、再生工場で精製・調整され、従来までは飼料用(配合飼料に添加)が約60%、工業用(脂肪酸、石けん、塗料、インキなどの原料)が約7%、海外への輸出が約7%、燃料用(バイオディーゼル燃料、ボイラー燃料など)が約5%(平成27年度実績)となっていた。しかし現状、前記のように国内UCOの争奪戦が繰り広げられており、また国産SAF製造の準備も加速していることから、この内訳も様変わりしつつある。

 

再利用先の決まっていたUCOを、SAF原料に割く?

 UCO回収の歴史は古く江戸時代からあったとされ、第2次世界大戦終戦直後の食料難時代には既に回収業として専業・事業化されていた。しかし1985年には急激な円高とパーム油の輸入急増により需給バランスが崩れ業界危機が訪れたという。この試練に対して回収業者は集結し各地に組合組織が形成された。その後農林水産省の指導下、2000年6月に農林水産大臣の認可により国内唯一の全国業界団体として「全国油脂事業協同組合連合会(全油連)」が設立された。

 

 ちなみに、UCO をしっかり回収し飼料とするまでリサイクルして国家規格を有している国は、世界でも日本とオーストラリアくらいだという。そのほかの国は、一部がバイオ燃料原料として利用するのみで、事業系・家庭系に関わらず、可燃ごみ、もしくは下水など(もっと悪いところは道端)に廃棄しているのが現状であるという。

 

 全油連が資料として公開している「UCOのリサイクル流れ図(令和3年度版)」は以下のようになっている。

 

 

 前述したが、UCOはSAF原料としての需要の高まりから、燃料原料として海外輸出の割合が、現状31%となっており、国産SAF製造の始動など燃料利用が増えた場合、その割合をさらに高めるのではないかと予想される。また他の分野でも脱炭素の動きから引き合いが増えているものの、国内発生の40万tは変わらないことから、需給は逼迫、価格高騰が進み、一番の需要家であった飼料メーカーには大きな痛手となっている。

 

「UCOはもともとパームオイルの代替(鶏・豚の成長促進)として使われていたものですが、ここへきてパームオイルも高騰していることから、いずれにせよ飼料メーカーさんはコスト上昇に苦しんでいます。UCOリサイクルのサプライチェーンは、いままさに大きな変化の中にあるのです」(塩見氏)(続く)

 

 

(IRuniverse kaneshige)

 

 

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