Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.80最近の中古車輸出のデータから(10)EV
最後にEV(電気自動車)の中古車輸出台数を見ておきたい。2017年から2022年までの6年間の中古車輸出台数の合計は、ハイブリッド車(ガソリンエンジン搭載)で98万台だったが、EVはその20分の1のわずか5万台である。日本ではEVが普及していないことは周知のとおりであり、中古車輸出台数も多くない。
全体的に少ないながらも数量は増加している。図1はEVの中古車輸出台数の年別推移である。これを見るとわかるようにロシアとニュージーランドが主要仕向地になる。2017年から2022年までの6年間の合計5万台のうち、ロシア、ニュージーランドのシェアはそれぞれ44%、37%である。それに続くのがジョージア、オーストラリアであり、6年間の合計のうち、それぞれのシェアは5%、4%である。
ロシアとニュージーランドの大小関係については、2017年、2018年はニュージーランドのほうが多かったが、2019年はニュージーランドが減少し、ロシアが追い抜いている。その後もロシアが上回っているが、2021年、2022年はニュージーランド向けが増加しており、ロシアの数量に近づいている。
ジョージアは2017年の時点では17%のシェアであり、存在感はあったが、その後は減少しており、2022年のシェアはわずか1%である。反対にオーストラリアは2017年のシェアは0.2%だったが、2022年は6%にまでなっている。なお、2022年は、ロシア(40%)、ニュージーランド(35%)、オーストラリア(6%)、モーリシャス(2%)、キプロス(2%)の順で多い(カッコ内はシェア)。
2023年も増加傾向は変わらず、1月から5月までの実績で前年を上回っており、対前年比は146%である。このうちロシアが51%を占めており、ニュージーランド(22%)、トリニダードトバゴ(6%)、オーストラリア(5%)、キプロス(3%)が続く(カッコ内はシェア)。
図 1 EV(電気自動車)の中古車輸出台数の推移
出典:財務省貿易統計より作成
図2はEVの中古車輸出の単価を示したものである。これまでの品目と同様にロシアは2022年5月頃から急上昇しており、2022年末頃から下降している。ニュージーランドとオーストラリアは2021年半ばまでは同程度で緩やかに上昇していたが、それ以降はニュージーランドが横ばいとなり、オーストラリアがニュージーランドを30~40万円ほど上回って推移していた。ニュージーランドは2022年9月頃、オーストラリアは同年12月頃から下降傾向にある。
2022年にロシアが急上昇する中、2023年は3か国ともに下降している。他の品目も同様だが、2023年はこの勢いでどこまで下がるかである。
図 2 EV(電気自動車)の中古車輸出の単価の月別推移(主要仕向地、単位:千円)
出典:財務省貿易統計より作成
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授
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