ホントに危うい? 中国不動産 進む「国進民退」、8月販売と中期業績一覧
中国の不動産危機が注目を集めている。中国では不動産業が実質国内生産(GDP)の4分の一近くと大きい。また、産業のすそ野の広さから建材はじめ多くの分野に影響が出やすく、銅や鉄鋼など多くの金属の世界価格も影響を受ける。9月6日までには2023年1-8月の大手企業の売上高と1-6月期決算も出そろったことから、検証してみたい。
■トップ10の顔ぶれ様変わり
1-8月の中国不動産販売企業トップ10
(出所:中国指数研究院)
表は中国政府系シンクタンクの中国指数研究院が発表した中国の不動産販売ランキングだ。2021年までは、財政破綻が言われて久しい中国恒大集団と、巨額の赤字発表で注目を集めた碧桂園が、首位と2位をそれぞれ走っていた。それが現在は、恒大集団は既にトップ10から脱落し、碧桂園も5位に転落した。両社はともに中国の民営企業だが、ほんの1-2年前までは、販売トップはこのような民営企業が独占していた。
ところが、現在は様相が変わった。首位の保利発展と2位の中海地産(中国海外発展)はそれぞれ、中国政府直轄の国有企業グループの傘下企業だ。民営の隆盛は鳴りを潜め、国有大手が上位を占めるようになった。不動産の世界でも国有企業の巨大化、いわゆる「国進民退」が進む。
■国有大手は決算も好調
不動産トップ10の1-6月期決算内容
(注)香港、上海、深圳の各証券取引所での企業の発表資料からmiruが作成した。社名は通称。金額単位は億元、増減は前年同期比で単位は%。▲は赤字。
国有大手の好調は1-6月期決算内容にも表れる。489億元(約1兆円)と巨額の赤字に転落し世界を驚かせた碧桂園と対照的に、保利発展や華潤置地、建発房産などは増益を確保。緑城中国のように減収増益となったケースもある。
これは、国有企業は再開発などのプロジェクトを担うことが多く政府による融資の優遇措置などの財政支援を受けやすい上、民営企業の失速により土地備蓄を増やしやすくなっていることが背景にある。結果的に国有大手は財務状態が改善し、株式運用などの運用益も膨らませることができた。
■8月の大手不動産販売額は34%減
ただ、こうした国有企業の拡大が中国の不動産業界、そして中国経済全体の安定につながるかどうかは未知数だ。専門家の間では「中国の不動産危機はかなり大ごとになる」(金融アナリストの川上敦氏)との声が多い。
実際、不動産業界全体のムードは沈鬱だ。中国メディアの騰訊網の報道によると、8月の中国不動産トップ100社の不動産販売総額は前年同月に比べ33.9%減った。とても新規建設を進めて不動産購入を誘うムードではない。
影響は幅広く、民営企業が開発したマンションを購入済みだった家庭はマイナス資産を抱える恐れから消費に乗り出す気力も失いつつあり、家具家電などの販売不振、ひいては材料となる金属の需要減につながりかねない。また、不動産大手の多くは米ドル建て債券を発行してもいる。例えば碧桂園はマレーシア事業に積極的なことで知られるが、そうした海外への影響も警戒される。
(IR Universe Kure)
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