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コンテナ運賃動向(2023年9月)―下落傾向へ

 先月の本稿でも言及したが、コンテナ船社によるサーチャージ値上げの動き、パナマ運河の記録的干ばつによる通航制限の継続などの要因も結果として運賃上昇に結び付くのではないかと思われたが、目下の運賃市況が下落傾向にあるのは、コンテナ船社による欠便にも関わらずコロナ禍での記録的な運賃上昇を見据えた新造船竣工による供給船腹量があまりにも大きすぎ、需要(荷動き)が追い付いていないことに原因があるようだ。米国西岸向けは2,000ドルを割り込むと採算が厳しいといわれており、コンテナ船各社にとっては正念場を迎えているようだ。その辺の事情を探ってみた。

 

 4月よりコンテナ運賃動向をノルウェーのゼネタ(Xeneta)社のコンテナ運賃情報「Xeneta Shipping Index by Compass」(XSI―C)https://xsi.xeneta.com/で追っているが、ここにきて東アジア発の北米西海岸向けと北ヨーロッパ向けの2航路おいては上昇か下落に転じている。

 

 対象は40フィート・コンテナのスポット運賃で、各種サーチャージも含まれたもの。

 

(単位:米ドル)

注)前月の数値と若干異なるのは、発表時の速報値が更新されたため。

 

 Xenetaとほぼ同時期のFreightos Baltic Index (FBX) の世界コンテナ運賃指標で東アジア発北米西岸ルートをみると前月は2,029ドル(8月25日)だったのが、今月は1,693 (8月28日)、Drewryも同様に2,240ドル(8月24日)から2,016ドル(8月28日)へと減らしている。

 

日本発の運賃はどうか?

(公財)日本海事センターが公表している日本発の運賃を見てみると、太平洋横断航路で2月から7月にかけて下落傾向が続いていたが、8月に入って上昇に転じている。これがコンテナ船社による海上サーチャージの値上げ等によるものなのかどうか、今後発表される9月のデータを注視したい。

 

(単位:米ドル/40ft)

日本・アジア/米国間コンテナ貨物の荷動き(TEU: 20フィート換算)

 

 (公財)日本海事センターが9月26日に発表した2023 年 8 月 [往航] 速報値によると、2023年8月のアジア(18 ヶ国・地域)から米国へのコンテナ荷動き量は、前年比 13.9% 減の 168.1万個(20フィート換算)。1-8 月の累計では、前年同期比 20.2% 減の 1,196 万個。

 

 国別では、日本は 6.5% 減となる 5万個、中国は 16.8% 減となる 94.5万個、韓国は 8.7% 減となる9.5万個、台湾は 20% 減となる 5.7万個、ベトナムは 11.5% 減となる 20.4万個、インドは3.9% 増となる 9.4万個。

 

 地域別では、ASEAN は 10.6% 減となる 40.6万個、南アジアは2% 減となる12.1万個。

 

コンテナ船社による需給調整の取り組み

 日本郵船(NYK)の公表資料によると、コンテナ船社では、需給の安定化に向け、船腹量を絞る取り組みが、欠便の他にも以下のように複数並行して進んでいるようだ。

 

1)5,000TEU型以上のコンテナ船の待機隻数を増やす

2)喜望峰経由の復航の実施 ― 北欧州からの復航便(帰り)で開始し、北米東岸の復航でも開始。

3)Slow Steaming(速度減速)

4)航路改編による船舶の再配置 ― 航路によっては減便が多いが、増便もあるようだ。

5)新造船就航の延期 ― 2023年に増加する見込み。

 

サーチャージ等の値上げが続く

 コンテナ貨物の荷動きに関係なく、物価や人件費などのコスト上昇の影響を受け、コンテナ船各社によるサーチャージの値上げなどが続いている。

 

 MSCは10月1日から日本に出入りするコンテナの取扱料金(THC)を実入りと空コンテナの双方で値上げする。

 

パナマ運河通航制限

 本稿でも度々取り上げてきたが、降水量不足などにより主要な水源となるガトゥン湖の水位が大幅に低下している影響で、パナマ運河庁(ACP)は今年 4 月下旬より段階的なパナマ運河の喫水制限や通航隻数制限の実施を続けている。この記録的な渇水による運河通航制限がいつまで続くかは現状では予測不可能だが、滞船が今後長期化すると、北米東岸から西岸への貨物シフト、スエズ運河経由にシフトする動きも出てくることが予想される。

 

 コンテナ船各社も 9 月に北米向けの運賃値上げ(GRI:海上運賃一括値上げ)を既に実施しているが、今後の状況次第ではパナマ運河通航のサーチャージ額や運賃の上昇も容易に予想される。

 

ブラジルのサントス港の混雑

 混雑という点で気になるのは、南米最大のコンテナ港であるサントス港の主要ターミナルの一つである BTP(Brasil Terminal Portuario)において、ターミナル内混雑のためコンテナ船の受け入れができず、少なくとも 2 隻がサントス港へ入港出来なかったとの情報だ。

 

 サントス港の年間コンテナ処理能力は港全体で 20フィート換算で400 万個とされているが、今年の取扱量は 530 万個に達すると予想されており、処理能力を上回った混雑が状態化しているとの情報。サントス港では増強に向けた拡張計画が進んでいたが、2022 年の政権交代によりルーラ政権となると、拡張計画は休止となり、具体的な進展が見られない状況との報道。

 

番外編:アフリカ

1、エジプト

世界的に船舶代理店サービスを展開するInchcape Shipping Services(英国)の情報によると、エジプト政府は、政令488/2015 を発表、9月8日から上限なしで、すべての港湾料金を毎年5%継続値上げすることを決めたとのこと。

2、ガーナ

ガーナ国家港湾局はMarpol条約の遵守に向け、入港船舶のポートステートコントロール(PSC)、立ち入り検査を強化、特に船内ごみ処理の記録、汚水排出設備、燃料給油手続き等々の点検を即時実施するとの発表。

 

 

最後に

 8月の筆者の予想ではコンテナ運賃市況が上昇に転ずるとの予想であったが、9月に入って一転して下落傾向にあるようだ。但し、上述のような様々な状況、特に世界的なインフレ傾向と日本での物価上昇、コンテナ船社によるサーチャージ値上げの動き等を見ると、年末に向け運賃市況、特に基幹航路である東アジア発米国向け運賃がどのように動くのかは予断を許さないが興味深くもある。来月の本稿執筆が様々な意味で楽しみでもある。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

 

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