エノモト(6928) 24/3Q1決算メモ 24/3期減額修正懸念も低PBRでニュートラル
24/3期0.9%増収8.9%営利増予想もQ1厳しく減額懸念、25/3期は回復期待
株価(9/29):1676円、 時価総額115億円、 発行済株数6865千株
PER(24/3DO予):11.8X PBR0.55X 配当(24/3DO予50円) 配当利回り3.0%
・24/3Q1は11.3%減収75.3%営利減とスマホ、LED向け不振等で大幅減益
・24/3期0.9%増収8.9%営利増予想もQ1厳しく下期回復でも通期予想減額懸念
・25/3期はパワー半導体、ミリ波対応スマホ向け等拡大で利益急回復期待
24/3Q1は11.3%減収75.3%営利減とスマホ、LED向け不振等で大幅減益
パワー半導体用リードフレームやコネクタ用部品など精密部品を主力に事業展開。24/3Q1は売上高64.26億円(11.3%減)、営業利益1.32億円(75.3%減)、経常利益1.62億円(74.5%減)、税引利益0.96億円(77.5%減)とスマホ向け不振などで大幅減益着地となった。
製品別ではパワー半導体用リードフレームが売上高31.64億円(17.9%増)と好調に推移。自動車向けがEV化やADAS向けに好調、クリップボンディング式リードフレーム(CBLF:ClipBondingLeadFrames)の販売比率がさらに上昇している。CBLFはクリップとリードフレームでチップを挟み込むことで接触面積が広くなり、構造上通電容量の拡大が可能となるため、従来のリードフレームを上回る電気特性と熱特性が得られ、信頼性も増す。このため車載用パワー半導体や電気制御装置など省スペース、高電圧化・高電流化などが求められる中で採用が急増している。但し社史向け以外は産業用機器及び民生用機器向けが在庫調整で伸び率は鈍化した。
一方、コネクタ用部品は売上高34.37億円(28.5%減)と6割弱を占めるスマホ向け0.35mm以下の基板タイ基板(BtoB)コネクタ、FPC用コネクタ等の金属端子部品が旧モデル向け生産調整影響で大幅減、ウエラブル向け世界最小クラスの狭ピッチマイクロコネクタ部品も在庫調整で低迷、大幅減収に。
オプト用リードフレームも売上高7.12億円(29.4%減)と海外交通インフラ向け、大型ディスプレイ向けの販売不振で大幅減収に。
用途別では車載向けが26.61億円(2.1%増)と。EV向けパワー半導体用リードフレームは好調持続もエアバック用コネクタなどが減少、伸びが鈍化に。スマホ向けは売上高15.63億円(26.3%減)と旧モデルの生産調整が厳しく、新モデル向けの金型などが出ているものの大幅減少に。ウエラブル向けは売上高0.71億円(81.1%減)と調整が継続。民生・産機他は売上高21.27億円(20.7%減)とディスプレイ向けLED用リードフレームの不振が影響した。
利益面ではスマホ・ウエラブルとの民生向け中心とした在庫調整の影響での減収影響、ウエラブル大幅減減によるMIX悪化により売上高総利益率が4.8ポイント低下し11.2%となり、販管費でも売上減影響で販管費比率が0.7ポイント悪化し9.2%となり大幅営業減益に。
24/3期0.9%増収8.9%営利増予想もQ1厳しく下期回復でも通期予想減額懸念
24/3期はQ1での収益大幅低迷にも係わらず、下期の回復を想定し、会社予想を変更せず、売上高290億円(0.8%減)、営利17億円(8.9%増)、経常利益17億円(5.9%減)、税引利益12.5億円(1.5%減)、配当70円(10円増配)予想を据え置いた。
部門別ではパワー半導体用125億円(4.4%増)、オプト用38億円(2.2%増)、コネクタ部品120億円(7.1%減)、その他7億円(6.1%増)予想。パワー半導体用はSiCデバイスの需要拡大でCBLFがさらに拡大、32.50億円(42.9%増)を見込む。構成比も19%から26%まで高まる予想。一方、従来品は92.5億円(4.6%減)と付加価値の低い従来品からのシフトを加速させる方針。なお従来の中国主体から日本メーカーの認証も進み、今後、日本でもEVの拡大とともに売上拡大が見込める。コネクタ部品はスマホ減退影響が継続、新モデル用に金型受注は獲得しており来期の回復を見込む。ウエラブル、自動車用は下期回復を見込むもスマホの落ち込みを補えない。オプト用は中国向け需要のボトム確認、米国向けのサイネージ向けの増加を見込む。
利益面ではCBLFの売上増、マイクロコネクタの下期回復を見込みMIX良化から営業増益を見込む。また経常利益は津軽工場増設に伴う助成金等(1.57億円)等がなくなることで減益予想としている。
会社側では上期予想を開示していないが、Q1時点での会社計画に対する進捗率は売上で22.2%、営業利益で7.8%、経常利益でも9.5%に止まっている。Q2について会社側ではスマホ向けやウエラブル向けは停滞が続くとしており、LED向けも回復が下期ということで、上期段階で売上進捗率が45%程度に止まる懸念がある。また下期回復見通しでも上期の落ち込みをカバーしきれないと判断、24/3期会社予想は減額懸念がある。実際、中計予想では22/3期収益が好調だったことで24/3期売上高250億円、営利20億円予想としていたもの売上高290億円、営利24億円に上方修正した。しかし23/3期にスマホ向けが不振だったことなどで営業減益となったことで、24/3期売上予想は変更しなかったものの、営業利益予想を17億円に減額予想としていた。現状、24/3期売上が未達成の可能性があり、中計利益予想の達成は25/3期以降にずれ込もう。
25/3期はパワー半導体、ミリ波対応スマホ向け等拡大で利益急回復期待
25/3期には車載向けパワーデバイスモジュールの出荷数量が9800万個(2023年予想比15%増)と数量増が続く見通しの中で、日本メーカーの車載向けパワー半導体生産も本格拡大する見通しから、CBLFの拡大が見込める。またスマホも2024年モデル以降、ミリ波対応などの本格採用で高周波対応コネクタ、更なる狭ピッチコネクタ需要が拡大するとみられ、安定的に量産化できる同社製品への需要が高まると見られ、再度収益の拡大が見込めよう。
株価は7/31の24/3Q1決算が大幅減益となったことから、今後減額修正懸念が出てきたことも有り、7/31の高値1800円から下落、8/8には1592円で25万株の立会外分売を実施、8/17には1603円の年初来安値を付けた。その後はパワー半導体の増強の話題も有り多少戻り歩調になったものの、スマホ不振が長引くなどで再度下落している状況にある。現在、会社24/3期予想EPS187.16円に対し、PER8.95倍は東証プライム電機平均PER19.8倍に対し割安となっているが、コネクタピンの鈴木のPER7.7倍予想より割高、リードフレームの三井ハイテック(モーターコアを評価)の22.4倍に対して割安となっている。但し、今後、24/3期の利益未達成の懸念があるものの、PBR0.55であり大きく下落することは無いとみられ、当面、株価はニュートラルと判断する。なお上期決算発表時に減額修正がアナウンスされた場合には、悪材料出尽くしとして、改めてパワー半導体関連銘柄として割安感が出るとみられ、その場合ポジティブに変更するタイミングとなると見ている。
(H.Mirai)
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