エア・ウォーター社、そば殻原料バイオコークス製造実証開始、JFE条鋼電炉でも
~ 北海道庁「ゼロカーボン・イノベーション導入支援事業」に採択 ~
北海道幌加内町(町長:細川雅弘)、きたそらち農業協同組合(代表理事組合長:岩田清正)、エア・ウォーター株式会社(代表取締役・CEO:豊田喜久夫)、JFE条鋼株式会社(代表取締役社長:渡辺敦)、株式会社巴商会(代表取締役社長:山崎純大)の5者は「幌加内町バイオマス有効活用コンソーシアム」を立ち上げ、北海道庁「ゼロカーボン・イノベーション導入支援事業」補助金に「そば殻を原料に用いた低コストバイオコークス※1製造技術の実証事業」を応募し、11月8日付で採択された。商用化を前提としたバイオコークス実証事業は道内初※2。
※1:近畿大学の井田民男教授が開発したバイオマス固体燃料。原料としてあらゆるバイオマスを用いることができ、さらに密度や圧縮強度が高いため鉄やスラグも溶融できる温度での燃焼が可能で、石炭コークスにも代替できる。さらに自然発火、風化、吸湿のリスクが非常に低く、レジリエンスを意識した災害用保管燃料にも最適とされる。
※2:近畿大学調べ。バイオコークス特許を所有する株式会社ナニワ炉機と近畿大学が実施許諾を共同で管理している。
1.幌加内町における実証事業の背景と意義
幌加内町は日本最大のそば作付面積・生産量を誇り、全国1等の格付けを受けたそばのうち96.4%が幌加内町で生産されている。年間2,900tを超えるそばが生産され、そばの加工に伴いそば殻やそば残渣(未熟種子、茎等)といったバイオマスが町内で大量に発生しているが、処理・再資源化に対する有効な手段がなく、現在は大部分が農業廃棄物処理または堆肥化処理されている。一方で、そばの殻をむいた「丸抜き」の製品に対するニーズの高まりを受け、今後さらにそば殻の発生量は増大すると見込まれている。
2021年度には北海道庁の補助金「エネルギー地産地消事業化モデル支援事業(新エネ有効活用モデル)」を受け、「BIC(バイオコークス)燃料への変換によるそば殻・そば残渣の有効活用」のテーマ名にて町内のそば殻及びそば残渣を主体に、生ゴミや下水汚泥も加えたバイオマス原料をバイオコークス化し、町内で消費される化石燃料への代替を検討する調査事業を行った。その結果、そば殻を中心としたバイオコークス化がコスト的に有効であり、エネルギー利用による脱炭素効果が見込めることが分かった。
2.バイオコークス事業の課題
過去のバイオコークス事業が商用化困難であった要因は、既存の化石燃料(灯油、天然ガス、A重油、石炭コークス等)の発熱量当たりの単価に対し、バイオコークスの発熱量当たりの製造単価が高かったことにあり、製造原価の主な要因はバイオマス原料乾燥用化石燃料のコストにある。
さらに、既存のバイオコークは単位時間当たりの製造量を増やすために直径100mm×長さ150~200mmで製造しているため、利用事業者からは石炭コークスや木質チップ等と比べると大きすぎて取り扱いが難しく、供給装置内で閉塞してしまうトラブルが発生しやすいこと、比表面積が小さく着火性が悪いことなどが指摘されている。加えて、直径が大きいことから中心部と外周部に密度の差が発生し、全体的な均質が図れていない問題もあった。このことから、商用販売されるバイオコークスの大きさは石炭コークス程度の大きさが望まれている。
3.そば殻を原料に用いた低コストバイオコークス製造技術の実証事業の概要
この実証事業ではバイオコークス技術を利用した実事業を想定し、低コストにてバイオコークスを製造するプロセスを実証する。第1段階では乾燥を必要としない「そば殻」「そば残渣」「籾殻」を原料とし、乾燥プロセスを経由しない製造コストミニマムなバイオコークス製造プロセスを検討。第2段階では水分を含むバイオマスを原料に製造したバイオコークスの一部を乾燥熱源として使用するバイオコークス製造プロセスを検討する。
加えて、製造するバイオコークスは直径60mm×長さ60mmと石炭コークスと同等の大きさとしながらも、製造能力は1日1tを実現するプロセスを目指す。
さらに、利用実証として本事業で試作したバイオコークスサンプルを用いて、幌加内町公共施設にバイオコークス温水ボイラを設置して行う温水供給の実証を行い、JFE条鋼株式会社豊平製造所の電気炉において石炭コークス代替の実証を行っていきます。
図1 実証事業の概略
図2 実証事業の全体スケジュール
(IR universe rr)
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