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Americas Weekly2024#1 米のリチウム開発 LIB火災続発

★本格稼働に向けて前進する米国のリチウム開発 ソルトン湖に国内需要まかなう資源眠る

 

 米カリフォルニア州最大の湖、ソルトン湖でのリチウム採掘計画は2024年、本格稼働に向けて大きく動き出す。現在、3社が現地で準備を進めているが、1社が自動車メーカーへの供給開始に向け最終段階に入るほか、他の2社は本格的な採掘施設の建設を始める。エネルギー安全保障の観点から、バイデン政権は電気自動車(EV)などに欠かせない電池用リチウムの国内生産を目指しているが、その鍵を握るのがソルトン湖で、早期の本格稼働が待たれている。

 

 ソルトン湖でリチウム採掘の準備をすすめているのは、バークシャー・ハザウェイ・リニューアブルとコントロールド・サーマル・リソーシズ、エナジーソース・ミネラルズの3社。

 

 このうちコントロールド・サーマル・リソーシズは、既に小規模なリチウム採掘を行っており、2024年に自動車メーカーへの供給を開始する予定で準備を進めてきた。計画がやや遅れ供給開始は2025年にずれ込む見通しだが、2024年は事業化に向けた大きな節目になる年だ。

 

 バークシャー・ハザウェイ・リニューアブルとエナジーソース・ミネラルズは、現地で採掘に向けた地熱発電所を稼働させているが、バークシャー・ハザウェイ・リニューアブルは商業ベースの採掘施設、エナジーソース・ミネラルズは採掘・加工施設の建設を、それぞれ2024年にスタートさせる。

 

 ソルトン湖のリチウム資源については2023年11月、米エネルギー省のローレンス・バークレイ国立研究所が包括的な分析結果を公表した。埋蔵資源量は3400キロトン以上で、電気自動車用のリチウムイオン電池3億7500万個以上を生産できる量だという。3億7500万という数字は、現在、米国内で走行する車両の数を上回るもので、今後、数年間の米国のリチウム需要をまかなえると説明している。

 

 リチウム資源が眠るソルトン湖一帯は、「シリコンバレー」ならぬ、「リチウムバレー」といわれ、カリフォルニア州のニューサム知事は「リチウムのサウジアラビア」にすると意気込んでいる。

 

 バイデン政権は2022年、ソルトン湖でのリチウム開発事業に対しインフレ抑制法(IRA)に基づく2億5000万ドル(約360億円)の補助金の拠出を明らかにしている。現在、米国はリチウム資源のほぼ全てを輸入に頼っており、ソルトン湖でのリチウム採掘が商業化すれば、エネルギー安全保障の面でも大きな変化をもたらす。

 

 現在のソルトン湖は1905年のコロラド川の氾濫でできた湖だ。1960年代にはリゾート地として栄えたが、砂漠にできた湖のため水位の減少が著しく、干上がった湖底の砂による砂塵や湖で発生する硫化水素により、周辺の生活環境が悪化し、住民が転居し、商業施設も閉鎖された。

 

 地球温暖化の影響で環境悪化が進み、現在、ソルトン湖周辺はゴーストタウン化している。IRAによる連邦政府からの補助金には、周辺の環境対策や都市再生のための費用も含まれている。

 

 ソルトン湖以外でも、リチウムをめぐる拠点づくりは米国各地で進んでいる。電気自動車大手のテスラがテキサス州コーパスクリスティに建設しているリチウム精製工場は2024年中に完成し、リチウム原材料の搬入が開始される。

 

 アーカンソー州ではエクソン・モービルなどがリチウム採掘の準備を始めている。地元では「2024年はリチウム採掘に向けてスタートを切る年だ」との意識が強い。2月15、16日にはリトルロックで「リチウムイノベーションサミット」が開かれる予定で、エクソン・モービルやカナダのスタンダード・リチウムなど企業関係者のほか、政治家や投資家が参加する。

 

★アラスカ沖でタンカーに積まれたリチウム電池燃える トロントでは地下鉄車内で

 

 年末から年始にかけて、米国とカナダではリチウムイオン電池による火災があり、安全性についての不安が一段と高まった。

 

 米沿岸警備隊に2023年12月28日、アラスカ州に近い太平洋を航行していたパナマ船籍のタンカー「ジーニアス・スター11号」(1万3663トン)から火災が発生したとの通報が入った。ベトナムから米サンディエゴに向けて約2000トンのリチウムイオン電池を運搬中、リチウムイオン電池が入った2つの貨物から出火したという。火災の発生は12月25日で、通報の3日前だった。

 

 同船は沿岸警備隊の指示で、アリューシャン列島の先端近くにあるアマクナック島のダッチハーバーの沖合約3キロの地点に停泊した。火災発生以降、乗組員19人が消火活動を続け、火を消し止めたが、リチウムイオン電池が再び発熱して発火する恐れがあるため、停泊後は船舶火災の専門家も乗り込んで監視にあたった。

 

 地元ラジオ局KUCBなどによると、貨物内のリチウムイオン電池は安定した状況にあるものの、今後、数週間は航行できないと伝えている。

 

 リチウムイオン電池が燃えると、水素や二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、フッ化水素が発生する。今回は大量のリチウムイオン電池が焼失したことから、周辺環境への影響が懸念されており、地元自治体などは同船が停泊している周辺の大気と水質のモニターリングを続けている。

 

 一方、カナダのトロントでは12月31日午後、地下鉄車内に持ち込まれていた電気自転車のリチウムイオン電池が発火した。自転車が激しく燃え、車内に煙が充満し、自転車を所有する男性1人がけがをした。

 

 発火直後から火の勢いが強かったということで、火災が通勤ラッシュの時間帯だったら大惨事になるところだった。

 

 トロント市消防局によると、2023年のリチウムイオン電池による火災の件数は55件にのぼり、2022年の29件を大幅に上回った。トロント市は今回の火災を深刻に受け止め、今後、電気自転車の交通機関への持ち込みなどについて規制を強化する考えを示している。

 

 また、トロントの運輸関係の労働組合が今回の火災を受けて、地下鉄のワンマン運転の見直しを市に迫るなど、リチウムイオン電池による火災の余波が広がっている。

 

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Taro Yanaka

街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

趣味は世界を車で走ること。

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