中国、パキスタンと鉱業分野での協力強化確認 「経済回廊」建設、課題なお多く
中国の習近平国家主席は6月7日、訪中したパキスタンのシャリフ首相、ブラジルのアルキミン副大統領とそれぞれ会談したした。このうちシャリフ首相とは鉱業分野での協力を約束。両国の間では中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の建設が進むが、その中に鉱業分野が最重要項目として改めて含まれた。
■クロムや銅を産出、中国国有が事業展開
(出所:中国外交部ホームページ)
中国外務省が6月7日に発表した声明によると、中国はパキスタンに対し「質の高い一帯一路協力とパキスタンの発展計画との相乗効果を促進し、現地の状況に応じて農業、鉱業、社会、人民生活の協力を行う」方針。具体的には「CPECのアップグレード版を中心として、成長、人民生活、イノベーション、グリーン、開放の『5つの回廊』を共同で構築し、質の高い中国・パキスタン経済回廊を深化・強化して、パキスタンの経済・社会発展に貢献する用意がある」とした。
中国とパキスタンは、中国が構想する巨大経済圏「一帯一路」の一環としてCPECの建設を進める。CPECは中国の北西部からパキスタンの南西部グワダル港に抜けるルートで運輸や電力のインフラを整備するのが要。在パキスタン中国大使館のデータとして2023年夏に伝わったところによると、CPECは2022年末時点までのおよそ10年間に、パキスタンに計254億ドルの直接投資をもたらし、23万6千人の雇用を創出した。
もちろん鉱業分野を含め中国企業がパキスタンに進出・投資している。パキスタンはクロムや銅の生産国だが、中国国有の中国冶金科工集団や湖南有色金属、中国五鉱集団などが事業展開している。2022年には、中国国有原子力発電大手の中国核工業集団による中国独自開発の新型原発が稼働した。
(出所:JOGMEC)
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■膨らむ対中債務、IMFに支援要請の隙間
だが、中国による投資には課題も多い。パキスタンは2023年夏に中国から10億ドルの融資を受けたことを明かした。それまでにも多額の融資を受けており、2018年時点ですでに警戒されていた「債務の罠」に落ち込む恐れが指摘されている。中国企業による鉄道敷設などのインフラ整備計画は遅れが生じがちで、パキスタン側の洪水などの天災で事業が計画通りに進まないことが多く、債務の膨張につながっている。
かといって経済破綻すれすれのパキスタンは他国からの融資を受けるのも難しい。パキスタンは国際通貨基金(IMF)には1958年以来、実に24回も支援を要請しており、7月にも新規支援プログラムの鉱床が終了する予定ではある。だが、支援を受けるにはIMF側の条件を満たす必要があり、融資が明けられるとは限らない。こうした隙間を中国からの融資が埋めている格好だ。
また、現地では中国人を狙ったテロが続き、現場での対中感情は良くはない。3月下旬には北西部で自爆テロが発生し、中国人5人とパキスタン人1人が死亡した。不穏な空気はバスでのテロ事件が発生した2021年から変わっていない。
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なお、習氏はブラジルのアルキミン副大統領との会談では、「緊密で戦略的な協力関係の継続」を強調した。アルキミン氏は中国企業のさらなる投資を求め「気候変動対策などで力を合わせていきたい」と応じた。
(IR Universe Kure)
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