ソニーの半導体次期中期計画 新工場着工も投資は6,400億円に抑制
ソニー・グループは2024年5月24日に2024年3月期の業績、5月30日に事業計画を発表した。半導体関連はCMOSイメージセンサ(CIS)を中心とするイメージング&センシングソリューション(I&SS)事業で行っている。
2024年度の半導体事業は大幅な増収増益を予想
ISS事業の同期売上高は前年度比14.3%増の1兆6,027億3,800万円、営業利益は同0.9%減の1935億4,100万円、増収増益となった。モバイル機器向けCISの販売量拡大、製品構成で高価格帯製品が増加した(製品ミックスの改善)ことに加えて、円安の影響もあり増収となった。イメージセンサの大判化を進めたことが成長をけん引した。しかし、CISの新製品量産立ち上げ費用の拡大、生産能力拡大に伴う減価償却費の拡大(前期比26.0%増の2,479億円)、製造経費の増加などが影響して減益となった。
2025年3月期は売上高が同14.8%増の1兆8,400億円、営業利益は同39.5%増の2,700億円を計画している。
前年度に引き続き、モバイル機器向けCISの数量増加、製品ミックスの改善により売上高増が予想できる。さらに新製品量産立ち上げ費用の減少により営業利益の改善が期待できることから大幅な増収増益を予想している。
2024年半導体向け設備投資は前年度比26%減
ISS事業の設備投資額(長期設備増加額)は2023年度には前年度並み(0.8%減)の3782億円となった。長崎テクノロジーセンター(TEC)(長崎県諫早市)のFab5の拡張、熊本TECのFab2強化などの投資が行われた。
長崎TECでは主にCIS用ロジック生産およびイメージセンサ部とロジック部の貼り合わせプロセス能力の増強が図られ、熊本TECではイメージセンサ部の強化が図られてるのは、長崎TEC・Fab5の増強、熊本県合志市での新工場建設に向けられる。
2024年度の投資額は前年度比26.0%減の2,800億円にまで削減する。増産向けにが大型投資を続けて前年度までに投資効率が悪化したことから大幅に削減する。投資対象は熊本県合志市の新工場建設の投資が中心となる。
次期中期計画では投資抑制へ
中期計画ベースでも投資規模を抑制する。第4次中期計画(2021~2023年度)の設備投資額は約9,300億円となった。イメージセンサの成長を支えるため積極的投資により生産能力の強化を進めた。2023年12月には建設を進め、同年10月から稼働を開始していた長崎TEC・Fab5最終拡張部分(STEP3)を竣工した。2024年以降も生産設備の強化を進める予定である。。
しかし、製品の歩留まりの問題、熊本TECの稼働状況などにより投資効率が悪化、、収益性の改善が望まれることになった。
そのため、第5次中期計画(2024~2026年度)のイメージセンサ向け投資額は第4次中期計画比で約3000億円減の6,300億円を計画している。同計画では、既存資産を最大限活用し、新工場を含めて投資はより厳選していく、としている。
第5次計画の新規投資の中心となるのが、前述の熊本県合志市での新工場建設である。同工場は2023年6月に建設の意向が発表されていたが、長崎TEC・Fab5Step3の竣工を受けて、2023年4月に着工した。同社熊本TEC、ソニーが出資、一部の半導体製造を委託しているTSMC子会社Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)第1工場にも近く、連携して稼働を進める。
新工場の敷地面接は面積は37万m2。設備投資総額、生産能力、製造装置の搬入の時期、稼働開始時期など今後の画像センサーの需要拡大に合わせて判断する。
設備投資と同様に研究開発比の見直しも行う。第4次中期計画のイメージセンサ関連の開発費は約6,400億円、売上高の15.7%に達した。しかし、第5次計画ではテーマを精査、開発効率の改善を図り、費用の見直しを進める。
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柴田浩一(Koichi Shibata)
IRUniverse 半導体産業担当記者
1985年から30年超にわたり半導体業界で、取材、記事制作、編集を行ってきた。
半導体関連の業界団体への協力も行っている。
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