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再びイトムカ鉱業所(野村興産)へ 触媒資源化協会ツアー2024夏

 

 

7月18日、触媒資源化協会の研修旅行で野村興産のイトムカ鉱業所を訪問した。

筆者は、野村興産のイトムカ鉱業所には2016年に訪問している。このときも実は同じく触媒資源化協会の研修旅行のなかで訪れた。8年ぶりのイトムカ、ならびにつるつる温泉を再訪。

2016年訪問時のレポートはこちら:

水銀とともに80年 野村興産イトムカ鉱業所 ①

水銀とともに80年 野村興産イトムカ鉱業所⑤ 水銀リサイクルの実際 その3

水銀とともに80年 野村興産イトムカ鉱業所④ 水銀リサイクルの実際 その2

水銀とともに80年 野村興産イトムカ鉱業所③ 水銀リサイクルの実際 その1

 

 水俣条約の施行により水銀含有廃棄物の処理、管理が厳しくなっている。言い換えればイトムカの「仕事」が増えてくるわけで、今回はイトムカの「現在」をレポートしたい。

関連記事:水俣条約の動向と野村興産の取り組み

 

 イトムカの主要なリサイクルアイテムは蛍光灯と乾電池および二次電池である。2022年度の乾電池類の処理量は17900トンで過去最多。受託自治体数は1047。蛍光ランプは8000トン。受託自治体は986となっている。

 

 

 野村興産が調べたところ、使用済み乾電池の水銀含有平均値は26.4ppmだったという。これを基にした乾電池からの水銀回収量は約473kg。蛍光ランプからの水銀回収量は約320kg。蛍光ランプのガラスは洗浄、焙焼処理で水銀が回収されたのち、グラスウールとして利用されるか、同じく蛍光ランプのガラスとして再利用されているという。網走市にある流氷硝子館では、100%リサイクルガラスを用いたガラス工芸品をエコピリカというリサイクル商品として商標登録しており、ハンバーグレストランでおなじみの「びっくりドンキー」の一部店舗でペンダントライトとして使用されている。

 また子会社のジェイリライツ(福岡県北九州市)でも、2022年度に蛍光ランプを約1335トン、使用済み乾電池を約613トン回収している。

 

 

 イトムカには様々なタイプと形状の乾電池、二次電池が入ってくるが、まずは乾電池を形状別でわける。これはオリジナルの選別機を置いているが、最終的には手選別。経験がものをいう。乾電池、蛍光灯以外では水銀を用いた体温計、血圧計もたまに入ってくるという。

 

 後述するヘレショフ炉で回収した水銀は減圧蒸留法で精製。150度でガス化となる。これを純度99.99%の水銀として、特殊な鉄製の容器(内部に樹脂コーティングしている)に34.5kg充填。

 体験コーナーで、水銀に浮いているステンレス製のボルトをゴム手袋で捕まえるというものがあったが、はじめて触る水銀はなにやら水のような、こんにゃく、のような触感。皆が一様に驚いていた。金属という概念を打ち壊す不思議な手触りは液体金属(リキッドメタル)の代表である。

 

 今、ここイトムカで生産されているフォーナインの水銀はどうしているのか?

 

 主としてインド、ブラジル、チリ、アルゼンチンに輸出されている。インドでは今も水銀の血圧計が生産されているのだという。他は苛性ソーダを生産する際に用いられている。

 「水銀は99.99%(フォーナイン)の純度のものを輸出しています。しかしながら水俣条約で水銀使用が可能な用途及びその用途別に期限が定められています。インド向けには2025年まで血圧計用途に輸出が可能です。 ブラジルは2025年まで、2030年までは、アルゼンチン、ペルーは水銀法による苛性ソーダ生産用途に使用が可能です。これ以降は、使用可能な用途及び国がなくなりますので、原則として輸出不可となります」とのこと。

 

 イトムカ鉱業所の森谷佳裕製錬課長に聞くと、そのあとは管理型処分場に厳重に管理されて「保管」されるとのことだが、なんとなくもはや水銀は核燃料廃棄物に近い危険物とされているのだろう。本当は非常に機能性の高い金属ではあるのだが。。例えば水銀灯はきわめて長寿命。写真愛好家によると、LEDの灯と水銀灯の色では間違いなく水銀灯の明かりのほうが良い色が出るのだという。アナログとデジタルの違いだろうか。

 

 さてさて、イトムカの誇る水銀回収専用炉ともいうべきヘレショフ炉も再見。ここでは1日38.78トンの処理を行う。600度程度まで温度が上がっていく過程で蒸気化した水銀を回収する。

 第10工場では乾電池専用のロータリーキルンが回っている。見学当時、ちょうど稼働中だったが、キルンが回転している工場内はサウナ以上に暑い空間となっていた。

 

 

 

 そして、工場敷地から外に出てみると、管理型処分場と近くにソーラーパネルを設置していた。亜鉛マンガン混合の滓もフレコン入りで保管されていた。この亜鉛マンガン滓はほとんどブラジルに向けて、肥料用、として輸出されているのだという。

 ソーラーパネルは裏表の2枚貼り。積雪で表面が雪で覆われた場合、裏面で発電するための両面貼りなのだという。設置枚数は660枚。発電容量は350kwでイトムカ鉱業所の年間電力使用量の10%程度をカバーできるという。

 

 

 見学のあとに質疑応答。やはりイトムカでの今後、そもそも水銀含有製品が少なくなっていくなかで、イトムカとしては何をメインにリサイクルビジネスを発展させていくのだろうか、いまのイトムカの主な処理品が乾電池と蛍光灯、かと思いますが、このいずれも発生は減少傾向にあります。今後のイトムカでのリサイクルアイテムは?

 「確かに蛍光ランプなどの生産量は減少しておりますが、廃棄されるまでに時間差がございます。 当面は受入量は横ばいが続くと考えております。

 しかしながら、今後の主業としては、大型のリチウムイオン電池などの新規処理品目の開拓を検討しております」とのこと。

 

 そして触媒資源化協会の一行は8年前と同じく野村興産が経営する「つるつる温泉」にて一泊。高校生の研修旅行さながらの3~4人相部屋はむしろ新鮮だった。みなさんもぜひイトムカ&つるつるを体験してみましょう。

 

(挨拶する触媒資源化協会の安田会長(JX金属サーキュラーソリューションズ)

 

 

 

(IRUNIVERSE/MIRU YUJI TANAMACHI)

 

 

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