オハラ(5218) 光学レンズ底打ち、半導体関連が好調を持続

24/10期1-3Q決算を9月13日に発表し、電話会議を実施した。カメラ用レンズの光事業の在庫調整が進展し、半導体向けを中心にエレクトロニクスが好調を持続したが営業22%減となった。24/10通期の営業利益計画に対する進捗率は82.8%の高水準も業績見通しを据え置いている。3Qに8月の休業に伴う在庫の積み上げや宇宙天文関連のスポット需要の反動や円高を警戒している。ただ、業績は今下半期から底打ちし、営業増益に転嫁する方向にある。エレクトロニクスではi線露光装置向け高均質光学ガラスやフォトマスク向け石英ガラスが好調で今下期から営業増益に転じ、中期的には高均質光学ガラスの半導体後工程での需要やAIサーバー向け低誘電ガラスなど新規分野による利益成長が期待される。
24/10期3Qは営業増益に転換
今24/10期1-3Qは売上高208億円強、前年同期比2.8%減、営業利益が16.6億円弱、同22.1%減となった。3Qの3ヵ月間では売上高が7,592百万円、前年同期比10.1%増となり、営業利益が822百万円、同48.9%増の高水準となり、増収増益に転じている。
カメラレンズ向けの光学ガラスは3Qに在庫調整が進展したが、中国でのプレス品の一過性の需要や8月の定修に備えた在庫積み上げの要因もあったが、光事業の3Qの営業損益は110百万円の損失が続いており、2Qまでの低稼働の影響が大きく1-3Q累計でも719百万の営業損失となった。
半面、エレクトロニクス事業は1-3Qの売上高が10,374億円、前年同期比14.9%増となり、営業利益が2,376百万円、同22.7%増となったが、3Qは売上高が3,756百万円、同29.2%増となり営業利益が933百万円、同41.8%増と好調を持続している。キヤノン向けの半導体露光装置やFPD製造装置向けの高均質光学ガラスやフォトマスク用石英ガラスの売上が2桁増のペースにある。
通期会社見通しは超過する公算大きい
会社は2Q決算時に光事業の在庫調整が長期化したことから24/10通期見通しを売上高で285億円から269億円、前年同期比4.3%減へ、営業利益を27億円から20億円、同10.5%減に下方修正している。この計画に対する営業利益の3Qまでの進捗率は82.8%の高水準になるが、会社はこの見通しを据え置いている。通期の営業利益の計画達成には4Qに営業利益341百万円が必要となり、3Q比では481百万円の減益となる。その要因として、1ドル145円の前提であり円相場の不透明さを第一にあげているが、3Q実績に光事業での一時的な需要や夏季点検前の在庫積み増しの反動減があり、エレクトロニクス事業でも宇宙天文向け特殊ガラスのスポット需要が入っている点や、FPD向け石英ガラスの減速のリスクも考慮しているとみられる。
以上の点から今24/10通期の営業利益を試算すると会社計画の20億円は上回ることは可能だが、超過額は1億円~2億円程度ではないか推察される。
今下期から業績は回復基調、半導体露光工程用材料の用途拡大が寄与
会社は期初から下期からの収益回復を見込んでいたが、下半期は売上高13,655百万円、前年同期比0.6%増、営業利益1,163百万円、同77.5%増と回復基調に入ること確実な状況にある。今後の課題としては、エレクトロニクス事業で半導体関連需要による利益成長性は確保できる態勢は整ったが、営業損失にある光事業の改善策を打てるかが鍵となろう。光事業とエレクトロニクスの特殊ガラスは熔解工程が同じであることから、光事業の設備の更なる特殊ガラスへのシフトによるコストの付け替えではなく、さらに踏み込んだ抜本的な構造改革を打ち出せるかだ。
特殊ガラスの特性を活かしたエレクトロニクスでの事業転換を模索し、これまでに耐衝撃性や耐殺傷性に優れスマホ筐体に使用できるガラスセラミックス“ナノセラム”やリチウムイオン蓄電池・LiB向けの添加剤“LICGC PW-01”、その半固体蓄電池、全固体蓄電池材料への活用などを発表してきたが、収益貢献には至っていない。特殊ガラスでは従前からOLED製造装置向けに使用される極低膨張ガラスセラミックス、i線半導体露光装置向け高均質光学ガラス(レンズ)や構造材、フォトマスク向け石英ガラスが収益源であった。24/10期1-2Qの説明資料からi線露光機向け高均質光学ガラスが半導体の微細化でニーズが高まる後工程(半導体のパケージ基板)の露光機用のレンズ材としての需要や石英ガラスもフォトマスク用だけではなくKrF露光機向けのレンズ材としての需要の拡大が見込める点を追加公表している。中計ではレクトロニクス事業の26/10期の営業利益30億円(同+9.7%)を計画しているが、キャノンの戦略とも符合することからその実現可能性が高いと言えよう。
光事業の既存設備をエレクトロニクスへの転用として、AIサーバーでニーズが高まる電子基板向け低誘電ガラスへの参入も表明した。現在は台湾の子会社でガラスファイバーメーカーへのサンプル評価が始まったとこころであり、今後は更なる品質特性の向上に努め数年内に本格参入を図ることを目論んでいる。3Q決算電話会議での説明では計画通りには進んでいるが、そのポテンシャリティーを確認できるにも2年内外を要し、まだ不確実な状況にあるとの印象であった。
(叶 一真)
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