バナジウム市場近況2024#8 動き鈍い、中国連休と景気対策効果を見極め
2024年9月末までのバナジウム価格は動きが鈍い。鉄鋼向けのフェロバナジウムは小動きにとどまり、五酸化バナジウムはじり安の展開が続く。中国で9月15-17日に中秋節の、10月1日からは国慶節のそれぞれ連休があり、まとまった商談を行いにくい時期だった。また、中国当局が相次いで景気対策を打ち出す中、効果を見極めたいとの気分もある。
■フェロバナジウム小動き、五酸化バナジウムは半年ぶり安値
FerroAlloy.netは9月27日のレポートで、「休日が接近する中、川下企業が原材料調達に慎重姿勢を崩していない」と指摘した。一方で、「需要不足で一時は値下げの姿勢を見せていた生産者側が、中国当局が相次ぎ景気対策を発表したことでやや強気の姿勢に戻っている」(同)ともいい、硬直状態となっているもようだ。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
鉄鋼向けのフェロバナジウムは9月26日に仲値$26.0755/kgを付けた。8月下旬からは節目の$26を挟む水準で小幅な値動きが続く。中長期の水準としては、2021年1月以来の安値圏にある。
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムはじり安の展開だ。9月26日に仲値$4.705/lbを付けた。9月20日に節目の$4.8を割り込んでから回復できていない。水準としては4月末以来の安値圏にある。
Topics
9月26日
エネルギーワールドなどの専門メディアは9月27日、「インド太陽光パネル最大手のライズ・パワー・インフラ(Rays Power Infra)が9月26日に、バナジウムレドックスフロー電池(VRB)の大型受注を獲得した」と伝えた。
報道によれば、発注したのは同国電力大手のナショナル・サーマルパワー(NTPC)の研究開発部門で、600キロワット(KW)/300キロワット時(0KWh)の製品を依頼した。この製品はインドでも最大規模。
9月23日
米鉱業企業のアイバンホー・エレクトリック(Ivanhoe Electric)は自社ホームページ上で、「クリーンテック子会社であるVRBエナジー(VRB Energy)が、中国投資会社の山西紅日と合弁で、VRB-ESSバナジウムレドックスフロー電池(VRB)システムの工場を米国に設立する」と発表した。
合弁会社の持ち株比率は山西紅白が51%、VRBエナジーが49%。山西紅白は3500万ドルをこの合弁会社に出資する。VRBエナジーはこの案件に絡み、5500万ドルを調達したと述べた。
VRBエナジーは別に2000万ドルを投じ、米アリゾナ州に別のVRB工場を新設する計画だ。
プレスリリース:pr_19_09-23-24_vrb_update_vfinal2.pdf (ivanhoeelectric.com)
9月16日
オーストラリアのバナジウム企業オーストラリアン・バナジウム(Australian Vanadium Limited)は上場するオーストラリア証券取引所(ASX)で、「自社製のバナジウム電解液を使用したバナジウム・フロー電池(VFB)が、西オーストラリア(WA)州で初めて実用化に成功した」と発表した。
関連記事:Australian Vanadium社 自社製電解液を使用したバナジウム・フロー電池の実用化成功 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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